Angel's smile
















本当に説得力がないな――…















城下町サウスフィガロ 23















「生き…ていたんだな」




女は嬉しそうに目を細めた。


は「そんな柔じゃないよ」を憎まれ口を叩き、


鍵を錠の穴に差し込む。


その光景を見つめながらセリスは言葉を紡いだ。




「死んだ、と…。帝国ではその噂で持ちきりだ」


「あらら、でも残念。生きてる」


「ええ、生きてる…」




薄く微笑むセリスに、は苦笑の笑みを浮かべる。




「馬鹿だね、僕はまだ死ねないんだよ?」




モクテキヲ ハタスマデハ…ネ?









 +









三回のノック音を聞いて、ドアノブをひねる。


恐る恐ると言う風にドアを開けると、そこには鍵で女の上を外していると、


傍にあるイスにだらしなく座り、寝息を立てている兵の姿があった。


ぐっすりと眠る兵を黙視するロックは、「にやられたんだろうな…」と、


少なからず同情する。


カチ、と音と共に女の手首から錠がはずれ、がロックに視線を投げた。


その表情は今までにみた事がないほど嬉しそうなものだった。




「お前は…」


「リターナーに組するもの。ロック」


「リターナー!そうか…」




その単語に覚えがあるらしく、セリスははっと視線をへと投げた。


は子供っぽく笑いながら肩をすくめる。




「私はセリス将軍…だった。今はただの裏切り者」




ほんの少し痕の残る手首を握りながら、セリスは自嘲気味に笑った。


ロックが二人に背を向け、行くぞ!と言葉を紡いだ。




「!?私を連れてか?…いいや無理だ。走る事ができない。


 ありがとう…だが仮にお前達が私を連れだしても守りきれるはずが無い…。」




それならば、ここでいさぎよく死を迎えたほうが…。




「守る!俺が守ってみせる」




そしてロックはに視線を投げた。


へいへい、とが息を吐く。




「足…見せてみ?」


「…え?」




傷ついた足に手の平を伸ばす。


ケアルのときとは違った白い淡い光が傷ついた箇所を包み込み、癒していく。


の魔力が具現化して、羽になっていくようにも見えた。


ケアルよりも短時間で怪我を治癒する。


驚くセリスやロックを他所に、が呟くように言う。




「守るよ…必ず!」




ほら、いくよ。


ロックの言葉と被るようにいって、手を差し伸べた。


その手を見つめて躊躇いを見せるセリス。


それはがナルシェでジュンにされたのと全く同じだった。


は手をさし伸ばしたまま。


セリスは小さなため息を吐くとその手を握り締めた。




刹那、何かを思い出したのか、セリスは「あ」と小さく言葉を漏らす。


が疑問の視線を彼女へと投げた。




「大事な事を忘れていた。コーリンさんからずっと…預かってたものがあったんだ…」




セリスの発言に、が小さく首をかしげる。


身に覚えがないようだ。


ロックはコーリンと言う名を聞いて、すぐにその人物はの父親だと気付く。


セリスはベルトの裏から楕円形の水晶のようなものを取り出した…。




「ずっと昔に渡されて…、渡してくれって」


「…僕に?」


「ええ」




ふうん、と曖昧な言葉を零す。


その半透明な水晶をみて、ロックはきらりと目を輝かせる。


はわざとらしく「ドロボウ」という単語を呟く。


それは半ば呆れて物も言えないと言った感じだった。




「俺はトレジャーハンターだよ!…と言うより、お前が言うと本当に説得力が無いよな!」


「安心しろ、自覚済みだ」


「ああ、そうかよ…」




セリスは二人の会話を傍から聞いて、仲がいいなと思う。


だが、何かを悟り暗黙のままでその場を終らせたのだった。




「父さんがねぇ…」


「詳しくは聞けなかったけど、渡せばわかるって…」


「いや、うん。わかるっちゃわかるんだけど…」




何か七面倒くさそうな雰囲気だった。


しばらく差し出されっぱなしだった水晶を見つめていたが、


諦めたようにセリスに手を差し伸べる。


重力にしたがって、セリスの手の平からの手の中へと零れ落ちた。


だが、驚いたのは手の平に落ちた水晶が溶け込むようにの仲へと浸透していったことだ。


その光景を見た二人は目を剥いて驚く。




「な、なんだ?」


さん…っ?」


「二人とも落ち着けって…」




苦笑しながらそういうに異常は無い。


水晶が完全にの中に消えると、両手首に紋章が浮かび上がる。


それが具現化したのはしばらくのことだった。




「だ…い丈夫なのか?」


「っぽいな」


「…っぽいってあなた…」




金色のブレスレッドを眺めながらさらりと呟く。


ロックとセリスの二人は若干呆れ気味にため息をついた。




は腰からソードを鞘ごと取り外すと、


それをセリスへと手渡した。




「やる。新調したばっかであんまり使ってないから使いづらいかもだけど…無いよりはいいだろ?」


「やるって…。さんは?」


「僕にはこれがあるし…」




何かを企むような眼差しでブレスレッドを見つめた。


ロックとセリスは意味がわからず首を傾げたが、


が口角を持ち上げたのを見てとりあえずはよしとしたようだ。




「ふっ…ロックにばっかいいところとられてたまるか…」


「…てめ。本音はそれかよ」


「他にないだろうが」


「「……………。」」




フン、とは鼻を鳴らすと、セリスと繋がっているのとは逆の手の…


今まで握り締めていたものを指ではじいた。


キィン、と言う音がしてロックとセリスの視線もそちらへと向かう。


軽い音を立てての手の中に戻ったそれは、


銀色をした、時計か何かの鍵だった。




「いいけどね、別に」




カチャりと扉の裏側に差し込む。


ドン、と大きな音を立てて隠し扉が開いた。


は何事も無かったようにその扉をくぐる。




「置いてかれたい?」




どうやらは機嫌がいいようだ。









通路を通り、三人はサウスフィガロ脱出に成功した。














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あとがき

23話更新っ!!
流れ的にはほとんど進んでませんね…(苦笑)
次くらいでサウスフィガロ編が終る事をひそかに願ってます。
頑張れ深!
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