Angel's smile
















トクトク、トクトク……少し、速い?――…















 弾かれた偽り 57














「こっち」




魔導研究所内部には簡単に忍び込むことができた。


ベクタの街に忍び込んでいた、リターナーに所属している


爺さんが上手いこと帝国兵をちょろまかしてくれたのだ。


自ら犠牲になった(精神的に)爺さんには密かにお礼を零して


魔導研究所内部を案内する。


機械にパイプにカプセルにクレーン。


複雑に絡み合った室内は迷路のように広くて


その上時折見える帝国兵から身を隠さなければいけないという


事情からメンバーは最小限、攻撃は控えながら進んでいた。




「それにしても…かなり複雑に絡み合っているな…」


「あぁ、二人がいなかったら迷っていそうだよ」


「どうも」




ぶっきら棒に言って機械のモンスターに小さな電撃を食らわす。


機械系のモンスターは雷属性に弱いのだ。


簡単にショートを起こしてくれるからありがたい。




「へぇ、魔導アーマーが改良されてる」


さん、今はそれ関係ないわ」


「てか見ただけでわかんのな…」




変なところに感心しているの背中を押すセリス。


相変わらず珍しいものには目がないのが彼女。


は不満そうに(でも大分慣れつつある)


ゴンベアに乗り込んだ。


途中で真下に落ちそうになるところで飛んで、


タイミングよくクレーンに捕まる。


全員ががしていたようにして着地するまで、


は辺りは無事かと視線をそこらじゅうに這わせた。


そして、癇に障る声を聞いて思わず物陰に隠れた。


後から来たセリスたちもそれを見つけて身を隠した。


は両手で口を閉ざして身を縮めていた。


そしてその体が微塵に震えている。


恐れている。


―― ケフカ




「俺が神様だよ…ヒーッヒッヒッヒッ…幻獣をもっと集めて…


 魔導の力を取り出してー…そして…




 ……三闘神の復活だー!!!」




――三闘神。


その単語にはさらに目を見開く。


聞いた事がないわけなんてない。


幼いころ、父に教わったことがある。


幻獣を生み出し、互いの力を恐れて滅ぼしあった三闘神。


…事実今現在は幻獣界の奥で封印されているはず。


ぐ、と握りこぶしを作った時、後ろ頭に誰かの手が触れた。


そしてそっと引き寄せられる。


見上げてその人物を目に捕らえた。




「(目、閉じてろ)」


「(…、)」




ロックだ。


視線は換わらずにケフカへと向けられている。


けれど彼の片腕の中にはすっかり納まっていた。


囁くようにそういわれては素直にそれに従った。


完全に遮断されて、聞こえるのは機械の音と、


ケフカの小さな笑い声とロックの心臓の音。


トクトク、トクトク。


少し早いのは緊張感から…?




「もう魔導の力を、吸い尽くしたようだね…おまえは、もう用なしだ!!」




お前も要らない…!!


そういってケフカは二体の幻獣をゴミ捨て場へと放り投げた。


落下音が聞こえてはじっと耐えていた。


ケフカが姿を消すまで。


そして彼等の行方を追えるようになるまで。


トクトク、トクトク。


後、もう少し。









 +









ありがとう。もう大丈夫。




研究所が静かになったころ。


はロックを押して自分から離れる。


ずっと目をつぶっていたせいで少し目がくらんでしまったけれど、


さっきよりはいくらか落ち着いてきた。


あたりに視線をめぐらせて歩き出す。




「まだ、助けられるかもしれない…」




そう呟いては「行こう」と促し、


先に二体が捨てられた場所に飛び降りた。


また4人もその後を追った。




キン、




体の中の幻獣が呼応する。


それを素直に受け止めるとは幻獣の姿へと身を転じた。




「皆は手を出さないでね」


「……えぇ、わかったわ」




キン、




波動が触れあう。


はじけることはない。




「お久しぶりです。イフリート、シヴァ……」


『……セラフィムの倅(せがれ)か…。今更なんのようだ』


「皆さんを、自由にするために戻ってきました」


『――笑止!!』




ブヮ…ッ









業火の炎がに襲い掛かった。














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あとがき

57話更新です

結構省いてます。
スマソ;;

一気に進もうと思っていましたが
この辺りはなかなか長い道のりでしたな。
あぁ…兄さんが遠いい(・ω・` )

でもま、微妙に甘くできたからいいかなぁ?
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