Angel's smile
















私の道標――…















地下組織リターナー 20















――… バタッ …――




「なんじゃ?今の物音は」




人が倒れるような音に兵達がざわめく。


真っ先にが駆けつけて、


入り口付近で力なく倒れこむ兵の怪我具合をみるため、さっと目を配る。


左手がふわりと光を帯びた。


回復呪文を使う気なのだろう。


エドガーが手首を掴んでそれを阻止する。




「しばらくは魔法は控える事」




は不満そうだったが、腰のポーチから小瓶を取り出すと、


すばやく兵隊に飲ませた。


肩で荒く息をしていた兵の傷が段々と癒えはじめる…




「(これはあのときの泉の水…)」




ロックは傍からその光景を見ていて思い出していた。


とりあえずは落ち着いた兵が事情を説明する。




「た、大変です!バナン様。サ、サウスフィガロが…」


「お、おい!どうした!?」


「て、帝国がサウスフィガロからこちらへ向かっています…」


「!?」


「何でお前が一番驚いてるんだよ…」


「いや…うん」




どちらとも取れる答えで曖昧に濁す


その顔には驚きが隠せないでいた。


がぎゅっと眉を寄せたのをロックは横目でちゃんと捉える。




「気付かれたか…作戦を急がなくてはならん!!」


「ロック!」


「わかってる。サウスフィガロで内部から敵を足止めする作戦だろ?」




まるで内容やこれから自分のしなければいけないことを伝えるかのような話しかただった。


がはっと顔を上げる。




「僕も…っ!僕もつれてって!」


「…え?」


「おい、…」


「如何したんだい?いきなり…」




上から、ティナ、マッシュ、エドガー。


ロックにいたっては何事かを考えているようで、黙っている。


理由を訊かれて、言葉を詰まらせる


まさか、夢に出てきた女の人にいけ、といわれたからなんていえるわけもなく…




「…噂で、聞いたんだ。僕の友達がいて…その人がサウスフィガロに、いるかもしれないって…」


「…。コルツ山経由になるんだぜ?」


「別に構わない!」




絶対に足手まといにはならないから、とは必死だった。


ここまで力の入ったをティナですら見たことはなくて、


エドガーはお前に任せる、といった視線をロックへと投げた。




「潜入や足止めの経験は…?」


「!…ある!」


「よし!じゃあ問題ないな!」




ロックはにこっと笑い、エドガーに頷く。


はよし、と掌を握り締め、意を決するようだった。




「ティナ、俺たちが戻るまでおとなしく待ってなよ。…特に…」




手が早いことで有名などこかの王様には気をつけろよ。


そう付け加えて、一足先に本部を後にする。


エドガーはそんな彼に「ロック!」と声を上げた。


はそんなエドガーにククッとのどを鳴らしながら、不安そうに俯くティナの頭に手を伸ばす。




「くれぐれも気をつけろよ」




何に、とはいわずにティナにそう告げた。


ティナはふんわりと微笑しながら「ええ」としっかり頷く。


マッシュが傍から「兄貴…まだそのくせ直ってないのかい?」とぼやくのだった。




「じゃあ…。ナルシェで」




は最後にそれだけ伝えて、ロックの後を追いかけるように部屋を出た。









 +









見覚えのある道のりを種を返すように歩く。


やや曇り空。


分厚い灰色の雲がぎっしりと見上げた視野全体に広がり、


は「雨、降らないといいな」と内心思っていた。


ロックが「なぁ」と切り出す。




「本当の理由、教えろよ」


「…ん?」


「俺にも言わないつもりか?」


「うん」


「(即答…)却下、話せ」




命令形でロックは淡々と述べる。


じゃあ何で訊いたんだよ、と内心ぼやきながらは話そうかどうか迷う。


ん…と呟くは何となくロックの後姿を見つめた。


そのとき何故か話そうという気になったのだ。




「夢にさ…」


「…夢?」


「出てくるんだよ、たまに。雰囲気がロックに似てる女の人が…」


「…(遠い目)。ほぉ…そりゃあ、遠まわしに俺が女々しいと?」


「言ってないよな、一言も…。でさ、その女の人が“僕の友達が捕らえられてるから行け”って言ったんだよ」




はぁ、と面倒くさそうににため息をつきながら、はぼそぼそと言った風に言う。


七面倒くさそうに話している癖に、必死になって助けたいと望む。


伏せられた瞳からは焦りや緊張が読み取れた。




「だから、助けるのか?」


「…うん。今までそれで何度も助けられたんだ。今度もきっと大丈夫…」




ロックに言うと言ったよりは、自分にへと言った感じがする。


ふぅん、と相槌を打つロック。




「と、とりあえず、大丈夫なんだ!…うん」


「いま、無理やり納得させようとしたろ?…見え見え」


「煩い!」


「おっと、そんなに元気ならきっと大丈夫だって…」


「あぁ?慰めてんのか?それとも貶してんのか?…言ってみろや」


「言ったら怒―――……って、あ゛ーもう!埒が明かねー」


「〜〜〜〜っ!!」




バチチ…と音を鳴らしてにらみ合う二人は子供レベル。


かなり不機嫌にふいと顔を背けたの表情は怒りや照れと言う感情を除けば笑顔に近いものだった。









変わっていくのは いけない事ですか?









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あとがき

20話up!!
リターナー編はこれにて終了です
次からサウスフィガロに入ります

なんだか賛否両論ありそうで怖いですねぇ…ははっ!
この連載を書くならロック編だ!って考えてたんですけど、
私の知る限りFF6連載を取り扱っているサイト様は皆様マッシュたちのほうへいってしまうんですよ…
初・挑・戦!のノリでがんばっていきたいと思います
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