Angel's smile
















1%でも 可能性があるのならば――…















砂漠の城フィガロ 10















「信用しろといったな…?」




がマントを翻しながら参戦する。


くいっ、と口の端を持ち上げて余裕気に笑っている。


そんなを見てロックは「そうこなくっちゃ」とナイフを構える。


の左手の指先がバチッと光った。




「信用してない相手に助太刀なんてすると思うのか?」


「…ふ、それも………………そう、………か…?」




エドガーの言葉の語尾がなんとなく怪しいものになった。


それはの指先に雷光が走るのに比例して…。


ティナがタイミングをあわせるように呪文を詠唱し始める。


二人の息は言葉を交えなくてもぴったりだった。





 サンダー!!  ファイア!!




同時に唱える。


ティナの手の平から火炎の玉が…


そしての指先からは小規模の稲妻が一体の魔導アーマーを襲う。


魔導アーマーの動きが止まった。




「早く逃げないと爆発するぜ?その機体」


「ひぃ…!」




にっこりと、黒い笑みを浮かべたが操縦していた兵に優しくアドバイスする。


この世のものとは思えない悲鳴を出すと帝国兵は慌てて砂漠へと身を投げた。


の電撃とティナの高熱を帯びた機体はの言ったとおり、


時期に小さめの爆発を起こした。


まさに命からがらと言ったところだった。


帝国兵はその光景を目に焼きつけ言葉を失う。




そしてここにももう一人…言葉を失ったものがいた。




「どうしたんだよ、エドガー…。突然驚いたりして?」


「今まままま、ののののの、みたよな?なっ?」




動揺が目に見える。


はそんな威厳のないエドガーを見て眉根をひそめた。


ロックは一瞬ティナとのほうに視線をやってから、相槌をうつ。




「あの子たちには凄い能力があるみたいなんだ……」


「何が凄い能力だよ!魔法だよ! ま・ほ・う !!」




ぴたり、とロックの動きが止まる。


フリーズという言葉がぴったりだった。




「ま、

 ま

 ま

 ま

 ま

 ま

 ま

 まほう! あれが魔法!?」




ようやく開いたかと思ったら彼の口から出たのはそんな言葉。


ティナが彼らに背を向けて俯いたのを見て、は「気にしちゃ駄目だぞ」と告げる。


エドガー+ロックはひそひそと小声で話し合う。


恐る恐るといった風にエドガーがとティナに歩み寄ってきた。




「今のって…な、なんなのかなぁ?」


「…動揺しすぎだ」


「……ごめんなさい、私達………………」




申し訳なさそうに謝るティナ。


ロックはエドガーを突き飛ばし、まさに作ったような笑顔で二人の前に立った。


やはり動揺が浮かんでいる。


は突き飛ばされて、砂漠にダイブした王様を哀れな眼で見つめ額を押さえた。




「いいんだ、謝るのはこっちのほうだ。あんなに驚いたりして……」


「ほんと、ほんと!魔法なんて初めて対見たんでつい、驚いてしまった」




でも、君達は一体………?


そういわれて二人は押し黙る。


こっちが聞きたいくらいだ、とは思った。




「いいじゃないか、エドガー。ティナとは魔法が使える。俺達は使えない。それだけのことさ…


 そして、二人の魔法は今必要なんだ!」


「!」


「ありがとう!ロック… ありがとう!エドガー」




ティナは俯いていた顔を上げて二人にウインクした。


でれ…とだらしなく鼻の下を伸ばす二人には呆れた風にため息をつく。




「ありがとう…」




小さく、呟くように言ったの言葉は誰の耳にも届く事はなかった。









 +









ブラボーフィガロ!




エドガーが誇らしげに声を上げた。


戦闘を終えた四人はチョコボにまたがり、ケフカを横切るようにして砂漠を駆ける。


チョコボの手綱を握るの表情はとても満足そうだった。




『ヒーーーくっそーー!この借りは必ず返しますよ!』




背中越しに聞こえるケフカの悲痛な叫び声。


ロックは、こりゃ愉快だと言葉を漏らす。




「あの人達、悪い人なの?私…怖い…」


「一先ずは大丈夫じゃないかな…?」


「ねぇ、…さっき…」


「しっ!二人には内緒だよ」


「…わかった」




人差し指を口元に当てるような仕草をしたにティナは頷く。


先ほどがチョコボに乗り込む前に唱えた呪文を聞いていたのだろう。


別に黙っている事ないのに…と思ったティナだったが、


本人たってのお願いだったのでそれを了承したのだ。




「ティナ、。あって欲しい人がいる…」


「俺達は地下組織リターナーのメンバーだ」


「リターナー…」


「その指導者のバナンに会ってくれないか?今度の戦争は[魔導]の力が鍵になっている」




ティナが「魔導」という言葉を小さく繰り返す。


チョコボの走る速さをあわせるエドガーとロック。




「二人には魔導の力がある。その力は幻獣と反応しあった。何か関係が…」


「私は何も知らないわ!この力も気がついた時には自然と使えるように……」


「しかし、生まれつき魔導の力を持った人間などいない!」




エドガーが大きな声を上げた。


刹那、が握っていた手綱をティナが操作してチョコボを止める。


種を返して近寄る二人。


は静かにエドガーを制した。




「ティナを攻めるのはやめろよ…。僕達だってこの力が怖いんだ」


「すまない…」


「私はどうすれば…」




不安げに顔を歪ませたティナの頭をは撫でる。


落ち着かせるように、


安心させるようにといったものだった。


ティナはに身を預ける。




「帝国が君達の力とその秘密を狙ってくるだろう。力が帝国にわたれば世界はおしまいだ


 二人も自分の力の正体を知りたいだろう?


 ならば、バナンにあって真実を見極めて欲しい」


「「……」」


「俺からも頼む」




ティナが目を伏せた。


まだ迷っている、そんな雰囲気だった。


はただ、何も言わずにチョコボの手綱をティナから返してもらう。


二人は小さく頷いた。




「よし!南に向かおう!サウスフィガロへと続く洞窟があるはずだ」




エドガーがそういって、チョコボを走らせる。


ロックとはそれに続いた。









一歩でも前へと進むんだ














←Back /Next→

あとがき

10話!!
これにてフィガロ編が終了です!(いやぁ…長かった)
inserted by FC2 system