Angel's smile
届かないとは分かっていても、それでも――…
Last letter 109
『ロックさんの居場所…わかったすよ』
全身に電流が走ったような感覚がを襲う。
不快なものではなく、むしろ好機に満ちたものだった。
は高まり始める心臓を抑えるようにゆっくり息を吐ききった。
そして、にっと口角をあげる。
でかした、と。
ヴァーユは眩しい笑顔で二カっと笑った。
+
無事、セリスとエドガー、マッシュの3人と合流したとヴァーユは
口下手のの代わりにこれまでのいきさつをすべて話した。
10分ほどたったころ、説明を一通り聞き終えたエドガーは
なるほど、とこぼした。
「つまり君とカイエンが陸から、翼を持つが
空から仲間を探していた、ということだね」
「そうだね」「そうっすね」
「何か進展は?」
「詳しい話はカイエンさんと合流してからにしましょうか。
……それに」
――ガッ!!
「お客っぽいっすッ!!!」
すぐ近くで大きな羽音が聞こえ、全員が臨戦態勢に入った。
一番に反応したのはヴァーユで、吐き捨てるように言った後、
その場から数メートルは離れた場所に後退した。
あたりに強風が巻き起こる。ゾゾ山特有の土臭さが鼻を刺激した。
「なんだこいつは!?」
「ストームドラゴンだよマッシュ!三闘神の封印が解けて
こいつらも覚醒したんだろうな…」
冷静にが分析する。その隙にもストームドラゴン…
巨大な翼を持つ竜は羽ばたかせて、強力な風攻撃を繰り出した。
「くっ…」
「こいつらを醒ました原因は僕にある。僕が封印する!」
「わかった!援護する」
… ライブラ …
「こいつ、雷が弱点みたいね。さん、いける!?」
「はいよっ!」
… サンダラ …
あいさつ代わりに一撃お見舞いする。少しひるんだ様子は見せるものの
中々に硬いボディをしているようだった。これにはさすがの
もしかめっ面をする。
「あちゃー、こいつ硬いっすねー」
「油断はできなさそう…だ!」
翼から送られる風属性の攻撃が厄介だと判断したのかエドガーが
回転のこぎりで翼を切り落としにかかる。夥しい悲鳴が木霊する。
完全に切り落とすほどのダメージは与えなかったものの、
「マッシュさん!」
「お、いくか!?」
マッシュとヴァーユが咄嗟にかかと落としを決め込み完全に片方の翼は
機能すらできない状態になった。
「いけるか、」
「任せて」
すっとトランスをすると波打つ髪、白い肌、すべてに光が宿った。
翼をもがれもがき苦しむドラゴンにどこからか一筋の光がさす。
何かが詠唱される。その場にいる全員が魔封の呪文だと察した。
… 封印 …
一筋の光が細くなっていき、次第にその姿もろとも消した。
トランスを解いたが、ふぅ、と息を吐いた。
「終わった、のか?」
「うん、とりあえず一匹封印完了、だね」
「さん、一匹って言うと?」
「…。こいつらは全部で八匹いるんだ。今のがその一匹目。
さっきも言った通り、僕が…三闘神の封印を解いたから…
その影響でこいつらの封印も溶けたんだと思う……」
「それじゃあ……」
はバツが悪そうに表情をゆがめた。
自分でまいた種だ。誰一人としてその事実を突きつけることはないが
内心これから起こることに大変さには気付いているつもりだった。
空気を察したように、ヴァーユが先導をきった。
「カイエンさんはこの先にいます。進みましょう」
+
ゾゾ山を奥まで進むとあたり一面を見渡せる頂上に出た。
ゾゾの今までのうっとうしい雨が嘘のように感じられ、
久々の外の新鮮な空気に一同がほっと息をついた。
(…ん?造花?)
赤い花だ。でも触れてみるとそれは確かに造花だった。
かなり手が混んでいるが手作りのようで、もしや彼が?と
脳裏の片隅にちらついた。
「カイエン!」
セリスが呼び、一同の視線は言葉の先へと向かった。
カイエンと言われた人物も驚いた様子でこちらを振り返ると、
すぐに安堵の表情を浮かべ、仲間たちを見やった。
「みんな!!無事であったか」
「カイエン…」
「わしもいくでござる!世界をこのまま放っておくわけにはいかないでござる
…でもどうしてここが……」
そこではっとと視線がかち合うのを感じるカイエン。
ははーん、という視線に気づいたのか気まずそうにその場を立ち去り
造花を片付け始めた。その手つきは大変慌てている。
セリスが高いところにある一つを代わりにとってやると
カイエンはさらに慌てた素振りで弁解を始めた。
「これは…いや…、その……ちょっとした趣味の一つでござるよ」
「カイエン、この造花結構うまいよ」
「確かにー!」
「むむっ!おぬしらあー!!!」
むきっとなりこぶしを振り上げたかと思うと、次の瞬間照れた様子で
「ほんとでござるか」と開き直るものだからその場にいた全員が
微笑みをこぼした。
一通り感動の再開を満喫した後、話はこれまでの経緯と
今後についてとなった。カイエンはというと、いつぞやの
手紙を持っていた娘が気になりと別れた後マランダに
行ったとのこと。その時返事は来ないと知っていながら毎日のように
手紙を送る娘を見かねて自分が手紙を書くようになっていたとのことだった。
「手紙を書きながら自分でもあの娘と同じ事をしているのに気づいた。
本当は、前を向いていないと…もう、目をそらすまい」
「カイエン…」
その瞳には強い意志が込められていた。
「行こう。僕たちは前に進まなきゃいけない」
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あとがき
何年ぶりかの更新でした。109話目です。
だいぶ文章に癖があるのではないでしょうか。
みづらければ申し訳ありません^^;
久々に読み返すと、少しは続きを書きたい気分になりますね。
最後まで頑張れるといいのですが。
ということで
ぽちり
(殴)