Angel's smile
















もう、駄目なのかな?――…















地下組織リターナー 16















隣にいたティナが驚愕の表情を浮かべながら、を見据えた。


それはティナだけではない。


バナンを除く、その場にいた全員…がだ。


は無言、無表情のまま。


こほっ、と咳き込んだ。




「わしもこの話を聞いたときは耳を疑った…。わずか10にも満たない子供のする事とは思えん」


「…。(こほ、こほっ)」


「バナン様!」


「疲れた…休ませてもらうよ」




バナンはその場にそういい残して、部屋を立ち去る。


残る一同に長い沈黙が続いた。


が二度目のため息を吐く。


投げやりに、だった。




「ゎ、私…。ジュンさんに聞いたの…」




声が震えている。


俯いているせいで言葉は下へと向かっている。


表情はおそらく、絶望…。




には操りの輪はついてなかったって…っ」




ティナの言葉にマッシュは疑問の視線を兄へと投げる。


が、エドガーは眉をひそめるだけ…


ティナに両腕を掴まれながらは目を伏せた。




「…大丈―」


「答えてっ!!」


「…」




ティナが初めて声を荒げた。


涙が浮かぶ翠色の瞳がを見上げる。


その場に数秒の沈黙が流れた。


ティナの頬に一滴の涙が伝う。




「…どうして答えてくれないの?」


「…」


「…否定しないの?」


「それが事実だから」


「―…っ!!」




の口から漏れた言葉は以外にも落ち着いた口調だった。


淡々と何事もなかったように、無表情でそういって、ティナから顔を背ける。


ティナが目を見開く。




そして、両手でを突き飛ばした。




強く。


ティナはグッと唇をかみ締めながら部屋を飛び出す。


今まで黙っていたロックが「ティナ!」と声を出した。




ごほっごほ…とが咳き込む。


膝をついて、胸を押さえる。


手で口を覆った。




「…おい、




――…パシッ




差し伸ばされたロックの手を払う。


膝を支えに立ち上がるとゆっくりとした足取りでティナの後を追った。


ロックも、付き添うような感じで後を追う。




「…あ、兄貴!」


「ん?……………!」




マッシュが指差したのは先ほどまでがしゃがみ込んでいた場所。


エドガーが眉を寄せた。


赤い染み。


それも新しく、今ついたばかりのもの…




――ドッ…バタン……




――!?」




ロックの声に、エドガーとマッシュの二人は慌てて駆け寄った。









 +









狭くて、暗い四角い空間。


高い位置に小さな窓がひとつ。


薄暗闇に光が差し込む。


三日月の光。


目を閉じて、小さく息を吐いた。


そして思う。









あぁ、またあの夢か…って。









今までにも何度かあった。


僕が帝国にいたときの夢。




暗くて、


冷たくて、


さびしくて…




黒いものがぐちゃぐちゃになる感じ。




そしてふと、視線を上げると当たり前のようにあの人がいるんだ。




「なんだ、また来たのか?」


「酷い言い草。…来て欲しかったくせに」


「…」


「あら?図星?」




目の前の女性はフフ…と綺麗な笑顔で笑う。


自然な動作で私の隣に座る。


…何度も見た同じ夢。


でもここからはいつも違った。


何時も。




「疲れた?」


「…」


「そう…。少し休む?」


「…うん」




女性が腕を伸ばして、手の平が背中と後頭部に触れる。


優しい動きで包み込む。


気付けば僕は女性の腕の中にいた。




温かくて、


それがなんとなく安心できて、




ぬくもりを感じながらゆっくりと目を細めていく。









この温かさは似てるんだ。




かすかに覚えている、お母さんの温もりに…









 “ おやすみ ” 














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あとがき

16話、更新です
前回の話の流れで書いていたらとんでもない事に…(予想済み)
このへんの話も勿論考えていましたよ
うまく伝わったかな…?
次はちょことっとだけ過去を入れたいと思います^^

書きたくないところほど、かける人になりたい…っ!
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