Angel's smile
















ロックが少し、怖い――…















 埋らない溝渠 67














ロックがを覗き込む。


それは決して穏やかとはいえない表情。


こんなになるまで無茶はさせたくなかった。


けれど、


止められなかった。


そんな歯痒い感覚に浸っていた。


シドは小さく溜息をつき、何かを思い出しているようだった。




「セリス…あの娘は幼い頃から知っておる。


 娘のように、可愛がってきた。


 しかし同時に魔導戦士として教育するという、


 むごいこともしてきた。


 だから…もう一度会えるなら、謝りたい…わしのしてきた、あやまちを…」




エレベーターが停止する。




「この子たちには本当に、酷いことをしてきた……


 この子達の両親が殺される時も、わしはずっとその場におった。


 それなのに、止められなかった」




正面にはトロッコが見えた。


トロッコは荷物運搬用らしく、かなり広く、ゆとりがある。


シドはこれに乗って外に出られると説明した。




「気が済むようにするといい。このわしを…


 お前さんたちにはその権利がある……」


「……」




潤んできたシドの瞳。


それを見ただけでどれだけ悔いてきたのか、


どれだけそのことで苦しんできたのかが解る。


ロックは沈黙した。




「いかん!ケフカだっ!!行け!!!」




シドがトロッコを押した。


ストッパーが外れる音がしてトロッコは容易に動き始める。


段々と小さくなっていくシドをロックは


なんとも言えない気持ちで見送っていた。


腕の中でまだ意識が戻らない彼女のことを思うと、


言葉が出てこなかった。









 +









途中障害がいくつもあったが


(トロッコに乗っている間のモンスターからの攻撃など。)


なんとか終点までつく。


そこは魔導研究所の入り口の場所で、


魔導研究所の大騒ぎに全ての兵が出払っており、


ほとんど難なくその道を通り抜けることができた。


ベクタの町の入り口を示す城壁のあたりでは


心配していたセッツァーが待っていた。


全員を見回してセリスの存在に疑問に思う。


ロックはダンマリとしていてエドガーとマッシュも


それにあわせて応えなかった。


セッツァーは首をかしげながらも




「話はあとだ!行くぞ!!」




とその場を纏めた。


セッツァーが飛空挺までの道のりを辿る。


そしてその後ろを3人は追いかけた。




「ロック…、」




耳元で彼女の声が聞こえた。


ロックは「ん?」と返す。


走っている足は止めない。




「歩ける、から…」




おろして、と弱弱しい声で言われても説得力がない。


弱い力で軽く抵抗されるが、ロックは抱いている手を緩めなかった。


ロック、ともう一度名前を呼ばれる。


それは何の反応も見せなかったロックに対する疑問の言葉だった。




「いいから、休んでろって」


「……」




は少し俯きがちに頷いた。


お互いがその会話にぎこちなさを感じるものの、


特に何もするわけでもなく黙り込んだ。










 +









甲板の端。


壁が背に当たるように座らせる。


は軽くお礼を零して刺された腹部を押さえていた。


まだなんらなの痛みがあるのだろうか。


の視線は既に帝国へは向いていなかった。




「長居は無用だ。早いとこ脱出しようぜ」




のことを盗み見て、ロックが言う。


があまりにも居座りたくなさそうな


雰囲気だったのを考慮してだった。




「うむ…と言いたいところだが、どうやらおいでなすったようだな」




飛空挺に影がかかる。


ガシャン、ガシャン、


音が鳴るたびに軽い地震が起きている。


それだけで大きさが少しは予想ができた。




「何かデカいヤツが向かってくるぞ!!」


「うわーっ!何だ、ありゃ!?」




上を見上げるマッシュ。


が咄嗟に構えようとしたが再びロックに制される。


は目を伏せながら大人しくうなずいた。




向かってくるのは二体の機械だった。


それは帝国から伸びていて、おそらくはケフカが仕組んだのだろうと思う。


いきなり襲い掛かってきたので全員が挟まれるような形で戦うしかないようだ。


エドガーが呪文を詠唱する。




… ブリザド …




ひゅん、


冷気が吹く。


ダメージは然程与えられなかったが


それでも次の攻撃のための時間稼ぎにはなった。


先端のクレーンがマッシュを襲う。


マッシュはそれを紙一重でかわして尚且つ傷をつけた。


体勢を整えてナックルを構える。


セッツァーが頃合を見てダーツを投げた。




― サンダラ ―




一体のクレーンが魔導を繰り出す。


が座った状態のまま掌を差し伸べた。




… シェル …








緑の光がオブラートに包みこんだ。














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あとがき

67話め更新です。

キリが悪いので途中できりました。
次あたりで完全に魔導研究所編が終わりますな

んでもってこのサブタイトルも次で終わらせる予定です。
次はどうしようかな。。

地味にスランプはいったようです。
言葉が出てこないって言うかなんというか。
今は何とかBGMの力を借りてがむばっておりますb
(↑ちなみに今は灰男作業用BGM&Youメドレー)
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