Angel's smile
それは焼いても上手くないと思うぞ?――…
弾かれた偽り 53
「援護する」
ドタバタにまぎれてがセリスを庇うように杖を構えた。
ほんの少し前かがみになるように姿勢を崩す。
タコ、否、オルトロスと対峙するように立ちながら、
マッシュはに舞台を傷つけるような魔法は避けろよ、
と釘を刺しておいた。
こんな舞台の中央で雷でも落としたら…
後は容易に想像できるだろう。
「…うん、わかった」
「たのむぜ!」
素直に頷いては杖先端の水晶に右手をかざした。
短く魔法呪文を詠唱する。
が詠唱しているのは補助呪文…
「慈悲に満ちた大地よ、つなぎとめる手を緩めたまえ…」
… レビテト …
身の軽くなったロックを含めた三人は呪文が終えるのと
同時に既に戦闘体制には言っていた。
一番最初に動いたのはエドガーだった。
にょきにょきと威嚇してくる足から距離をとるように
オートボウガンを引き絞り、はなつ。
「にっしっしー」
しかしオルトロスはそれをひょいとかわす。
なかなか足は素早いようだ。
オルトロスのニヤリといった風に細められた目が
へと向く。
「かわいい女の子ーワイの好みやー ぽっ」
― たこあし ―
「…っ!」
言ってることが違うじゃないか、と言わんばかりの。
左手で杖をぎゅ、と握り締め右手を伸ばしてセリスを庇う。
しゅた、っと伸びてきたたこあし。
視界が暗転したのと同時にザシュ、と切断される音が耳に入った。
…ロックだ。
バンダナの合間から見える銀髪が雑に乱れ、
クロスされた両腕にはナイフが握られている。
あしの先端が切られてオルトロスは「ひょー」と
情けない声を上げた。
「電気ダコにしてやろうか…」
「…それなんだか不味そうよ」
「止めないのか、」
ぼそ、と零したの呟きにセリスが答えロックが突っ込む。
そんな間にもマッシュが必殺技を食らわす。
― 爆裂拳 ―
両方のこぶしがオルトロスの体にめり込む。
ぐえぐえ、と奇妙な悲鳴が聞こえ、
せめてもの反撃にタコ墨をはいた。
舞台の一箇所がスミで黒くなる。
だが、マッシュの体には一滴の墨もかかってはいなかった。
… 酸性雨 …
「!」
カウンターにオルトロスが仕掛ける。
さー
と頭上に水滴が集まっている。
ははっとなり再び詠唱した。
… ストップ …
さっと手のひらを押し出して動きを止める。
ん、とが小さく声を零した。
どうやら相当辛い様子。
エドガーは「ぎょ?」と驚いているオルトロスに向けて
カチ、と機械のスイッチを入れた。
―― シャン
そんな音がして、まばゆい光が一瞬オルトロスに集中した。
「今日も駄目だったか……タコですみません」
じたばたと暫くもがいたかと思えば次に出てきた言葉は
以外にも拍子抜けする言葉だった。
7本の足をにょきにょきさせて早々に舞台から出て行ってしまう。
それと同時、が食い止めていた酸性雨も
霧となり、空気の中へと解けていった。
「一本足落としていったな」
「食うなよ」
ロックが切り落とした足を見てが呟く。
それに素早く突っ込みという名の釘を刺すロック。
その言葉にしかめっ面したのはいうまでもない。
直後。
ふわ、と証明が落とされる。
「まちな!素晴らしいショーだったぜ!」
の真後ろであるセリスとセッツァーだけにスポットライトが当てられる。
が振り返ったのとセリスの体が宙にうくのは同時だった。
反射的に手を伸ばしてしまう。
「約束通りマリアはもらっていくぜ!」
「あーーれーーーー」
偶然にも指先すらも触れることはかなわず。
セリスの体は完全に上へと引き離されてしまう。
「意外な急展開!
ロックの妃になると思われてたマリアはセッツァーによってさらわれてしまった。
さて、彼女の運命はいかに?パート2でこうごきたいィーーー!!」
ダンチョーの声に観客は一斉に沸いた。
あとがき
53話こうしんなりぃー
何度も釘を刺されたヒロインちゃん。
何かしらやりたがる、好奇心は多い子なのです。
↑ようは子供っぽい性格してる。
あ、そうそう。
サブタイトル変わりました。
何だかんだで結構悩みましたな…今回
次は研究所あたりで変えたいな。