Angel's smile
誤魔化すように手の平を握り締めた――…
いざ!コルツ山へ 12
多少の難はあったものの、四人は早々と洞窟を抜けて、
エドガーが言ったとおりにサウスフィガロはたどらない道のりで直接コルツ山へと向かっていた。
途中にあった小屋で一泊おいて、次の日に出発。
そして、四人はコルツ山に登り始めた。
+
「いい眺めね」
登山開始から数十分…。
まだまだ山頂には程遠いい高さではあったがその見晴らしはいい。
山々の隙間から顔出すナルシェの雪山が見えて、ティナは見て取れるほどにご機嫌だった。
ひゅおぉ…と風が唸りをあげる。
ロックがティナの言葉に相槌を打った。
「やけに静かだな、お前…」
ロックの一言で、ずっと壁伝いを歩いていたの肩がびくりと震える。
ティナの絶賛する景色を見ようともせずただただ岩壁とにらめっこをしているのだ。
…何処かおかしい。
はとりあえず「気のせいだ」と返す。
ふぅん…と言葉を濁し、ロックがにやりしたと笑みを浮かべた。
「ほらっ…!」
「――きゃっ…」
「…何、女みたいな声出してんだよ。…お前もしかして…高所恐怖症?」
う、五月蝿いっ!
そう帰って来ると思ったロックだったが、違ったようだ。
はロックに背中を押され(たせいで)、しゃがみ込んだ。
低い声でロックと、呼ぶ。
ロックは条件反射で嫌だと答えた。
「いいから来い。殴らないから…」
「…。なんだよ…」
しぶしぶとロックがのもとに歩み寄った。
種を返そうとしているティナとエドガーに先に行っててくれと促してからロックはの隣にしゃがみ込む。
が右腕を出せといつもの命令口調で言った。
ロックは内心疑問に浮かべながらもそれに従うのだ。
それは本人も気付いていなかった傷…
「うわ…」
「…」
毒、だろうか…
皮膚の一部が紫へと変色していた。
それはとても小さなものだったせいで、気付くのが遅れた…ということなのだろう。
はそれを冷静に見つめて、左手を箇所に伸ばす。
… ポイゾナ …
光が傷口に浸透していって、やがてそれがの手の平の中へと移動する。
「もう大丈夫」という、ほっと胸をなでおろすようなの一言にロックも緊張をほぐした。
「…まぁ、そのなんだ…ありがとな」
「別に…。あぁ、忘れるところだった。これはさっきの礼だ」
そういって、軽く握り締めた拳をロックの頭に振り落とす。
軽くだったが、油断していたのだろう…。
彼の首がかくんと折れた。
ふん…と鼻を鳴らすとは立ち上がり、先ほどのように岩壁に手の平をつけて進みだした。
微かにだったが、こほっこほっ…と咳き込む。
「さっき殴らないって――…」
「…(こほっ)忘れたな」
「こんのっ」
眉をひそめるロック。
前回のように噛み付いてくるのかと思いきや、今回はそれはないようだ…。
は壁に触れてないほうの手の平で口元を押さえながらこほっと咳をした。
「大丈夫か…?」
「ん?…咳のことなら問題はない」
「いや、それもあるけどさ…」
「(…。こいつって意外といい奴なのか…?)」
くいっと親指で前方を示す。
の視線も自然とそちらへと向く。
そして、至極表情をゆがめた。
「―――…っ!!」
「そ、つり橋。さんはどうするつもりなのかなぁ…」
前言撤回。
コイツは嫌な奴だ。
はハの字に眉を寄せ、風に揺れるつり橋を見つめるのだった。
+
「大丈夫かしら…」
心配そうにティナが呟いた。
ロックの言葉があった後、流されるままに先へと進んだティナは
後ろ髪を惹かれるような思いで下り道を歩いていた。
考えてみれば無理もない。
ティナとが離れる事は少なかった。
お互いがお互いを理解しそばにいる。
それが今は離れ離れ。
ティナにとってこんな不安はないのだろうな、とエドガーは思った。
とん、とティナの肩に手を触れる。
「ロックはああ見えても優しい奴だ。心配は要らない」
ええ、と呟くように相槌を打つティナ。
少しだけほっとした雰囲気だったが、やはり気になるようだった。
「では、麓まで降りたら二人をまとうか」
「…!ありがとう!」
エドガーの一言でぱぁ…と明るくなったティナ。
たった…といった効果音で駆け下りる彼女を見て苦笑の笑みを浮かべるエドガー。
だが二人の表情はすぐに消え去った。
ティナの背後に黒い大きな影が落ちたのだ。
「マッシュの手の者か?」
あとがき
12話っすね!
追加設定でラファエルは高所恐怖症です
過去のトラウマっぽいものでこの設定も後々出していくつもりです(多分ゾゾのあたりで…)