Angel's smile
















今のほうが、好き――…















 魔を封ずる者 71














「気味が悪い、ね」




全員の意見を代弁するように、が言った。


ナルシェを発ち、一日ほど空のたびを終えて今はベクタの東にある


ベクタの監視所。


魔封壁のある洞窟の入り口に関所のように作られた基地。


ここに何度か足の運んだことがあるだったが、


そのときの光景と今のそれは同一だといえば嘘になる。


人気がない。


あたりはしん、と静まり返り物騒な空気すら流れていた。




「こっちであってるのか?」


「あってる。でも、ここから先はよく覚えてなくて」




ここに以前来たのは5つくらいのときだ。


最後まで必死にかばってくれた母親と引き離され、拉致されたあの時。


後に自分の後を追いかけた母親も皮肉にもつかまってしまい、


親子そろって帝国に捕虜される形になった。




「ん、」


「??」




こつん、と軽く押し当てられた拳。


小突かれた額を押さえながらは脳裏に疑問符を浮かべた。


ロックは答えずに先を歩きだす。




(深く考えるなってことかな…)




顔に出てたかな。


無意識の内の自分の行動に少し気をつけようと反省する。


帝国にいた頃はこんなことなかったのに。


氷のように表情を凍らせていたし、喜怒哀楽に情が移ることなんてなかったのに。


最近は少しおかしい。


でも。


今のほうが、好き。




(あ、いけない。また考え事してたや)




集中しなければ。


ベクタ監視所を抜けて洞窟の奥へと進んでいく。


封魔壁はすぐに見えてきた。









 +









封魔壁。




大きな扉だった。


見上げるほどのそれには鍵はついていなかったが


中央には魔方陣なようなものがかすかに残っている。


は吹き付ける風に耐えながら息を呑んだ。




「この奥に幻獣界が……」


「あとはティナとにすべてをかけるしかない……」


「頼むぞ…ティナ、




その言葉を背で聞き、ティナとは一度頷きあってからつり橋を渡った。


短い橋。


二人の視線は魔封壁から離れない。


気を静めてからティナはトランスをした。




「はじめます」


「ええ、お願い」




ティナの言葉を合図にも両腕を高くかざした。


光を求めるように伸びた後、ティナ同様魔力を一気に開放する。


ふぅ、と落ち着いたときは光を灯す幻獣の姿へと変化していた。




「……」




目を閉じて瞑想する。


両手を今度は魔封壁へと伸ばした。


すると両手のブレスレットが杖に変化するときのように


門の中へと吸い込まれた。


もともとあった魔方陣のスペルの羅列と重なったとき、魔方陣が解けた。




… 封解 …









 +









ヒョッヒョッヒョッヒョッ……




その場の誰もが聞いたことのある耳障りな笑い声を聞いて


背後に注意を向けた。




「ケ、ケフカ!!つけられていたとは……!?」


「ティナ!!早く封魔壁の扉を!!」




マッシュが不覚だったと言わんばかりに顔をゆがめて、


エドガーが扉の手前でトランスした状態の二人に叫んだ。


洞窟の入口からやってきたケフカはにやりと笑ってみせた。




「ガストラ皇帝のおっしゃっていたとおりだ!


 ティナを帝国にはむかう者に渡し、およがせれば封魔壁を必ず開く……」


「……!」


「つまり、我々の手の内で踊っていたにすぎないのだよ!


 ヒッヒッヒッ……! 君達に用はありません。


 私達のために用意された、栄光への道を開けるのです!!」




栄光への道。


幻獣の、否、魔石の回収。


さらにその先を求める帝国にロックは舌を打った。


魔封壁へと繋がるつり橋の道を自分がさえぎる。




「そうは、いかないぜ! ケフカ!」


「おや、私とやり合う、おつもりですね。そういう、おつもりは、いけませんねえ!」


「二人が扉の中に入るまで、ケフカを食い止めるんだ!!」


「あ!扉が開きますですよ!」




おかしな口調でそう言い放った。


その言葉を目で追った全員。


魔封壁の封印はすでに解き放たれた後だった。


二人は手を結び合い、お互いに不安と緊張を共有しあいながら共鳴する。




「幻獣たちよ……私達を受け入れて……」


「私たちの言葉を……聞いて……」









魔封壁の奥から来るものに、鳥肌が粟立った。














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あとがき

71話目でございます

割と原作中心と、進みましたね。
でも個人的に次に書きたいシーンは夕食会のところなんですよね…
うーん(´・ω・`)

まぁ兄様を書きたいというのが一番なんですけどね
………
あー、よこくしちゃったな。しくった;;

ということでぽちり (殴)
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