Angel's smile
















寂しがりやだからきっと皆のことを待ってるよ――…















 欠陥者の抗い 60














刃が向けられては咄嗟に一歩分後ろへととんだ。


あ、危ないだろ。どうしたんだよ急に。


は眉をひそめて様子のおかしいロックを見据えた。


おどけた風な言い回しでいうものの


ロックの眼光はさらに鋭くなるばかり。


ナイフを握る手を緩めることはない。




「僕ならここにちゃんといるでしょ?」


「…」


「とうとう目も悪くなったわけ?」




からかう口調は同じ。


やれやれという風に肩をすくめて見せては溜息をつく。


次第にどっちが本当かわからなくなったマッシュが


ロックの名前を読んで確かめた。


ロックは静かに首を振って問を返す。




「お前はじゃない」


「……なにいってんのさ。正真正銘僕はだよ」


「違うな。アイツなら俺がこうやってナイフを突き出しても避けないはずだ」




過去の出来事から自分に厳しい彼女のことだ。


こうやって刃を差し向けるともしかしたら彼女は


当たり前だ、とでも思うかもしれない。


何より実践なれしている


すん止めかどうかも見極められないはずもない。


…最も。


一番大きく存在しているのは“信頼”だろうが。




がこの帝国に来る前、助けたい仲間は9と、確かにいったよな」


「…誰だって間違えることくらいあるだろ。…そんな風に言わなくても……」





圧倒的に非難される


次第に彼女の表情は険しくなり、口数も減っていく。









「俺の知ってるは、一度いったことは絶対に曲げない奴だ」









ロックが何の躊躇もなしに言い放つと、完全には黙り込んだ。


複雑そうな面持ちで段々と俯いていく。


両手でゆっくりと顔を覆い隠した。


頭を抱えているような仕草。


ロックはナイフだけは下ろさずに


先ほどよりいくらか静かに最初の問をかけた。


が笑い出したのはすぐ後だった。




「ふ、ふ…っふふ……」


「なにが可笑しい!」




ぴた。


何もかもが静止した。


まるで壊れたように…否、そいつの動きも何もかもだ。


指の隙間から見開かれた褐色の瞳が覗く。































「 あーあ、バレちゃった 」































息が止まる。


一瞬のことロックは思わず目を見張った。




まず向けられていたナイフがロックから強制的に離される。


その反動でロックが後方へと吹き飛ばされた。


僅かの刹那。


ソイツは残酷な眼差しで傍観的に見下ろしていた。


直後ロックが地に叩きつけられる。


咄嗟に受身を取ったものの叩きつけられた箇所が痛む。


…そして、一瞬のうちに斬られたそれも。


ロックは膝を地に着けた状態で「へへ」と笑った。




「二刀流かぁ。しかもそれ、よく見たら父さんの“レイヴ”じゃないか。


 へぇ、成るほど…がねぇ。うん、それはちょっと意外だったな」




はじめに出会ったときと同じ軽い態度。


何度も豹変する雰囲気にエドガーとマッシュも身構えた。


セリスだけはただ渋い顔をしていた。




……」


「!!」


「じゃあコイツが――ッ!」


「……っ」




セリスの一言に全員が驚きを隠せない。


そしてその全員は同じ単語を脳裏に浮かべていた。




“ 兄 ”




と。




「はは。やっぱりセリスは僕たちのこと見分けられてない…!あはは!」


「………」


「無理もないけどねぇ、セリス…!


 だって僕たちを見分けられる人間なんて滅多にいないんだからぁ!!」


「――っ!」




壊れたようには言う。


笑が止まらない。


はロックを見据えてにっこりと微笑んだ。




「ほーんと吃驚だよ。もうちょっとで上手くいくと思ったのにさぁ」


「上手くいく…?」


「そ。見たところアンタ達あの子の知り合いなんでしょ?


 だからさ、僕的にもあんましそんな人たち殺すのが気が引けるんだよねー


 任務だから仕方ないんだけど。


 ……ま、さっきそれなりにお話できたから僕にとってはもうどうでもいいわけ」




にっこりと無垢の笑顔で言う。


それとは対照的な言葉達が嘘のように軽い。


何より相手はを鏡で映したようにそっくりな兄だ。




双生児。




セリスが震える声で呟く。


このままでは壊れてしまいそうだった。


エドガーは調子を整えて尋ねる。




「話…?に会ったのか?今彼女はど――」




エドガーの言葉が途中で途切れる。


エドガーは大きく目を見開いて静止した。




ごくり。




さっきから彼の手に握られていたソード。


長剣と言うよりは短く、短剣ほど短すぎるわけではない。


中間の長さのそれ。


刃の先端がゆるくカーブを描いている。


塚のところからは細い糸につむがれた石みたいものがいくつか垂れている。


不思議なソードだ。


しかしエドガーが注目していたのはそこではない。











「大丈夫。が寂しくないようにすぐに逝かせてあげるから」














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あとがき

祝60話!!

落ちたね、うん、落ちたわ。
通らなきゃいけないとことおるのって嫌い
って、ならとおらなきゃいい、
っていうのは子供の考えなんだろうなーとか思ったり思わなかったり。

てか連載書く前にいろいろネタバレしてるから
兄双子説がでてもなんにもおどろかないよね。。(´・ω・`)

あ、アウリエルの今の口調はDグレのロードを参考にしています
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