Angel's smile
握り締める彼の掌に力が入った――…
いざ!コルツ山へ 13
「渡、れた…」
一体どれくらいの時間がかかっただろう。
今のにとっては何時間もかかったように思えた。
渡りきれた途端頼りなく座り込み、再び地に手を着いたのだ。
隣にいるロックが「俺の手をかりながらだったけどな」と付け加える。
俯いてるには見えなかったが、彼は苦笑いをしていた。
「(こほっ)お前は…一言余計だ……」
「ふぅん」
「…なんだ。…もうひとつあるとか言うんじゃ、(こほ)…ないだろうな?」
「安心しろよ、ここからはくだりだ」
彼の言葉に、はほっと息を吐いた。
ひざを支えにして立ち上がると、少しだったが、目の前の光景に目を向けた。
桜色の髪が風に揺れる。
はただただ一点の方向を集中してみていた。
ロックが疑問の目を向ける。
「……………今、ティナの声が聞こえた」
ポツリとそう零した。
言うが早いか、は既に地面をけっていた。
先ほどまでの光景からは信じがたい動きだった。
「ティナのことになると、ほんと性格変わるな…」
+
「マッシュの手の者か?」
ティナの背後に現れた男は言うが早いかティナの右腕を掴む。
できる限り押し殺されたティナの悲鳴をきいて、エドガーは機械を構える…
だが、
「…っ!」
構えた武器、オートボウガンは命中範囲が広い。
この距離で放ったものなら、確実にティナに当たるだろう。
エドガーは自分の不甲斐なさに奥歯をかみ締めた。
その時だ。
ティナを拘束する男のさらに背後に人影が写る。
それが自身の知る人物だとわかるとエドガーは余裕気に口角を持ち上げた。
「…何!?」
男が驚きを声に出した。
男の背後に現れた影…は男に回し蹴りを繰り出す。
勢いを殺さないように逆の足も。
そして、極め付けには右の手で男の衣服を握り逃がさないように捕まえて左手を高く振り上げた。
… サンダー …
ばちっと左手が電光を帯びる。
がにやりと笑った。
流石にここまで来れば男も何らかの対処を取るだろう。
の読みは当たり、男はの回し蹴りを受け止めたのとは逆の…
ティナを捕まえていた方の腕をに振るったのだ。
に向かってティナを投げ飛ばした…といったほうが正しい表現なのだろう。
は待ってましたといわんばかりに魔法を解除してティナを受け止める。
「これはおまけだ…よっ!」
エドガーの元へ後退しながら、
は腰のベルトに隠し持っていたナイフを男へと向かって投げた。
ここまでで、わずか数十秒。
あの身のこなし、それと計画性…それはの“経験”を感じずに入られなかった。
「ティナ奪還成功♪」
「良くやった、」
エドガーは自身より少し後ろに着地したのを横目で確認しながらオートボウガンを放った。
「怪我は?どっか痛む?」
「平気…。ごめんなさい、私」
「…っと。結果オーライだろ?」
「遅いぞロック(こほっ)」
「元の原因はお前だろうが…」
「…根に持つ奴は嫌いだ」
「どうも」
エドガーの攻撃に男が怯む。
はロックに悪態をつきながらも男を見据える。
立ち上がったそのときに左手に違和感を感じた。
「…(捻った、か)」
「どうした?」
「なんでもない」
素っ気無く返して、呟くように誰にも聞こえないように「リジェネ」と呪文をかけておいた。
ロックが男に「何者だ!?」と、問う。
エドガーは一瞬はっとした表情になった。
「マッシュ?マッシュはいるのか?」
「さっきからうろちょろしていたのはお前だな?」
「…!」
全然気付かなかった…。
は内心自嘲気味に笑う。
四人の姿を捉えて男はふ、と鼻で笑った。
「貴様らが何者とて捕まるわけにはゆかん。このバルガスに出会ったことを不幸と思って死んでもらうぞ!!」
小さくが舌を打つ。
また、面倒なものが…とでも思ってるのだろうと、ロックは傍からみて思う。
“彼”はいま、誰が見てもわかるほどに機嫌が悪かった。
軽く咳き込む。
… サンダー …
が頭上に右手をかざす。
右腕に電気がまとったかと思うと、男…バルガスに投げ(外してあっ)たナイフが
まるで避雷針のような役目を果たし、の電力を吸い取る。
バルガスの注意が一瞬でもナイフのほうへとそれた。
ここぞとばかりにエドガーとロックが武器を構える。
「チィ!!こざかしい。まとめてあの世に送ってやる!!」
バルガスが叫ぶ。
ぞくり…との背に悪寒が走った。
刹那…
「やめろ!!バルガス!」
大柄の男がバルガスの前に立ちはだかる。
あとがき
13話更新。
戦闘シーンを書くのは初めて…かな?
今までほとんど飛ばしてきたもんなぁ…
でも、いつかは書かなきゃ、という事で。…はい。