Angel's smile
















おかえり――…















雪平原の死守戦 25















「大体の話はわかった。しかしじゃ……わしらに血を流せというのか…?」




炭鉱都市ナルシェ。


ロックら二人と別れた後、残りのメンバーは本部の裏側のかわから筏に乗って川を下る。


途中、ささやかな妨害によりマッシュとはぐれてしまったものの、


バナンの冷静な一言により残ったティナ、エドガー…そしてバナンの三人は、


川の最下流…ナルシェまで辿り着く事ができた。


冒頭の発言はナルシェの長老のものだ。


ジュンは長老の言葉に否定を入れたが、バナンは大声で笑いながらいった。「その通り」




「わしらはあんたに血を流せといっておる」


「バナン!」


「ガストラ帝国はさらに魔導の力を得るために動き出しておる。


 この都市で見つかった氷付けの幻獣を狙ったのもそのため……」




このまま帝国が魔導の力を増大させていけば、過去の過ちを繰り返すことになる…




バナンは落ち着いた口調で淡々と述べる。


長老は俯きながら「魔大戦……」と呟いた。


一通りの会話を小耳に挟んでいたガードたちがざわめく。




「あの世界を破壊しつくしたという伝説の戦い……」


「それがまた起こるというのですか?」


「人間はもっと知恵のある生き物じゃなかったのか……」




長老は静かにそれだけ言って、事の重大さに目を伏せた。




――― バタン




「兄貴!」




ナルシェへと向かう途中、小さな事件によって別行動していたマッシュが、


二人の男を連れて長老の家に足を踏み入れた。


エドガーは弟の無事を確認し、ほっと胸を撫でおろす。


そして、後ろにいた二人に「そちらは?」と尋ねた。




「ドマ王国戦士カイエンでござる」


「ガウ、ガウ!!」




自己紹介はさておき…。


マッシュは付け足すように事の次第を説明した。




どうやらドマ王国は定刻によって皆殺しにあったらしい。


ケフカが川に毒を流した。


カイエンが搾り出すようにそう吐き出すと、


長老は「むごい……」と眉をひそめ静かに息を落とす。




「ウーム…だがそれはドマ王国がリターナーに協力していたからの話。


 中立を決め込んでいれば、帝国とてそんな無茶な事は……」




―― バタッ




「そんな事はないぞ!!」




長老の声を遮るようにロックが言葉を重ねる。


後を追うように歩いていたとセリス。


ティナはの姿を捉えるとぱぁ…と表情が明るくなった。


話に加わるきがないのかはティナを見つけるなりそばに歩み寄る。




「ただいま、ティナ。怪我とかしなかったか?」


「…っ。ええ!」




離れていた時間はほんの数日。


それでも何ヶ月、何年間も離れていたかのように寂しかったと…。


ぎゅっと腰に抱きついたティナに困ったように笑いながら、


いつもどおりに頭を撫でる


後で聞いた話だが、離れていた間ティナはずっとぼんやりしていて、


みていてひやひやしたらしい。


ほんの少し持ち上げて、ティナは「おかえり」と薄く微笑んだ。




「帝国はもうすぐここにやってくる!」


「なにっ!!」


「ロックよ。どこでその情報を?」




上からロック、エドガー、そしてバナン。


ロックはバナンの問に答えるかのように身を横へと動かした。


後ろから現れたのはセリス。




「このセリスが…元、帝国の将……「そうであったか!どこかで見た顔だと思ったら…」」




ガウ殿どきなされ!


カイエンの前を塞いでいたガウを突き飛ばし、


ずかずかとセリスの元まで歩み寄った。


が不機嫌を露骨にした事を、ティナはの元を離れる時に気がつく。




「マランダ国を滅ぼした悪名高いセリス将軍!この帝国の犬め!そこに直れ!!成敗してくれよう!」


「待ってくれ!セリスはもう帝国を出てリターナーに協力することを約束してくれたんだ」


「しかし!!」


「俺はこいつを守ると約束した。俺は一度守るといった女を決して見捨てたりはしない!!」




ロックの発言にエドガーは「まだあのときのことを…」と呟いた。


ティナは一瞬俯いたが、一歩ふみでて自分も帝国の兵士だったことを告白する。




「なにぃ!!」




――― キィンッ …




「カイエンって言ってたっけ?頭冷やしなよ…」


「なにを…っ!」




抜き身の刀を振り下ろすカイエンにはとっさにティナをかばう。


右腕を軸にするようにしてスタッフで攻撃を受け止めた。


ぎしっ…と腕が軋むがは何事もなかったような表情でカイエンを見据える。




「その髪色、その声…。、生きておったか!」


「生憎、そんな柔じゃないんでね」




さらりと皮肉を零すと刀もろとも振り払う。


至極面倒くさそうにため息を吐くと、静かに言い放った。




「やられたらやり返すのか…?子供の喧嘩じゃあるまいし…」


「貴様…」


「話を聞いてやれる耳くらいは持ち合わせているつもりだが…?」




口の端を持ち上げながらそういうは余裕そのもの。


一時は衝突を覚悟した面々だったが、


ワンクッションとなったの言動に内心安堵んの息を零した。


は「まぁ…」と紡ぎながら器用にスタッフをくるりと回す。




「それでもやるっていうなら…僕は止めないけどね」




スタッフを構え、身構える


カイエンは睨むようにに目を細めて、の表情を見つめた。









僕の仲間を傷つける奴は誰であっても許さないから…














←Back /Next→

あとがき

25話アップです^^
久しぶりに横道にそれずに原作どおり書けた気がします…
(一部を除く)(´w`*)

ラファエルははじめて仲間意識口に出したのでは(未確認ですが…)?
少しずつ変わりつつある成長っぽいものをうまく描写するのは難しいですが、
それだけにとても描きがいのあるものになってくれると嬉しいですね。

メンバー…集結!!
inserted by FC2 system