Angel's smile
振り上げた刃に躊躇いを乗せて――…
欠陥者の抗い 59
頬を伝う滴。
思わず目を細めた。
視界が涙で歪んでしまう。
ぽた。
ぽた。
コンクリートの床に染みを作った。
+
長く続く階段を只管上へ上へと上っていく。
ゾゾのビルを思い出させるそれを、
全員は肩で息をしながら上っていった。
「の奴、会えたかな…?」
上へ進むにつれて会話がなくなってきた。
それを見計らってのマッシュの一言。
それにロックは被さるようにして
「会えただろ、きっと」
「泣いていたりしてね」
「ハハ、あるかも」
そういって笑うロックをセリスがにらんで制する。
口元を引きつらせて黙り込んだロックをみて
エドガーはやれやれと肩をすくめた。
「…っと、お出迎えか…?」
ロックはベルトからナイフを取り外しながら言う。
「みたいね」
セリスはほう、と息を吐いて備えた。
目の前に居るのは一体の人間。
否、人工的に作られた人造人間といったところだろう。
右手には鋭いサーベルを持っていて、
4人を視野に映すと目の中央が赤く光った。
そしていきなり攻撃してくる。
「うあ、っと……」
振り下ろされたサーベルを間一髪のところでよける。
そしてマッシュは反動を使って腕を振るう。
腕先に装備されたナックルが見事にそいつの体を切り裂く。
すかさずロックが呪文を詠唱した。
… サンダー …
無数の電光がそいつに降り注ぐ。
ダメージはほどではないが、
それでも敵の動きが鈍くなったことは明確だった。
セリスとエドガーは視線を一度合わせ、頷きあうと
すぐに行動に移す。
セリスは幻獣シヴァの魔石を取り出して翳した。
… ダイヤモンドダスト …
細かい氷の粒が吹雪でも怒ったかのようにそいつを襲った。
逃げることさえ許さず、氷の粒は凝結し、完全に動きを止める。
「はぁ―っ!!」
そのタイミングを見逃さずにエドガーは長剣を思い切り振り下ろした。
容赦なく敵は砕け散り、ピクリとも動かなくなったのは
それからすぐ後のことだった。
セリスはもう一度溜息をついてから
「この扉の先が、研究室よ」
と全員を纏めた。
後戻りはできない。
誰かがそう呟いて扉を開いた。
+
「なんだここ……」
ロックがそう呟くのにも無理はない。
ここには不思議な空気が漂っていた。
左右にいくつものカプセルが二段に分かれて設置されている。
中には幻獣がふわふわと浮遊している。
今まで見たこともないような形や色をしているので
セリス以外の全員は興味心身で見ている。
その時唐突に今来たばかりの扉が開いて、
全員は驚いて瞬時に身構えた。
扉の奥から覗いたのは桜色の髪だ。
ロックは少し不思議に思った。
「お、ちゃんと来れたんだね」
「驚かすなよ…」
「知らないよそんなの」
お前達が勝手に驚いたんだろ?
は入ってきて早々ぐ、と眉をひそめた。
エドガーが「兄さんには会えたのかい?」と尋ねると
の表情はしゅうと暗くなって、少しだけ目を伏せて見せた。
その反応にエドガーはそうか、とだけ呟いていた。
「場所、変わったんじゃないかな。よく、あるからそういうの」
がっくりと肩を落としている。
ロックは口元に手を置いて少し考え事をしていた。
「なぁ。この前聞いたお前の助けたい奴って何人だっけ?」
なんのこと?
セリスが怪訝そうに眉をひそめる。
は脳裏に疑問符を浮かべながら「一人だけど?」と
すぐに返事を返した。
一人。
つまりは実の兄一人のみ。
そっか、そういや、そうだったな。
ロックは静かにそういって、ベルトへと手を探らせた。
そして、
「はどこだ…!」
ナイフを突き出し、睨むように行った。
あとがき
59話ー
サブタイトルチェンジです。
段々タイトルが意味深のかっけー感じになってきました。
(初期の街名はどこに言った???w)
↑今回だったら帝国都市ベクタとかさーw
最近文章がマンネリ化してきてる気がする。。