Angel's smile
















虚無の記憶――…















 幻獣と魔石 42
















「怯えているのじゃよ」




背後から聞こえてきた声に


は顔を合わせずに、目を閉じた。




「…。ラムウ……」


「………懐かしい顔じゃ、大きくなったのぉ」


「…………」




暗黙の肯定。


閉じた視界をゆっくりと広げる。


決して声の主を映そうとはせず視線は合わせないまま。


ラムウはほう、と悲しそうに目を伏せた。




「(知り合いか…?)」


「(まぁ…な……)」


「???」




いくらか低めの声。


悪いことをした後のように顔をしかめる


なにが…




「お前達、この娘の仲間か?」




静かな問い。


ロックが一歩前へ出て頷く。




「ティナは大丈夫なのか?」


「ティナと言う名前じゃったか。…ティナ??……はて?」




記憶を辿るように真白な顎鬚を撫でるラムウ。


それとほぼ同時…


ティナが突然暴れだした。


ベットから飛び出し、苦しそうに足掻きながら地に伏せる。


はっとなったがすぐに歩み寄り、


マッシュに助けてもらいながら再びベットへと運んだ。





「命には別状はない。普段使いなれない力を


 一気に使ったために体が言うことをきかないだけだ」


「………」


「何か言いたそうじゃの…よ」




唇を硬く閉ざしていたが、薄く開く。




「どうして僕は知らないの?」


「…何のことじゃ?」


「僕自身のこと。


 …昔のこと。


 …のこと。


 …母さんや父さんのこと。


 …子供の頃の…それも所々の記憶。




 …まるで“何か”に削り取られたみたいに…」




「削り取られた…か」




ほう…と、何かを知っているような笑みを浮かべるラムウ。


巧みに笑うそれが、には不愉快で仕方がない。




「いつもお前は…そうやって……」


「逃げる?逃げているのはお前さんじゃよ」


「―――!!」




本日二度目の幻獣化。


きっと睨む瞳には怒り――




… サンダー …




「ふ…まだまだ甘いの…」




… サンダラ …




復活間ぢかでいまだに体力が戻っていないという事も


勿論あるだろう…


けれども幻獣化したことでそれを補うほどの


魔力の破壊力は確実に上がっているというのに…


ラムウはいすに腰を下ろしたまま、


杖を一振りするだけでを振り払った。


軽い押し殺した声と共に宙を舞う。




「そこで少し頭を冷やしておれ」




壁に背を打ち、幻獣から人間へと戻るのと同士に、


ずるずると壁を伝い下へと沈んでいく…


反応がないところを見ると、気を失ってしまったようだった。




あっという間の出来事…


目を見開く、


の名を呼ぶ、


身構えると様々な反応を見せる三人。


そしてもう一人にいたっては鋭い睨むような


眼差しをラムウへと向けていた。


そのことにラムウは目を細めほう…と内心息をつく。




「私はラムウじゃ。幻獣ラムウ」


「幻獣!?」


「幻獣は別の世界の生き物ではなかったのか?」


「別にこの世界で生きて行けないと言うわけではない。


 幻獣にもいろんな姿のものがおる。


 たまたまわしは人間の姿とあまり変わらないから


 ここに住んでいると言うわけだ」




幻獣と気付かれる心配もないからな。


と最後に付け加えて、四人が身がまえを解いたのを確認する。


エドガーは「なぜそのことを隠すのか」とラムウに問う。




「人と幻獣は相いれないもの」




静かに。


先ほどからかわりのない…


とても優しい声でラムウは言った。




「でも、ばあちゃんは言っていた。


 昔は人と幻獣がこの世界に住んでいたと。


 ……おとぎ話だけどな」


「ふァふァ、おとぎ話ではない。


 本当の事じゃ。人と幻獣は仲良く一緒に暮らしておった。


 魔大戦が始まる前まではな」




軽い調子で言って、ラムウは再び息を吐いた。


誰かが「魔大戦…」と呟く。




「はるか昔…魔大戦。




 幻獣達、そして幻獣から取り出した力で作られた魔導士達の戦争。




 その虚しい戦いの後で、




 幻獣の力を再び利用されることを恐れた幻獣達は




 自ら結界を作りそこに移り住んだ。




 ……それが幻獣界。




 そこに20年前のある日ガストラ帝国がやってきた。




 そしてはじまった幻獣狩り。




 幻獣から魔導の力をとりだしその力を使って




 無敵の軍隊を作るガストラ。




 それに気付いた幻獣達は大きな扉を作り




 人間達を追い出した」




紡がれていく真実。


真相の解明。




「その時に捕らえられた幻獣達は今でも


 帝国の魔導研究所につかまり魔導の力を取り出されている。


 ワシは危うく難を逃れここにこうしているって言うわけだ…









 …の……おかげでな」














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あとがき

42話更新です。

ラムウ登場。
てかごめん、ラファエル。
君に最近ちょっとばかし冷たいよね。
ごめんよー

別に嫌いって言うわけじゃないんだよ。
次にちゃんと株上げさせてあげるからねッ
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