Angel's smile
















お母さんが残してくれた力――…















雪平原の死守戦 28















― 必殺剣 舞 ―




一度鞘に納めた日本刀を瞬時に抜刀する。


その名の通り待っているように見えるその技の連撃は


近辺にいた兵や、をモンスターを一瞬で退けた。




「今でござる!」


「…おう!恩に着るぜ!」









 +









仲間の生と仲間の死。


天秤にかけている自分がいて、


それを傍観的に眺めるのも自分。




両方大事。




でも私は弱いから、そんなことできないんだ。




「ゲームは終了。…まぁ…楽しかった…かな?」




唇が紡いだ言葉。




音が聞こえない。


声は届かない。


もう、ゲームは終わり。


終わり。





「バイバ―――――」


「…っ。最後まで…言わせない!」









――― ガッ ………









は再び地に膝をつく羽目になった。


たった今殴られた後頭部を悲痛に抑えながら…。


突然の出来事にケフカでさえも目を丸くして呆気にとられた。


は口元を引きつかせながらグッと立ち上がる。




「い………っったいなぁあ!!殴る事ないだろ!?しかもグーでっ!


 大体人の頭を何だと、思ってるの……さ………………?」




怒りメーターが急降下。


尻すぼみ。


そして完全に言葉をなくした。


こつん、と音がして額同士が触れる。


息をかかる距離でロックは安堵した表情をに見せた。




「もう…もう大丈夫みたいだな…」


「…ぁ……」




は先ほどとは打って変わって落ち着いた状態へと戻っていた。


は少し唇を尾がらせて、仕返しといわんばかりに額でロックの額を小突いた。


それは叩くというより、触れるというもの…。


彼が頭に巻いているバンダナのおかげか、痛みは殆どない。




「……ありがとう。もう、大丈夫だ…………バカ」


「ははっ…最後のは余計だけどな」




いつもの、だ。


そういってロックは嬉しそうに笑った。


ちょっぴりその笑顔に見とれている


良く見れば武器を持った兵の間を抜けてきたのだろう…


切り傷が体中に存在していた。


視線に気付いたロックはかすり傷だといい、誤魔化す。


はロックと向き合ったままじぃ…と見つめた。




「お礼…する!」


「いや…いい。なんか陸でもないものの気がしてならないし…」


「んじゃあ…ロックと、仲間のみんなに祝福をプレゼントしてやる!」


「聞く耳を持て…って…………・・・祝福???」




思わず聞き返したロックには笑みを零しながら頷く。




今まで使ったことのない魔法。


でもやっと使える。


使えるときがきたんだ。




大切なもの


失わないように


守りたい人を


守れるように…





愛するすべての人に…


祝福を――――




指を付け根の辺りで重ね折、何かを祈るように口元に近づける。














… エンジェルフェザー …














ゆっくりと天に差し伸べた両の手。


それを見上げているの表情は明るい。


雲間から光が差し込み、


ティナ、


エドガー、


ガウ、


マッシュ、


カイエン、


セリス、


そしてロック…


全員に祝福の光が降り注いだ。


光に混ざる純白の羽が傷口に浸透していき治癒していくのがわかる。


それぞれが自身の身体の正常化に目を見張る中、


ケフカただ一人は悔恨や憎悪といった感情に顔を歪ませていた。




「(…“あの力”がとうとう…。開眼してしまう前に……)」




呪文を詠唱し始めるケフカ。


だがその呪文を最後まで言い終える事はなかった。


いつの間にやらケフカの元まで辿り着いていた面々に囲まれる。


ケフカはぐっと唇をかんだ。




「くっ……!これで勝ったと思うなよ!」




覚えていろよ!!


そう吐き捨てるとケフカを一目散に駆け出した。


追いかけようとしたマッシュを制しながらエドガーは「幻獣は?」問う。


幻獣の無事を確認するべく、総員は谷の方へと足を向けた。









 +









「で…でたなっ…」




は後ずさりしながらそういって、びしっとつり橋を指差す。


幻獣の無事を確認するにはどうしてもこの橋を渡る必要がある…。


特にティナとには幻獣と反応するという立派な目的があった。


…イコール、この橋をどうにかして渡らなければいけないということ…


ロックは盛大にため息をつき、の後頭部を押すようにしてずかずかとわたり始めた。




「ちょっ……!まっ……!?こ…心の、準備…が……」(かすれ声)


「あーはいはい…」




の要望を華麗に交わしてロックはを押す手に力を入れた。


無意識だろう…は彼の服の裾を握り締め、身を寄せる。


傍から見れば仲のいい恋人にでも見えるのだろうが


今はそんなところではない。


ロックは眉をひそめながらも嫌がっている様子は無く、


一切喋らなくなったにゆっくりとため息をついた。




「何人だ…?」


「……なに…が?」


「帝国につかまってるお前の仲間…何人?」




ははっと息を呑む。


細い糸を紡ぐような声で「9」と応えた。


ロックはよし、と大きく頷く。




「絶対、助け出すぞ…!そしたら…帝国とも完全に縁が切れるわけだしな!」


「…………!」




ほら…ついたぞ。


離している間に橋は渡り終えていて、は呆然とロックを見る。


とん…と背中を押されて、バランスを崩しながらも待っていてくれた仲間の下へと歩み寄った。




手を差し伸べてくれる仲間。


「遅いぞ」と笑って肩をたたく仲間。


ただ何も言わずに笑んでくれる仲間…。




幻獣が氷付けになってしまうほどの極寒に地なのに…


妙に胸がぽかぽかしてきて…









居場所を…見つけた。














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あとがき

28話up!!
これにて[雪平原での死守戦]は終了です
考えた結果、次からゾゾまでの章を新たに作ることにしましたv(。・ω・。)ィェィ♪
サブタイトルは[ヒロガル キョリ]…かな?
い、いまいちネーミングセンス無いとか言うなぁ…っ!(いってない)

次でもまた堕ちるかなぁ…(やる前からなに言ってるんだ)
そろそろ、“愛する”感情をちょっとずつ出していかなきゃか…
そうしないと計算が合わないもんなぁ
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