Angel's smile
















ラムウの魔石にそっと手を伸ばした――…















 幻獣と魔石 46
















「みんな来ていたのか。実は…」




ナルシェにいたカイエンたちや、途中で合流したヴァーユたちに


ロックはそう切り出す。


エドガーと顔を見合わせ頷いた。




「とりあえず戻りながら話そう」



















長い長い階段を今度は下りながら会話は進む。




「帝国が幻獣から魔導の力を…」


「本当なのか? セリス」




上からエドガーにマッシュ。


マッシュが投げた言葉の先…


数段下を歩いているのはセリスだ。


セリスは一度足を止めて、答えた。




「私達は眠らされたまま魔導の力を注入されたので


 はっきりとは覚えていない。でも、そういう噂は聞いた事がある」




ほんの少し目を伏せて話すその雰囲気は少し暗い。


それだけ紡ぎ終わると、再び歩みを進めた。




「では、乗り込むのですな。帝国へ」


「二手に別れた方が良いだろう。ナルシェの守りもかためなければいけない」


「そうでござるな」




ナルシェにはリターナーの指導者…バナンがいる。


その彼のみを案じてエドガーは言っているのだろう。


もっともだと思うし、同意の意味からは頷いた。




「私が帝国に行きます。帝国内部の情報は詳しいから」


「しかし一人では……」


「僕も行くよ。帝国には兄さんがいるからね」




兄さん、という単語にそのときのことを知っている


セリス、ヴァーユ、トールがかすかな反応を見せた。


セリスと目を合わせてははにかみながら頷く。




「心配なら俺もついて行くぜ」


「ロック!」




心強い、といわんばかりにセリスは声を上げた。


それに真逆の反応を示したのは他でもないだった。


あからさまに露骨に顔に出している。





「……なんだ、お前も来んのか」


「お前ホンットに嫌な顔すんのな!」


「当たり前だろ、お前が一緒にいると絶対何か起きるんだ」


「はぁ!?それは俺か?俺が呼んでるのか?」


「そう」


「断言すんなっ!」


「「………」」




長い沈黙の後、お互いにそっぽを向く。


ふん、という声が聞こえてきそうな二人に、


声を上げて笑ったのは二人以外の仲間達だった。


久々に見た、だの


相変わらず仲がいいな、だの


息ぴったりでござるな、など他多数だ。


一通り笑った後でカイエンが切り出す。




「もう少し人手がいるだろう?」









 +









少し話し合った後、よく行動をともにしているということから


エドガーとマッシュもともに行くことになった。




「ナルシェで待っていてくれ。帝国から必ず戻ってくる」




ロックはナルシェに残ることになった


カイエン、ガウ、ヴァーユ、トールへといった。


間を見てヴァーユがへと歩み寄る。




さん、これ、用意しておきましたよ」




そういって手の中のものを示したのはヴァーユ。


子供のような屈託のない笑顔でにかにかと笑いながら、


の手のひらへとそれを落とす。




「…あ、これ……」


「回復の泉の水ですよ!」


「!ありがと、ヴァーユ。ちょうどなくなってたんだ…」


「うっす!」




手だけ軽く敬礼させてヴァーユは喜んだ。


フィガロにいる間に暇だったのでひとっ走りしてきたご様子。


そしてよしよしとトールの頭を撫でる。




「!撫でるのはこっちっすよ、こっち!」


「バーカ。どうせトールに言われて気がついたんだろ」


「…ぅ、何故にそれを…」


「………お前こそ顔に出しすぎだと思うけど」




サンキュウな、雨に消えてしまうほど小さく呟いて、


は二人と別れる。


ロックたちと合流してまたロックと2.3言会話を繰り返している。


何処かけんか腰だが、楽しそうにしている彼女。


以前とは明らかに違う彼女の雰囲気に、


ヴァーユはふと笑みをこぼした。


隣にいるトールもぎこちなく微笑んでいる。




さんは、変われたんだな」


「…ええ」


「…じゃあ俺達は…?」


「…………」


「……、ごめん。困らせる気はないんだ」




目を伏せて返答に悩んだトールに先に折れるヴァーユ。


視線をそらした彼を目で追うものの言葉が出てこないトール。


不器用な二人。


ただ、不確かに進んでいる時間。









 +









「とは言うものの。帝国は南の大陸。船も出ていないし……」




一体どうしていいものやら。


ゾゾの町を抜けたところでセリスは疑問に思う。




「南のジドールの貴族さん達なら、何かいい方法教えてくれるかもしれないぜ。


 何てったって金持ちだしな」




ポツリとこぼした隙にふっと笑んだのを


は見逃さなかった。


隙あらば、とでも思っているのだろうと思慮してため息をついた。





「ロック」


「ん?」


「なぜ私達と一緒に?」


「ん?秘宝の事もあるしな。ちょっと帝国をのぞいて見たかっただけだ


 それと…あの小生意気なの兄貴ってのも、見てみたいしな…」




そう、と呟いてセリスは目を伏せた。









「でもさんと間逆で純心で素直よ?」














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あとがき

45話更新

結局終われなかった「幻獣と魔石」…
あっれー、
脳内計画じゃ前の分でゾゾ編は終了しているはずなのに…
(その通りに行ったためしはないが、)

つぎに久々の閑話をいれまーす
お相手は双子の弟さんでb
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