Angel's smile
















大変だー!フンババがこっちにやってくる!!――…















 待ち続けるよ 106













海辺の方向から鈍い足音を響かせてやってきたのは


鎧のような身体は緑色をしていて、剥きだしになった犬歯が


言葉はなくとも威嚇しているという事を告げる。


手、そして足先から伸びる爪は特に鋭く


あれで薙ぎ払われたものならひとたまりもないことは見て取れた。


巨大な存在感を放つフンババは、完全に


ティナを敵として捕らえたようだった。




「大地が引き裂かれたと時そこからよみがえった、


 古(いにしえ)の怪物フンババ…この村は私が守る!!」




ティナは力を振り絞るようにして詠唱し、魔法を繰り出そうとする。


…しかし、指先から放たれるはずの魔力は


ティナの身体の中にとどまるだけで、現れることはなかった。


ぐっ、と眉根を寄せるティナ。




… サンダラ …




「来るぞ!」


「…兄さん!ティナを…!」


「…、ティナこっちへ」




その村全体をとどろかせる雄たけびをあげて、


サンダラを繰り出してきた。


子供達が家の中で怯えているのを感じた


「これ以上村を壊さないで…!」…そんな声が聞こえてきそうだった。


それはエドガーも同じだったようで、二人は目配せあい


家の方向から離れるように誘導しながら戦う事にした。


攻撃力の高いエドガーが前線で機械を構え、


相手の行動に対応するようにしてが補助、援護する。


二人しか戦えるものがいない今、どうにかして乗り切るしかない。


…と二人は胸の中で噛締めていた。




「エドガー…!」




相手の弱点が毒であると。


オートボウガンでエドガーがひきつけている間に


はすぐに見つけることができた。


その事をすぐに彼に告げるとすぐさま彼も対応を見せた。


こういうとき、頭の切れがいいエドガーは少ない言葉で理解してくれる。


はすぐに毒属性の魔法を詠唱し始めた。




「黄泉への回廊に迷え滅び行く血肉とともに」




… バイオ …


… バイオブラスト …




体内の細菌を猛スピードで培養させる呪文、バイオ。


それは徐々にダメージを膨らませていく生き物のような魔法だった。


二人からそれを浴びせられたフンババはもがき苦しむようにして


モブリズの村を離れていった。




「乗り切ったようだな…」




フンババの影が見えなくなったのと、


エドガーが安堵の息を吐いたのはほぼ同時だった。









 +









「やっぱり、もう戦う力がない…」




ベッドに横たわり、ティナはぐったりした様子でそういった。


傍に付いた子供達は「しっかりして!」と心配そうな声を上げている。


そんな子供達にティナは微笑を返した。




「私、ここに残るわ。いっしょに行っても足手まといになる。


 それに、子供たちは私を必要としてる…」


「だけど…ティナ」


「もうすこし時間がたてば…


 今、私の中に芽生えようとしているものの答えがでれば…」




ティナはそれっきり口をつぐんでしまった。


はそんな彼女を見て無理強いはできないな、と


静かにため息を落とした。




「――待つよ」


「…え?」


「…だから、また来るって言ってるの。


 だからティナは安心してゆっくり考えればいいよ」


「ありがとう…




ようやく表情の緊張が取れた、とは額を小突いた。


そんな二人の様子を見てエドガーとが顔を見合わせ、


微笑ましく見守っていた。




「じゃあ僕は上まで二人を見守ってくるよ」


「…うん」


「…」




一瞬ティナの表情に躊躇いが見えて、


「すぐに戻ってくるから」と言う言葉をつけた。


一緒に行ってしまう、と言う心配をさせない為だった。


は胸に残るしこりのようなものを感じた。









 +









「僕はここに残るよ…待ち続けるって約束したからね」




の告白にエドガーは二つの返事で了承した。


またいつフンババが襲ってくるかわからない。


ケフカの裁きの光が下される日が来るかもしれない。


だから残る、との意志は強かった。




「ねぇ、兄さん…」


「ん?」


「もしかして兄さん、ティナのこと……」




言いかけた言葉を飲み込ませたのはだった。


人差し指を彼女の口元に押し当てたのだ。


そしてニヒルな笑みを浮かべて見せた。









「まだ内緒だよ?」














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あとがき

106話更新です。

サブタイトル終了ですね。
さてさて、次はなんにしましょうか…(●´▽`)

これの前か後に閑話入れようとか思ってます。
子供達の会話とかティナの心情とか…
前回それ抜かしていきなり戦闘いってしまったので
(↑深のミス)
クッション代わりに^^;

ということでぽちり (殴)
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