Angel's smile

















これが…愛するということ――…















 雨降りと消えた力 40
















……』




遠くのほうで名前を呼ばれた気がした。


けれどもう返事を返す気力なんて残ってなかった。


目を開けることも困難で、どうしても楽なほうに意識がゆく。


…もう、いいや


諦めの言葉が浮かび上がる。


背負わなくてはいけないものならいっその事投げ出してしまおう。


自分の責任を放り出して、逃げてしまおう。




…』




五月蝿いな。


途切れかけた意識を繋ぐかのように名前を呼ばれる。


透明感のある綺麗な声。


消えてしまうのが少し残念なくらいに…




『貴女は…投げ出してしまうの?』


「――――っ!」


『諦めてしまうの?全部なかったことにして…目を閉じて、耳をふさいで…逃げるつもり?』




まるで心を覗いたかのようにの割と近くで音が鳴る。


耳障りではない。


逆にもっと聞いていくなるほど。




「わからないんだ…どうしていいのか……」




『それは……知ろうとしていないだけなんじゃないかしら…?』




「―――違う!!」




が声を荒げてそれを否定する。


はっと目を開いた先には見知りのある人物が虚ろに浮かんでいた。




白い透き通りそうな肌。


虚空に波を打つ栗色の髪。


切れ長の瞳は真っ直ぐにを映していた。


背中には大きな翼。


紛れもなくそれは…天使。


そして…




「…………母さん?」




柔らかく笑みを零す。


それは肯定を意味した。




『なら…諦めちゃ駄目でしょう?』


「……でもっ」


『貴女はティナや…や…あの子達のことをどう思っているの?どうしたいの?』


「………」


『後は…わかるわよね…?……』




消えてしまう。


そう思った刹那、天使はへと手を伸ばした。


額に感じる指先の温もり。


生きている人のものじゃない。


彼女はだって生きていないんだもの。


でも…


じゃあどうしてこんなにも温かいのだろう。


消えていく母親の笑顔にだってこんなに暖が感じられる…




ナルシェのときも、そうだった。


あんなに寒い場所だっていうのにすごく温かく感じた。


それは、


とても、


簡単なことだった。




「もう少し…頑張ってみるよ」




光が消えて、視界が開かれる。


光の失せた世界は闇じゃない。


全てがなしになるわけじゃない。




そんなセカイで小さな答えに辿りついた。




「ちゃんと見ててね……」









――諦めちゃ駄目でしょう?


うん。





――あの子達のことをどう思っているの?


とても大切な、仲間。





――どうしたいの?


守りたい。失いたくない。



















“愛しさ”という感情の芽生え



















「見てるんだろ、クソジジイ…。『見てなかった』はなしだからな…」




悪態を1つ。


にっと口の端を持ち上げる姿はいつもののものだった。









愛しさを翼に変えよう




答えに辿りついたその時




羽ばたけるように




飛べるように




大切を失わないように




何よりも大事で




愛しいと思うものを




守り抜ける力を…




僕に…




僕の背中にもきっと




翼はあるから









羽ばたこう




みんなを



















失わないためにも



















 +









――――っ!!!」




叫ぶのと同時、ロックは精一杯に腕を伸ばした。


けれども彼女に届くことはない。


あっという間。


瞬く瞬間には雨の中へと消えてゆく。


ロックは大きく目を見開く。




「こんな晴れた日になんの用だ?儂は真面目な人間じゃ。喧嘩も弱いからすんなり此処を通してやろう」


「………ロックッ!」


「―――!?」




声にいち早く敏感下ロックは後方へ飛ぶことで致命傷を避ける。


それでも腹部を押さえているところから掠めてしまったらしい。


ロックは無言でそいつを見据える。




「お前が…を落としたのか…っ?」


「愚問」


「…っ!てめぇ!!」




しゅっと抜き去ったのはナイフだ。


一触即発。


そんな張り詰めた雰囲気。


ロックはぐっと睨むようにダダルマーを睨む。


その時…




… トン …




「待って」




透明感のある澄んだ声色。


耳の奥で鳴るような綺麗な音だ。


地に降りる着地音と共にその声は響き渡った。


それは、




……?」




の声。


今さっきこの手すりを越えて地へと飛んだはずの…


振り返ったロックは思わずはっと息を呑んだ。


そこにいたのは…




白い透き通りそうな肌。


虚空に波を打つ桜色の髪。


切れ長の瞳は真っ直ぐにロックを映していた。


背中には大きな翼。


紛れもなくそれは…天使。


そして…









「相手は僕のはずだ、ダダルマー。誰であろうと、仲間を傷つける奴は許さない」














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あとがき

ついに40話ですね★⌒(●ゝω・)b
ゾゾで40ってちょっと遅いのかな…?
…。
いや、うん。
まぁあれだけオリジナル要素入れてりゃ当然か…(納得)

ラファエルの母さんが登場ヾ(o´・ω・)
もう気づいている方もいるでしょうが、(てかそもそも隠していない)
ラファエルのお母さんはセラフィムです。
ツェンのまちで3000ギルで買えるあれですよ(酷)

トランス化してもラファエルの口調は変わらずという方向で…b
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