Angel's smile
















まって まって 置いていかないで――…















 ヒロガル キョリ 29















「氷付けの幻獣は無事か……」




無事を確認した後、エドガーが第一声を繰り出す。


まるで生きているかのように力強いものを感じる。


ティナとはその地かれるように惹かれるように、


幻獣に歩み寄った。




光が虚空に波を打つ。


身体に触れたその場所に何か暖かいものを感じた。


きらりと氷が光った。




「な…なんだろ、この気持ち…。懐かしい…けど…」




どこか寂しい…。


言葉同士につながりはない。


開いた瞳がしっかりと幻獣を捉える。


凍り付いているはずの幻獣の瞳と視線がぶつかって、


の魔力がビクリと跳ねた。




「―――あぁっ!!」




刹那、まるで何かにはじかれたようにのからだが後方へと飛ばされた。


だけではない…


その場にいた仲間の全員が吹き飛ばされ当たりに散らばる。


そんな中、幻獣の前に立っていたのはティナ―――……。




「幻獣とティナが………」


「反応しているのか!?」




マッシュとエドガーが上半身を這い上がらせ、ティナを見つめてそういった。


の元へはすぐさまガウが近寄る。


「大丈夫か…?」とでもい痛そうな視線を感じ、


は何か返さなくては…と頭の隅では考えるが、身体がいうことを利かない。


ガウの力をかりながら何とか…といった風に起き上がる事ができたのは暫くのことだった。




「何!?この感覚!? えっ? 何 今なんて……ねぇ、教えて! わたしは誰? 誰なの!」




ティナの問に幻獣が答える様子は無い。


ロックはティナのみを案じ、その名を呼ぶ。




「幻獣と… 反応するというの……!」


「ティナ……幻獣から……離れろ……」




幻獣からヒカリが迸る。


ヒカリに触れてティナは自身の姿を変えた。


全身から溢れるピンク色の光。


地に着きそうなほど長い髪。


赤い瞳。




…その姿は――――




「ティナ!!!!」




の絞り出したような声も彼女の耳には届かなかった。


応えることなくティナは地面から足を離した。


雪山を降下して、浮上する。


見えなくなるまでそう時間はかからなかった。




「ガ…ガウッ?」


「ガウ…?どうしたでござ―――っ




 ……………殿?」




カイエンの言葉が尻すぼむ。


隣にいるガウは突然にことにあわあわと慌てている。


異変が起こったのだ。




「助けなきゃ…


 守らなきゃ…


 救わなきゃ…





 独りにしちゃだめだ」




「何を…言ってるで、ござるか……?」




カイエンがゆっくりと目を見開く。


まるで目の前の現状に目を疑っているかのように…。


繋がらない言葉たちを紡ぎ、自身が変化した。









―――  キィィィィィィイイイイン!!!!  ―――









「……ぁ…」




幻獣の放った強い光がその場にいたパーティの目をくらませる。


何度も瞬き、


ようやくクリアになった視界には


雪の上に仰向けになるの姿があった。


力なく地にへばりつくが…




!!!」




誰のものかもわからない声がナルシェの裏山に山彦した。




幻獣の瞳が静かに伏せられた。









 +









「どうなっている?…一体さんに何が…………」




セリスはまるでその場にいる全員の思いを代弁するように言った。


その問に誰もが答えることができずに目を伏せる。


マッシュはゆっくりと傍へと歩み寄るとの背へと腕を回す。




「(…!………って…)」




ひょいと軽々とを担ぎ上げるマッシュ。


ロックは一瞬不機嫌に顔をしかめたが、すぐにナルシェへと戻るマッシュの後を追った。


カイエン、ガウもまた歩みはじめた。




『あの力が開眼してしまう前に……』




ケフカが呟いた言葉を思い出しながらセリスは瞼を下ろす。


脳裏に焼きついた光景。


ゆっくりと辿りながら


あれは、まるで……









「あれは、まるで……幻獣のようだった……」














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あとがき

29話目更新です(ノ)ω(ヾ)
引っ張りすぎたかなぁ…なんて思いつつ
さらにオリジナル要素を加えようとしている始末で、
最終的に何話くらいまでなるんだろう…ヾ(;´Д`●)ノぁゎゎ

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