Angel's smile
















俺らを…リターナーの一員にしてくださいっす!――…















 ヒロガル キョリ 32















準備を整え、町の人々やの情報を元に、


セリス、エドガー、マッシュ、ロック、そしての5人はナルシェ山を降り、


フィガロ城へとやってきた。


10年ぶりの帰宅に目を輝かせているのは勿論マッシュで、


城の中に足を踏み入れるなり早々、久方ぶりの我が家を満喫するべく場内を駆け出した。


やれやれと…それでも相変わらずのお兄さんの視線でその後姿を見送るエドガー。


同じく城を暫くの間留守にしていたフィガロ王は無事の帰還を喜ぶ、


フィガロ兵からの報告を耳に入れて、それをそのままへと伝えた。




「この前の部屋に………」


「ん。んじゃあちょっといってこようかな…」


「私も行こう」


「…いいけど」


「おいおい何の話だよ」




進んでいく時間にいつもの事ながら置いていかれる所だったロックが、


慌てて歩き出しているとエドガーの中に加わる。


はふい…とそっぽを向くと露骨に面倒くさそうな嫌な顔をして息を吐いた。




「先に行ってる…」


「それは遠まわしに私が説明しろということなのかね」


「…。任せた」




エドガーは歩みを止めるとに視線を当てながら「全く…」と呟いた。


だがその言葉に怒気や呆気が含まれていなかったのは、


が本当に面倒ごとを押しつけたわけじゃないことに気づいたから。


何よりも優先してでも行きたいと思うのはそれだけ大切なものがあるのか…


もしくは、大切な人物か…




「洞窟を抜ける前…がマントをなくしていたのを覚えているか?」







、マントはどうしたんだ?』


『ん…?落としたんじゃないか?』


『砂漠のど真ん中に食料も添えて、かい?』


『…。さぁな、それでも何日持つか…。


 どこかの王様が助けでもしないと餓死の前に日干しになるんじゃないか?』







「………あぁ、そういやそんなこともあったな…。結局最後の最後まで教えてくれなかったやつだろ?


 それが…どうしたんだよ。」


「?」


「セリスは知らなくても仕方が無いが…はあの時………」









 +









扉をくぐって右手にある階段を下降していく…


そして一度外にでて、近くの…以前ティナと2人で休息を取った部屋の入り口に立つ。


軽くノックをしてから部屋の中に足を踏み入れると、二人の持つ四つの瞳と視線がぶつかった。


暫く穴が開くのではというぐらい凝視を続けた二人は硬直。


それから…




「………さん…っすか?」




一人の男――10代半ばほどの青年で腕や身体に包帯を巻いている――が


きらぁ…と目を輝かせながらのことを見つめる。


その男の傍らには少し様子を伺っているような眼差しで少年――10代前半ほどで幼さを残す容姿――


は、を黙って見つめていた。


ベットで身体を横たわらせていた男はもっと近くで話したいのか身をのりだそうとする。


が、微塵も動かぬまま、無表情の少年に押さえつけられてそれは終わった。


は乾いた笑みをこぼしながら自分のほうから歩み寄る。




「久しぶりだね…ヴァーユに、トール。相変わらず…だ」




ふ…と吐き出したのは安堵の息。


何気ない動作で杖を取り出すと男…ヴァーユと少年…トールの2人にケアルをかけた。


わずかな気持ち程度で、完全に傷が癒せていないのはが病み上がりだから…


それでも2人は表情を変えて喜んでくれた。




「ありがとうございますっさん」


「…(ぺこり)」


「礼はいいよ。…ってかもともとこれは僕が怪我させたみたいなもんだしね」


「それでも感謝っす」


「……………いいけど」




そっけなく…それでもどこか照れくさそうには言う。


そしてヴァーユが横たわるベットに腰を下ろすと肩膝を抱きながら2人へと視線を送る。


さっきとは打って変わっての真剣な眼差しだった。




「さてと…お前ら、歩けるようになったら帝国へ帰りなよ?


 あんまり長いこと帰国しないと…処分がそれだけ大きくなるってことだからな」




あっさりと告げられた発言に二人は沈黙する。


どちらともなく顔を見合わせると、小さくうなずいてみせた。




「あれから………さんが行方をくらましてからずっと…考えていたんです。2人で」


「…(こくり)」


「俺たち…故郷を帝国のやつらに征服されて…捕虜される形で帝国の兵隊に…そしてまた人を…町を…」


「………。けど、お前の故郷を、滅ぼしたのは……」


「けれどそれは、帝国の命令だからですよね。


 …実は、俺…。ずっと復讐するためにさんの傍にいたんすよ。…隙あらばって…」


「……ああ」


「けどずっと傍で見てて……なんとなくだけど、分かったんす。


 確かにさんは帝国の最終兵器として名高いっすけど…


 罪のない女子供まで無差別に手に掛けるような非道ではなかったっす」


「………」


「それなのに…急にいなくなって、俺たち任務の合間に色々調べてたんっす。


 その時ケフ……アイツにかり出されていってみれば…。


 まさかあんな形で再会するなんて思ってもみなかったっすけど」




ゆっくりと目を伏せたヴァーユは自分達がケフカと共にフィガロ城へとやってきたときのことを思い出した。


命令されるままに魔導を持つといわれている少女とそれを守るフィガロ王と銀髪のシーフに、


向かい打った二機の魔導アーマー。


チョコボに乗って逃亡していたかと思いきや、対峙する。


そして少し遅れて頭からマントをかぶった細身の青年が…




「あの時、絶対俺らだって気づいてましたよね?ね?


 なのにどうして機械の弱点であるサンダーを唱えたんっすかぁー!?」


「手加減はしたはず。忠告もしたし…。それに…………慣れてるだろ?」


「……………………………………そんなこと……ないっす」


「お前本当に素直だよな…」




トールもそう思うだろ?


とずっと無言だったトールに話を振ってやると、トールはなんの躊躇いもなく首を縦に振る。


そのことに大なり小なりのショックを受けているヴァーユは、話題を変えるためか続きを急いだ。




「アイツ…俺らのこと見捨てやがった…」









『敗者を助ける気なんてないのですよ…ケッケッ…』









「あの時…直接日をかぶらないためのさんが使ってたマントと…


 非常食と少量のハイポーション…。置いていってくれたのが幸いでした。


 一日たったころにはフィガロの兵の方が声を……


 ………あれ、さんが頼んでくださったて…後から聞いたっす」




ヴァーユはトールの助けを借りながら上半身だけ起こすと、


「感謝っす」と再び頭を下げた。


それを習うようにトールも頭を下げる。




「帝国にもどれとは言わない…。お前たちの故郷はまだあるんだ


 家族だって…兄弟だって……、あるだろ?大切な何かが…」


「………」


「それなのに…何故再び戦場に戻ることを選ら――」




さん」




目を閉じ、淡々と述べていた言葉をヴァーユがさえぎる。


目を開けてみれば彼は強くて真剣な眼差しで…


ふ…と口角を持ち上げて見せた。




「以前任務が早く終わったときに…故郷に…ツェンに顔を出しに行ったことがあるんっす。


 みんなどうしてるかなって…。そしたら………









 俺のこと…死んだってことになってました」









「………!」




笑っている。


けれどそれはとても寂しそうなものだ。




考えてみれば当たり前だ。


存在を消されたのだから。




は暗黙を保ちながらじっとヴァーユを見据える。




「こいつも…俺も…、帰るところはありません。今更帝国に帰るなんて事も出来ません。


 何度も助けられたこんな命ですが……使ってやってください」


「…。お願いします」




ずっと黙っていたトールまでもが言の葉を紡いだ。


目を伏せていたはそっとため息をつく。


…呆れたように。


…全く、相変わらずなんだからとでも言うように。




「…。いるんだろ?みんな……」




扉の奥でタイミングを計っていたのであろう三人にが声をかける。


若干緊張した風に部屋の中へと入ってくる三人へと視線を移し、


は口端を持ち上げながら言った。









「紹介するよ、彼らはヴァーユとトール………。僕たちの…仲間だ」














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あとがき

32話目の更新です…

長い…ですね(汗)
こんだけの長さを書いたのは初めてかもしれません…
原作的には全然進めてはないのですが、
(というかぶっちゃけ、フィガロ編すら終えてない…)
早くコーリンゲンのところで落としたいのになぁ…(コラ)
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