Angel's smile
















の…おかげでな――…















 幻獣と魔石 43
















まるでいとしいものを見つめるように目を細め、


朗らかな笑みを口元に浮かべる。




「セリス…といったか?」


「えぇ」


「“あれ”のあと…何度発作を起こした?」




あれ…と内心セリスがつぶやく。


なんだ?とロックがセリスに視線を投げるが、


セリスは答えずに、思考する。




「私の知る限りでは二度。一度目は“あれ”の後…


 そして二度目は…あなたが……」


「…ふむ」


「なぁ…あれって何のことだ?」




疑問に思ったマッシュがその疑問を口にする。




「やはり話しておらんのか…」


「アイツは…大切なことほど話さないからな…」


「否、話さないのではない…話せないのじゃよ」


「?…どういう意味ですか?」




エドガーが問う。




「無意識のうちにその記憶を封印してしまったのじゃよ


 嫌な部分だけ。無いのと変わらぬように……な」


「!」


「(記憶を…)」


「(だからさっき―――)」




『どうして僕は知らないの?』




ひどく悲しい目をしたラムウ。


その視線の先にいるのは変わらずにだ。


一度ゆっくりと目を閉じてから、四人へと視線を向けた。




「本人がそのことに気がついたのであれば


 …覚醒も時期に来るだろう。ただ……」


「ただ…?」


「“あれ”を一人で背負うには…酷すぎる……」


「じゃあ…」


「話してやろう。わしの知っていることを…」




ゆっくりと握り締めた手のひら。


感じる魔力は微々たる物だ。


おそらくはもう…長くはない。


せめてその前に。




この子に“かり”を返さなければ……









 +









それは今から20年と少し前のことだった。


わしらの住む幻獣界と人間界をつなぐ唯一のゲート…


そこから一人の青年が入ってきた。


深緑色のコートに帽子。


帽子の中央には赤いクロスの刺繍が施されている。


深緑によくはえる桜色の短髪で、


何処か幼びたやわらかい印象雰囲気を持っていた。




「!それって……」


の父、コーリンといったか。


 冷静で誠実な男じゃった……」




遮断されたはずのゲートを開き、幻獣界に足を踏み入れた


コーリンを幻獣たちははじめ警戒し、


追い出そうとした。


人間とかかわることでまた1000年前の争いが起こると考えたからじゃった。


しかしコーリンは幻獣たちの言葉に首を横にふった。




『僕にはしなければいけないことがあります』




その瞳は鋭い中にも温かみを感じるもの。


敵対するつもりは無いが、自分は自分のしたいようにするぞ。


という警告のような口調だった。




「…しなければいけないこと、とは?」


「そう焦るでない。今から話そう……」




わしが前へ出て話を聞くとそいつはいった。




『三闘神の封印が薄れていないか…確認するために来ました』




落ち着いた口調。


下手をすればこの場で殺されてしまうかもしれないというのに、


交友的なわけでもなく、また、差別するわけでもなく、


コーリンはわしらに話しかけておった。


その素振りがまるで嘘をついているようにはみえなかった。




われらは考えた。


見る限りこの人間がわれらに害をなすことはなさそうだった。


けれども、悲劇を恐れそれは幻獣たちを悩ませた。


結局出た結論はこうだった。




『見張りを…?』




だれか幻獣一人が共についていくということ。




『僕はかまいませんよ。仕事さえさせていただけるのであらば…』




で、どなたが行かれるのですか?


というコーリンの視線に一人が声をあげた。


幻獣たちの群れが割れて、その姿を現したのは、女性だった。









『私が共に行きましょう』














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あとがき

43話更新

コーリン登場です。
ここから少し昔話にします。
あーラファエルノで番が当分無いかもだ…^^;
ごめんよー(再び)

コーリンの性格はほとんどラファエルと一緒です。
最後の台詞…誰だかもうわかりますよね?
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