Angel's smile
















何かあった…?セリス――…















 弾かれた偽り 56














空を切っていく。


風が頬に当たり、心地よい。


甲板の手すりのところに腰を下ろして、


はぼんやり下を見つめていた。


そんな中ロックがセッツァーに切り出す。




「こんなオンボロの船がよく飛べるなあ…落ちないのか?」


「落ちる時は落ちるもんだ…人生とは運命を切り開く賭けの連続…」




ふ、とセッツァーは笑んだ。


目的地までは後数時間で付くだろう。


大海原を数時間南に進み、今ではもう大陸が見えてきている。


そしてその中央に存在しているのは、ベクタ。




「このデカイ船で帝国上空を飛ぶのは目立ちすぎる。


 やつらに気付かれないよう少し離れた場所に降りよう」


「そうしよう。俺は飛空艇に残っていつでも飛び立てるようにしておく」




ぐ、と親指を立てて合図する。


セッツァーは舵をぐぅと手前に引いた。




先ほどからずっと景色ばかり眺めているの元に


ロックは歩み寄った。


高いところが苦手な割には甲板まで共に出て、


こうしてずいぶん長い間世界を見下ろしている。




「………」


「やけに静かだな」


「ん?いや、ちょっと考え事。兄さんに会ったら最初になんて言おうかなぁって」




前髪が揺れる。


同じようにしてロックの銀髪も乱していた。


の視線は相変わらず大陸に釘付けだ。


そして彼女は今日何度目かの溜息をついている。




「まぁ、取り合えず…」


「…??」




ロックの視線も大陸を捉えている。


そんな横顔に何となく目が止まった。




「お待たせ、って言っとけばいいんじゃないのか?」




微笑んだ彼。


目がそらせなかった。









 +









飛空挺はベクタの少し南にある、アルブルグという街の近くにつけられた。


そしてそこで戦いに備えての道具を調達する。


街の中には当たり前のようにそこらじゅうに帝国兵がいて、


とセリスは二人の意見もあって調達の間


飛空挺でまっていることになった。


今ここで見知りのある帝国兵に会えばベクタまではあっという間に伝達され、


最悪ガストラ皇帝の耳にまでも届くことになる。


それだけは避けなければいけない。




「あら、傷が治ってる……」




の頬にふれてセリスが驚いている。


はえ?と脳裏に疑問符を浮かべたが


すぐに「あぁ、」と頷いた。




「ロックが治してくれたんだ。えっと、なんだっけ…


 女の子の顔に傷があったらだめ…?とかなんとか」


「そう、ロックが…」


「…?」




ロック、と聴いて目を伏せたセリス。


は少し疑問に思いながら「どうしたの」と覗き込む。




さんはロックのこと……どう思ってるの?」


「どうって?」


「ほらあるじゃない。好きとか嫌いとか…」


「うーん」




セリスの言葉に少しは迷う。




「好きだよ?普通に…。たまにヤナ奴だけど、本当はいい奴だと思う」


「そう……」


「??変だよセリス…疲れちゃった?」




の言葉に静かに首を振る。




「私たち、何があっても友達でいましょうね。絶対」


「あ、当たり前でしょ。言わせないでよ…」




若干照れながら彼女は言った。


そしてぶっきら棒に顔をそらして誤魔化している。


セリスは目を細めて微笑んだ。









 +









狭い個室。


身じろいだ刹那に鎖が音を奏でる。


闇が世界を支配した。


そんな世界観に飲まれながらそいつは耳を澄ましていた。


シャララ、


シャララ、


鎖が鈍く音を出す。


この世界の中で聞こえる音は外で鳴っている


機械のギシギシと言う音がほとんどだ。


人も寄り付かないような場所にあるせいで


最近では一日に一人の人間に会えて多いほうだった。


そんな中でゆっくりと覚醒する。


目を開けて瞬きをした。


それだけで様々な感覚が戻っていく。




そしてそいつは小さく首を傾げて見せた。









「やっと、きた……」














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あとがき

56話更新です

閑話みたいな一話でした…
しかも予定外(爆
ベクタに入ろうって思っていたのですが、
上手くねじ込めませんでしたゎ;;
ま、次からは確実にベクタです。

個人的には結構簡略しちゃいたい気持ちですww
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