Angel's smile
















そんなの、許されたことじゃない――…















 弾かれた偽り 54














そよぐ風に方に届くまでに伸びた髪がバサバサと揺れる。


普段通りのコートに着替えてすぐにあったアクシデント。


そのせいで帽子の中に髪を入れ込む時間がなく、


そのままの状態で今セッツァーの飛行船に乗り込むために


必死にロープを上へ上へと登っている。


流石は元帝国兵。


上ることはさほど困難ではなかったが、


それでも先ほどからバサバサと顔に打ち付けられる自身の髪が


邪魔で邪魔で仕方がなくなってきつつある。


せめて結ってくるんだった。


そんなことを思う始末。


その上、




「(結構高いな、こんちくしょ…)」




軽く10mはある高さ。


はできるだけ下を見ないようにして取り合えず只管に上っていた。


そんなの上から心配の声が降る。




「手を、貸そうか…?」




エドガーだ。


そうゆう細かいところにも気遣ってくれるのはエドガー。


それを褒めると調子に乗ることを知っているので


は然程反応しないようにして「大丈夫」といった。




「きつそうだったらいつでも言うんだよ…?」




エドガーはそう言って少し後ろ髪引かれながらも


上へ上へと上り始めた。


もまた彼の後を続く。




エドガーは兄みたいだと最近は割とよく思うようになっていた。


彼の持つ誰に対しても平等に手を差し伸べる


優しい雰囲気が何となくと似ていて、安心する。




「(……あ。だから、かな…?)」




飛空艇の内部に入り、最後はセリスが引き上げようと手を伸ばしてくれる。


そんな最中、は少しだけ沈黙した。




「( だから、嫌いだったんだ )」




が言っているのは過去のこと。


ぐ、とセリスの手を掴む。




「(ま、今は嫌いじゃないけどね)」




吹っ切れたように後味はさわやかだ。









 +









「二人とも、立派な女優ぶりだったぜ」




飛空挺に降り立ってまず開口一番にロックはそういった。


へ、と口端を持ち上げながらの言葉に


セリスは「冷やかさないでよ、」とすこししどろもどろしていた。


に関してはふん、とそっぽを向いていて


反応するつもりもないようだ。


髪を一纏めにして帽子に入れ込んだ。




「でもこれからが本番だぜ。第二幕の始まりだ。セッツァーは?」


「来るわ!」




セリスが制すといっていた通りにセッツァーが


唯一の扉から慌てた雰囲気で飛び出してきた。


はっとその場にいた全員の姿を目に映して


何かに気がついた彼はセリスに向かって


「お、おまえはマリアじゃねえな!!」と声を荒げた。


セリスは引かなかった。




「お願いセッツァー。私達ベクタに行きたいの。だからあなたの飛空艇が…」


「マリアじゃなきゃ用はない」




立ち去ろうとするセッツァー。


このままではベクタまで行く術をなくしてしまう。


はセッツァーの前に出て歩を止めさせる。




「待ってよ!アンタの船が世界一と聞いて来たんだ」


「世界一のギャンブラーともね」


「私はフィガロの王だ。もし協力してくれたなら褒美はたくさん出すぞ」





上から、ロック、エドガー。


セッツァーは横目で後ろの4人と、


そして正面のをじっとみて「来な、」と促した。




「じゃあ……」


「カン違いするな。まだ手をかすとは言ってない」




無愛想にそういうと、の横を通り抜けて


部屋を出て行ってしまう。


5人はその後を無言で追った。









 +









「ふ……帝国のおかげで商売もあがったりさ」




やれやれと言わんばかりに肩の辺りで手をひらひらさせて


セッツァーは切り出した。


たまったもんじゃない。


ともう一つ口を零してテーブルに手を着いた。




あなただけじゃないわ。たくさんの街や村が帝国によって支配されているのよ。


とセリス。


帝国は魔導の力を悪用し、世界を我がものにしようとしているんだ。


とロック。


私の国も今までは帝国と協力関係にあったのだが、もはやこれまでだ。


とエドガー。


帝国の言いなりなんてぜったいにごめんだね。


とマッシュ。




「帝国は罪のない人間にまで手を、下してる…。そんなの、許されたことじゃない」




は最後にいった。


俯かせていった彼女にロックはそっと肩に手を置いた。


はぎこちなく苦笑しながら頷いた。




「…帝国……か」




セッツァーがポツリと呟く。




「帝国を嫌っている点では僕達と意見は同じでしょ?だから…」


「よく見ればあんた。マリアよりも綺麗だな」


「はぁ?」




思わず声を出した


なんで僕なんだ、と言いたげな瞳で視線を返した。


セッツァーは少し思慮してから、




「決めた!アンタが俺の女になる。だったら手をかそう。それが条件だ」




と、言い放ったのだ。














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あとがき

54話目になりました。


最近セリスの美味しいところ全部奪い取っちゃってるきがするゎ。
ヒロインをどこまで特別扱いしていいのか
ちょっと加減がわからなくなってきてる(´・ω・`)

てかさり気にセリスがヒロインいじり側に参戦ww
ロックとのコンビネーションは流石だと思うのですが(怖ぇwww

あ、セリスなりの反撃か…!?
(次回、セリスの反撃をお楽しみに!!)
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