Angel's smile
















アカイテ チノイロ キエナイヨ?――…















地下組織リターナー 15















ため息をひとつ。


寝返りを打って、目を閉じた。




外では今マッシュとエドガーが見張りをしている。


積もる話もあるのだろう。


一枚向こう側からは楽しげに話す二人の声が聞こえてきた。




ゆっくりと閉ざされていた視界を広げてみると、横になって眠る二人の姿。


信頼してくれたのかはいつしか、ティナとともに横になって眠るようになっていた。


ちょうどエドガーが仲間に加わった辺りからだったか…。


ロックはぼんやりと頭の隅でそんなことを考えながら、


先ほどのコルツ山での光景を思い出した。




「(叩いてやろうと思った…。今までの仕返しだって…)」




でも、しなかった。


否、できなかった。




腕を振り上げた刹那の“彼”の表情。


それを見た次には拳を開いて、触れる程度での頭に降りていた。




「(…考えすぎ、か)」




辿り着いた答えはそれ。


ロックはほう、とため息をつくと何気なくを見つめた。


軽く咳き込む


その表情は苦しそう。




「(まだ、咳き込んでるな…)」




ゆっくりと腕を伸ばしての額に触れる。


ほんの少し身じろいだが、起きる様子はない。


ロックは手の平に感じる体温に眉を寄せた。




微熱…。




「(疲れ…か?)」




思い出してみると最近は野宿ばかりしている。


途中でよるはずだったサウスフィガロもの意見をエドガーが尊重してよらずじまいだ。


コルツ山でもティナを守る事にプラスして後方から俺たちの援護もしていた。


けれども、本人そんなそぶりは一度も見せてはいない。


…。




「(……………………………考えすぎ、か)」




寝返りを打ち、腕で視界を閉ざす。


静かに息を吐くとそのまま誘われるように眠りについていった。









 +









翌日。


コルツ山を抜け一泊おいた一行は、山沿いを北へと歩く。


太陽が真上に昇り始めた頃…、


今回の目的地、リターナー本部に到着する事ができたのだ。


そこは洞窟の内部に在り入り口にいた見張りがエドガーやロックの姿を捉えて、


本部内にいる指導者、バナンのもとまで案内してくれた。




通されたのは広い部屋。


奥に座る人物は5人の姿を捉えるなり、ゆっくりとした動作で腰を持ち上げた。




「バナン様。例の娘をつれてまいりました」


「ほう、この娘か…氷づけの幻獣を反応したというのは…」




興味深い、と言わんばかりにティナを見つめる指導者バナン。


ティナは不安そうに眉をひそめながら「幻獣」と言う単語を復唱する。




「どうやらこの娘は帝国に操られていたようです」


「伝書鳥の知らせでおおよそは聞いておる。帝国兵50人を3分で皆殺しにしたとか…」


「!」


「いやー!!」




ティナは耳を両手で塞いで、にしがみつく。


は小刻みに小さな身体を震わせるティナの頭を撫でながら、


バナンを睨むように見つめた。




「バナン様、酷すぎます!」


「逃げるな!」




エドガーの抗議を制するようにバナンは声を張り上げた。


それにはティナはおろか、口を開きかけていたを押し黙らせる。


は控えめに咳き込んだ。


バナンは話を続ける。


パンドラの話だ。









 +









まだ邪悪な心が人々の中に存在しない頃、


明けてはならぬとされていたひとつの箱があった。


だが、一人の男があけてしまった。


中から出たのは、あらゆる邪悪な心…


嫉妬…


妬み…


独占…


破壊…


支配…


だが、箱の奥にひと粒の光が残っていた…









 +









「希望と言う名の光じゃ」




そこで一区切りおく。


沈黙する一同。


バナンは先ほどとは打って変わって落ち着いた口調で言った。




「どんな事があろうと自分の力を呪われたものと考えるな。おぬしは世界に残された最後の粒。




 [希望]と言う名の光じゃ」




最後まで暗黙のまま話を聞いていただったが、


軽く胸元を押される感触に気付く。


ティナがゆっくりと大丈夫と呟いて、はそっと離した。




「ところでおぬし…」


「…何だ」


「その帽子をどこで手に入れた?」




思いもよらないバナンの一言にその場にいた全員の視線がへと向かう。


は不機嫌に顔をしかめる。




「…。父さんにもらった」


「嘘をつくでは――…」


「嘘じゃないさ。この帽子は僕の父、コーリン・からもらったものだ」




バナンが最後まで言い終わる前にが言葉を紡いだ。


至極めんどくさそうにため息をはく


「別にどっちだっていいけど」と曖昧に言葉を濁すにバナンはそうか、とだけ言って歩き始めた。


エドガーたちの隣を横切ったところで振り返らずにバナンは口を開く。




「名を、なんという?」


「…。


…。ではおぬしが…」


「…?」





「5分間で100人以上の帝国兵を暗殺した帝国の兵器…」










バナンがそう紡いだ刹那、はそっと目を閉じた。














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あとがき

とうとう15話まできました
その記念すべき15話目が暗めでごめんなさい…;;
書きたいところをどんどん書いて言ったらこうなったの…(無計画)
へんなスイッチが入ってるのかも…
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