Angel's smile
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――…
城下町サウスフィガロ 24
父さん…。
リングは僕を拒絶しなかったよ?
それは…
リングが僕を選んだってことなんだよね?
+
過去に一度通った事のある洞窟を今度は逆から進む。
時折聞こえてくる地響き以外は全く変わらない風景。
「暗、い……な…………………否、なんでもない」
「遠慮すんなよ、明かりだろ?」
「やめろ…サンダーだけはやめろ…」
「さんの魔法はいろんな意味で危ない…」
「うっわセリスまで…。ったく…」
なんだよ、二人して…と、悪態を零す。
その表情は見てろよ、といった好戦的なもので、
セリスとロックは無意識のうちに「また何かやらかす気だな」と悟る。
がしていたのは簡素な松明作りだった。
昨夜、焚き火に使うはずだった枯れ木をとって置いたらしい…
それに適当なぬの切れを巻きつけ、秘密の水と称する液体を数滴分ぬの切れにしみこませる。
そこに静電気程度のサンダーを発生させれば一丁上がりといった次第だった。
「「おぉ…」」
二人が歓声を上げる。
洞窟に明かりがともったことにか、が素直に明かりをつけただけだったことにか…
おそらく後者だろう。
暗黙を貫く二人の表情がそれを物語っている。
二人はいろいろな意味でに内心感謝するのだった。
は自慢げに松明を洞窟内にかざした。
「そんなのどこで覚えたんだよ…」
「ロック、それは悪戯した子供に言う台詞だ…」
「誰が子供だっ………。マッシュが教えてくれたんだ!」
「…アイツがねぇ」
なにやら不満げに相槌を打つロック。
ゴロゴロゴロ…
地響きが段々と近くで聞こえてくるようになった。
は疑問の視線を音源へと投げる。
「さっきから何の音だ?」
「壁の中から聞こえる…」
ちょっと松明かしてくれ…
ロックはそう付け加えてから松明を受け取る。
そして、が言った壁の方に明かりをかざす…
三人は一瞬硬直した。
―――ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
耳障りなほどの音に一番にわれに返ったのはセリスだった。
「ディックアーマーだ!」
「…うゎ。確かこいつの魔法食らったもんなら跡形も無かったような…」
「どうすりゃいい?」
ロックは既に戦闘体勢に入りながら、ディックアーマーに見覚えのあるらしい二人に問う。
二人は一度顔を見合わせると、ロックを習うようにそれぞれが構えた。
アイコンタクトをとったらしい。
セリスは一度頷いて、もらったばかりにソードを鞘から抜いた。
「魔法は魔封剣で私が引き寄せる!」
「そんなことして大丈夫なのか!?」
「まぁ、みていなさい!!」
はぐっと手の平を握り締める。
そして、握った何かを軽く振るような仕草をすると、握った何かが姿を現した。
…スタッフだった。
先端に半透明な水晶と翼の飾りがついた杖。
コートや帽子…そもそもに妙にしっくりときて、違和感は無かった。
セリス、ロック、の全員にほのかな緑の光が身を包んだ。
今まで負った小さな傷を徐々に癒していく。
… サンダー …
機械にはサンダーという知識からは躊躇うことなく電撃を浴びせる。
呪文詠唱なしでやってのけるのは杖の魔力のおかげだろう。
セリスは見計らって剣を振りかざし、ロックはナイフを構えると地面を蹴った。
腕にあたる部分を大振りするのをさらりと身をかわすことでよけ、
ロックは「そらよっと…」という小さな掛け声でディックアーマーに大きな傷をつける。
カウンターで毒属性魔法…ポイズンを唱えてきた。
… 魔封剣 …
ロックに向かうはずだった攻撃はセリスのソードが吸収する。
一度ソードおろした隙にが全員にケアルをかけた。
二人の動きはティナのときと同様に息がぴったりだ。
ディックアーマーの身体に異変が起こった。
ロックのつけた大きな損傷から最初にが浴びせた電撃が侵入し、
中でショートしたようだ。
「ふう、やっと振り切ったようだな」
その光景を見据えて、ロックが第一声を零す。
全く動かなくなった鉄の塊には「手間かけさせやがって」的な視線を投げた。
「この洞窟をぬけたら…」
期待に少しだけ目を輝かせたにロックはゆっくりと頷いた。
「あぁ、ナルシェだ――――」
あとがき
24話まできました!
これにてサウスフィガロ編は終了です
次からは雪平原の死守戦が始まりますねぇ…
(サブタイトルは変更する可能性ありですけど)
ディックアーマーとの戦闘でしたが、すみません途中で飽きちゃったんです(オイ)
だからあっさりと決着がついちゃいました…
…というよりゲームでも雷のロッドを使えば確か一撃で…[強制終了]