Angel's smile
















キン――…















 弾かれた偽り 55














「決めた!アンタが俺の女になる。だったら手をかそう。それが条件だ」




セッツァーが簡単に言いのける。


ロックが慌てて止めに入る。




「待て!早まるな、そんな勝手なこと!」


「オイお前こそ待てや」


「わかったわ」


「…!そこも何勝手に承諾してんのさ!!」




僕の意見は前面無視なわけ!?


掴みかかりそうな勢いの彼女をマッシュは「まぁまぁ」と宥める。


そんな彼女のことを気にせず「よし!決まりだ!」と手を叩いたセッツァー。


は頭を垂れるようにして頭を抱えた。




「でも条件があるわ!」




セリスはの元へと来て小声で呟く。


は少しだけ反応を見せるも、


決して笑みは見せずにポーチの中を探った。


取り出したのはコイン。


フィガロと刻まれている、金貨。




「………とうとうもそっちの道に―っ」


「違うし、染めてないし、寧ろそっちこそ早まるな、」


「なっ!俺はトレジャーハンターだって言ってるだろ!!」


「…なんでわざわざいじられに来たんだよ。


 誰も“ドロボウ”だなんていってないだろうが!」




エドガーに貸してもらってたの返すの忘れてただけだよ!


フィガロで会った際、コイン投げのゲームをしたとき。


落ちたコインを拾ったのは紛れもなくだった。


その時のコインを、いまは持っていた。


マッシュとロックを制して、セリスに向き直る。


セリスは「ありがとう」と言ってコインを受け取った。


否、が指の力を緩めないせいで、受け取ることはできなかった。


真剣な眼差しでは口を開いた。




「セリス、これは真剣な話。もし賭けに負けた時、


 僕は一生セリスを恨むし、場合によってはアイツの命の保障もしない。




 その意味本当にわかってる…?」




仲間を、兄を助ける。


ただそれだけのためにここまできたようなもの。


もしここで賭けに負けさえすれば今までのものが全て泡になってしまう。


その覚悟を、試しているのだ。









「 大丈夫よ、まかせて 」









セリスはしっかりと頷いた。


は「わかった」と呟いて盛大に溜息を吐き出すと指の力を緩めた。


しっかりと硬貨の感触を味わうように握り締めて、


セリスはセッツァーに向き合った。




「話は終わったかな?」


「ええ。このコインで勝負しましょう。もし表が出たら私達に協力する。


 裏が出たら…あなたの約束どおり。いいでしょ? ね、ギャンブラーさん?」


「ほほう、いいだろう。うけてたとう」




壁にもたれて座り込む


結果を見ないようにして目を閉じて片膝を抱いた。


渋い顔をしたロックが「ホントにいいのかよ?」と吐き捨てる。


はそれに答えない。




「いいわね?」




その言葉を合図に、セリスは親指を弾いた。









――― キン









空中に弧を描く金貨。


裏表を何度も反転してやがて地に落ち、弾かれた。


全員の意識が、そのコイン一枚に集中する。




静止した時間。


それを覗き込んだのはセリス。




「私の勝ちね。約束どおり手を貸してもらうわ」




セッツァーがコインを拾った。


裏表を交差に見てにやりと口角を上げる。




「貴重な品だな、これは。両表のコインなんて初めて見たぜ」


「そのコインは…!? 兄貴!」


「………」




エドガーは何かを思い出すように少しだけ俯いた。


セリスは「いかさまもギャンブルのうちよね?ギャンブラーさん」と薄く笑った。


そんな彼女にセッツァーは盛大に笑った。




「はっ! こんなせこい手を使うとはな…見上げたもんだぜ。


 ますます気に入った!いいだろう、手を貸してやる。


 帝国相手に死のギャンブルなんて久々にワクワクするぜ」




キン、




再び弾かれたコイン。




「俺の命そっくりチップにしてお前らに賭けるぜ!」









偽りが弾かれた。














←Back Next→

あとがき

55話ー

あ、忘れてたけどセッツァー登場。
同時にちょちょいとセリフもいじってます。
(いろいろなところで都合あわせw)

あーもうちょいだなぁ、アウリエルw
早く出したい!!
うわーむずむずするぅ(´・艸・`)

まずはベクタですな!
inserted by FC2 system