Angel's smile
ゲームはこうでなくちゃ――…
サウスフィガロの街 21
帝国兵に追われるようにサウスフィガロの町の内部に潜入することに成功するロックとの二人。
しつこく追いかけてきた帝国兵も死角に隠れこむ事で、簡単に巻く。
完全に気配が遠のいた事を確認すると、はほう、と息を吐いた。
壁にもたれてロックは先日、コルツ山でがやらかした事を思い浮かべる。
+
コルツ山に雨雲がかかる。
の願いはむなしくも打ち砕かれ、
二人は地面がいくらかゆるくなった山道を歩く羽目になった。
それも、以前通った広めの道ではなく、まるっきり山道。
それは万が一にも帝国兵に見つかる恐れがあるからだった。
ふつふつとの中に怒りに似た感情が積もっていく。
「な、ロック」
「ん?」
「いいこと思いついた。帝国兵をここで足止めできる方法」
うまくいったらいまよりスムーズに動けるようになるかもな。
とは至極楽しそうに淡々と言う。
こき、と関節を鳴らす姿を見る限りは何かやらかすきだ。
ロックは顔をしかめながらたずねた。
「落雷での土砂崩れってのはどうよ?」
「お前…100%魔法使う気だろ…」
「問題ない。こんなに天気が悪かったら僕がやったってわからないって」
「そういう問題でもない…!」
「んじゃ、始めまーす」
「…………」
無視。
ロックは盛大にため息をつくと、近くに背の高いものが無いところまで離れる。
ほどの実力者なら仲間を巻き込む事は…ない………とおもう。
…が、なんせが魔法呪文を詠唱していた。
規模が違うのだろう。
は指を重ねて詠唱し、それが終った頃には両手を空へとかざした。
… サンダラ …
雲間に光が迸る。
光、そして少し遅れて音と続いて雷が山の高いところに落ちた。
コルツ山の大道を塞ぐかのように土砂が道に積もったのだ。
はご機嫌にロックへと視線を投げる。
「どう?」
「…上出来だ」
「どうも」
ククっ、とのどを鳴らすように笑う。
その表情は悪戯が成功した子供みたいだった。
ロックは頬をかきながら苦笑の笑みを浮かべた。
+
「ロック」
の声にロックの意識はこちらへと呼び戻される。
いままで、周りの兵の様子を探っていた。
何かを見つけたらしい。
「ちょっとさ、別行動しない?」
「却下。一人でお前の友達助けに行く気だろ?」
「…(ちっ)…じゃあ、約束する。一人では行かない。でも、場所を掴んでおいて損はないだろ?」
「…。どうする気だ?」
は向こうからは死角のところにいる、緑色の服を着た帝国兵を指差す。
ロックは意図が読めず首をかしげた。
「緑色の兵隊服ってのは一番下っ端の証なんだ」
「…だけどそんな下っ端の奴に情報なんて回らないだろ?」
「そいつになりすますんだよ。んで、うまい事兵の中に紛れ込んで情報を聞き出す。
ざっと20人くらいいるから一人入れ替わってもばれないだろうし…。
合言葉とか鍵とか(お金とか)あるんだったら頂いておいて…」
「(あれ?今なんか聞こえたような…)じゃあその間に俺も俺で捜索できるってわけか…」
「そういう事」
そういうのは本業なんだろ?
と付け加えて、緑色の兵隊に目星をつけている。
見つからない程度に周りに視線を配らせるは楽しそうだ。
わくわくとした期待の色を浮かべるに、ロックは肩をすくめた。
「じゃあ、1時間後。あの大きい家に集合ってことで」
つかまんなよ。
お前もな。
と短い会話が続いて、解散する。
ロックはちらり、と振り返ったがそこにの姿は無い。
ふっと笑うと、道具屋のドアに手をかけた。
+
「(ちょっと大きいけど…まぁいいか)」
兵の着ていた服に着替えながらそんなことを思う。
女と男の体格の差が、そうさせるのだろう…。
今着ている服の上から被るようにコートに袖を通し、
お守りの帽子を外してヘルムを被った。
桜色の髪を隠すようにヘルムの中へ入れ込むと、さしてそこらの兵と変わりない姿へと変わる。
横目で合言葉・鍵・お金を出し終えて用済みとされた兵にくすりと笑みを零す。
「悪いね。もうちょっと寝ててよ」
もう一度…今度は強めにスリプルを唱える。
すぴーと起きる気配の無い兵を尻目に、町の中へと歩き出した。
「さぁて、ゲームスタートといきましょうか?」
あとがき
ちゃくちゃくと21話upです!
サウスフィガロ編突入です。
なんだか書いててわくわくしますねぇ…
帝国時代ヒロインはゲーム感覚で捜索任務なんかを楽しんでました。
(勿論人前ではそんな素振りは見せませんでしたが…)
他のどんなものよりも好きだったんですよ。…これが
かくれんぼをするような感覚って言ったらいいのかなぁ…
見つかるかも、でも見つからないかも。
見つからなかったときは思わずにやけてしまう。
そんな緊張が好きだったりするのかもです