Angel's smile
















浮遊感を感じながら呪文を詠唱する――…















いざ!コルツ山へ 14















バルガスが四人の前に現れた男を見据えて「マッシュか!」と叫んだ。


四人を巻き込まないようにする男…マッシュはどこかエドガーと面影が似ている。


憎悪に染めつつあるバルガスにマッシュは声を張り上げた。




「バルガス、なぜ、なぜ、ダンカン師匠を殺した?実の息子で、兄弟子の貴方が!」




マッシュはぐっと握っている拳に力をこめる。


ぎしっ…と軋んだ音がした。


押し殺した怒りや悲しみ。


は後ろからその光景を黙って見つめていた。




「それはなぁ…奥義継承者は息子の俺ではなく拾い子のお前にさせるとぬかしたからだ!!」


「違う!師はあなたの…」


「どうちがうんだ?ちがわないさ、そうお前の顔に書いてあるぜ!」




説得を試みようとするマッシュに、一方的なバルガス。


二人の会話はまるで噛み合ってない。




「師は、俺ではなく……バルガス!あなたの素質を……」


「たわごとなど聞きたくないわ!自らあみだした奥義!そのパワーを見るがいい!!」





― 必殺! 連風燕略拳 ―





言葉とともに繰り出された拳が突風を生む。


突風がまるで退けるようにティナ、ロック、エドガー、の四人をさらに後方へと吹き飛ばした。


その場に踏みとどまる事ができたのはマッシュのみ。


歓喜をあらわすように、バルガスは笑った。




「流石はマッシュ!親父が見込んだだけのことはある男!」


「や……やるのか…」


「宿命だ。そしてお前には私を倒す事などできぬ!それもまた宿命だ!!!」




ぐっとマッシュは言葉を詰まらせる。


そして、静かに息を吐くと彼の目は落ち着きを取り戻していくようだった。


先に地をけったバルガスがマッシュの腹部に拳を繰り出す。




― 終死拳 ―




ぐっ…とマッシュの口から苦しげな言葉が漏れた。


バルガスの攻撃に何とか耐えたマッシュはしばらく腹部を押さえていたが、


じわじわと痛みそのものがひいていくような違和感を感じる。




「フッ……お前の命もあとわずかだ!」




バルガスが一瞬ガードを緩めた。


それを見逃すマッシュではない。


思いっきり地を蹴りバルガスとの距離を縮めるとバルガスの懐に拳を繰り出す。





― 爆裂拳 ―





それも何度も。


ガードさせる隙を与えないほどの速さでパンチを次々に繰り出すマッシュ。


バルガスは「うっ…ががががっっ!」と声を上げた。




「す、既にその技を…!!」


「あなたのおごりさえなければ…師は……」




地に伏せるバルガスを背にマッシュは一度俯き、四人の下へ歩み寄った。









 +









頭に強い痛みを感じながら意識は覚醒へと向かう。


頭部を押さえながら記憶の糸を辿るように視界を広げると、


心配そうに見つめるティナとその他三人の姿が…。




「その他ってなんだよ。その他って…」


「煩い」


「おっ、大丈夫そうだな」


「〜〜〜っ」




ふい、とそらしたの瞳に左手が映る。


そして自身の左の腕を「これは…」と少し持ち上げた。


かすかに残る痛みと、白い包帯を巻かれた左腕…。


は小首をかしげる。




「さっきのお礼」


「ん…?………………!」




ロックがそういって、少しだけ腕をあげたのを見て身構える


先ほど、自分がした光景を思い出したのだ。(12話参照)


しばらくたって頭に感じたのは強い衝撃ではなく、軽いもの…


叩くというよりは、手を置いたといった表現の方がしっくり来る。


恐る恐るといった風に見上げると、してやったりと言ったロックの姿が。


は不満げにむっとしてみせた。




奥で、マッシュがはは、と乾いた笑みを浮かべる。


エドガーがマッシュを紹介した。




「お、弟…!僕てっきり大きな熊かと…」


「「「…」」」


「やっぱり、にもそう見えるのね!」


「…え?ティナも?」




驚いた…。と言わんばかりな表情をするに、


ティナは恥ずかしそうにこくんと頷いた。


「あ」と口を塞いだだったが、時既に遅し。


空気はズーン…と効果音がつきそうなほど重たいものへとなっていた。


マッシュが俯く。




「なぁ、兄貴…俺って熊に見えるのか?」


「…気にするな、マッシュよ」




とん、と弟の肩を叩くエドガー。


…おいおいそれじゃあ慰めじゃなくて肯定に聞こえないか…?


てか、人が気を失っているうちにいくらか話が進んだようだな?


…なぁ?





立ち直ったマッシュがのもとに再び歩み寄る。




「さっきはありがとな?」


「…?」


「ティナに聞いたけどちがうって言ってたからさ。じゃないかなぁ…って」


「!…………何のことだか」


「照れんなよ」


「照れてない!!」




即答するをまるで子供を相手しているかのようにからかう。


同レベル…


その場にいた全員がそう思った。


むっ、とあからさまに不機嫌にするにはっは、と盛大に笑いながらの頭を叩くマッシュ。




「おいてくぞ!!」




はティナから帽子を受け取ると早々と歩き出した。









 +









「お前、あの時の餓鬼なのか!大きくなったなぁ…」


(むっ)………金属製のもの持ってないか?」


「「………………」」


「金属?いや…もってねぇよ」


(ちっ)…」


「「(今、舌打ちした!?!?)」」


「あぁ!金属なら兄貴がたくさん――…」


少し黙っていようか、マッシュ…


「………?」









愉快な仲間が加わりました。














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あとがき

14話、更新です…
なんかシリアスっぽくなったので最後はギャグ風味に…
マッシュ>ラファエル>ロック って図がすでにできてる気が…(きのせいか?)
次からリターナー編に入れる!!
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