Angel's smile
















再会の喜びを噛締めようか――…















 残された希望 101













「食事」




ぶっきら棒にそう言い放ちつつも表情だけはにやりとしていた。


はたくみに含んだ笑顔をちらつかせながら


こっそり部屋を抜け出し、操縦室の裏へと回った。


そこには箱詰めされた食料から燃料のタンクまで


とにかく船旅に必要なものが揃っていて、なおかつ人気が全くない場所でもある。


そこにポタージュのスープと数個のロールパンを持ってきたのは


ほかでもない自身だった。




「久しぶりだね、セリス、マッシュ」


「――!」


「無事だったんだな!」




ホント、久しぶりだ…。


最後の言葉は口には出さずに心の中でかみ締めた。


1年という時間の間に何があったかはそれぞれ個人しか知らないことだ。


こうやってまた廻りあえたのも、何かの縁だろう。




「ほら、食べなよ。外は冷えるだろ?」


「お、うまそう!ちょうど腹が減ってきたんだ」


「………」


「……後これ、少ししか持ってこれなかったけど」


「毛布か…ありがとな!」


「………」


「これ位しかできなかったけどね」




子分の奴らに気づかれないようにだったから。


それでも渡せてよかったとはいった。


そして。


ずっとを見て黙り込んでいるセリスに静かに微笑みかける。


彼女の気持ちが、その切ない表情から伝わってくるようだった。


ほう、と息を吐いて腕を差し伸べる。




「おいで、セリス」




ぷつんと糸が切れるように。


セリスはへと抱きついた。


の肩に顔を埋める彼女には何も言わずに髪を撫でていた。


1年ぶりに再会したということよりも、純粋に


生きていたと言う確証がセリスにとっては嬉しかったのだろう。




「ありがとう」




目を閉じて、がいった。









 +









朝方。


水平線に光の筋が現れ、徐々に太陽が顔を出し始めるころ。


船はサウスフィガロへと着き総員は支度を終え船を折り始めていた。


今からは子分たちの案内の下、サウスフィガロの洞窟を抜けて


そのまま砂の中で立ち往生しているフィガロ上内部へと


進入するように段取りではなっている。




途中、エドガーに昨晩セリスたちに会ったということを言うと


エドガーはほんの少しだけ悪戯が失敗した子供のような反応を見せた。


ジェフであることを貫き通し最後にネタばらしをすると言う


聞いただけでもわくわくするようなイベントが


失敗に終わったので不満に思ったのだろう。


表情に出るところが子供らしくては思わず微笑んだ。




何度か通った事のあるサウスフィガロの洞窟を一年ぶりに通り


もうすぐ洞窟を抜けると言うところまで来ると


前方を歩いていた子分たちが足を止めた。


彼らが指差した場所までは水が張っており―がいつも


小瓶にとっている回復の泉だ。―その奥に通路が見えた。


子分の一人が泉を泳いでいた亀を器用に呼び寄せて


全員は亀を使って向こう岸へと渡った。




「……」


「まだ痛むのか?」




エドガーは声を小さくして話す素振りを見せず正面を向いたままいった。


はすぐに自分が肩に手を当てていたことに気がついて慌てて離した。


じわりじわりと余韻の残るそれは痛みに違いない。


デスゲイズとの戦闘中のカイシンの一撃のダメージが中々抜けない。


こればかりはケアル程度の初期魔法でどうこうなるレベルのものではなかった。


は少しだけ唇をかんで素直に頷く。




「朝見たとき傷はふさがってたんだけど」


「?」


「なんだか、チクチクするんだよね」




気のせいかもしれないけど。


はそれだけを言うと黙り込んだ。


痛みが増してきたのか、それともフィガロに近づくにつれて緊張してきたのか。


どちらにせよ、エドガーは追求するのをやめた。


今最優先するべきことぐらい、彼女だって分かっているんだ。




洞窟をさらに奥へと進むと急に雰囲気の変わる場所へとたどり着いた。


そこがフィガロ城の牢だと言う事はエドガーはすぐに気がつく。




「大丈夫か?もうすぐの辛抱だ」




子分たちはそそくさとしまってあると言う宝の元へ向かうが


エドガーだけは最終尾を付いていきながら、長い間大地の中にいるせいで


息ができずに苦しんでいる兵たちに小さく声をかけていった。









 +









フィガロの地下に存在する機械室…


フィガロの動力源ともいえるこの場所に全員はたどり着いた。


左右に分かれる巨大な機械には触手のようなものが絡みつき


うねうねとうごめいては自分たちを威嚇しているようにも思える。




「こいつが…からまっていたせいか…」


「ボス!どうしやす?宝が隠してある部屋はこの奥でっせ!」


「俺がくい止めている間にお前らが…」


「ボス!危険ですぜ!!」




いいからいけ!とエドガーが声を荒げると子分たちは蜘蛛の子を散らしたように


さっと奥にある部屋へと入っていった。


完全に奥にはいったのを確認するとは暗黙の了解で杖を装備した。




「何ボケっとつったってる!!セリス!マッシュ!手伝ってくれよ!」




やっぱりエドガーじゃない!









セリスはそういいながらもソードを構えていた。














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あとがき

101話となりました。

100話越えの感想として言えば
なんだかこれから、と言う気持ちでいっぱいでしたね。

だって後半こそがFF6感動の集大成のような気がしませんか?
その感動を殺さないように、できるのならば、生かせるように
EDまで進めて行きたいものです。

とりあえずめぐり合う順番、イベントの順番はもう決めました。
皆さんも楽しみに予想してお待ちくださいな!笑

ということでぽちり (殴)
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