Angel's smile
おねがいだから、――…
魔を封ずる者 72
指先が震えてくる。
恐怖と、期待から。
二人が二人を支える。
指先を結び合って。
扉が開かれた。
奥からの匂いに安堵する。
少しずつ光が増す。
奥から幻獣が飛び出してきた。
みんな、
怒ってた――
+
「むむむむむむむなさわぎがが何か来るっ!!!」
ケフカがそう叫ぶと扉から噴出してくる膨大な何かを目で追った。
エドガーたちもその存在に思わず身構えた。
魔封壁の奥から我さきと飛び出してくるのは
見間違えることのない幻獣だ。
ただ、様子がおかしい。
「すごいエネルギー!ぬわー」
「ティナ!!!!」
ケフカが追い出された。
そしてティナとの二人も入れ替わるようにして飛ばされてきた。
ティナは既にトランスも解け、ぐったりしているようだったが、
は今もまだトランスが続いていて意識もかろうじて残っていた。
ロックに上半身だけ起こされる。
けれど彼女の視線は遥か遠く、過ぎ去った幻獣たちのほうへと向かっていた。
後を追いたい気持ちが大きいようだが、
その場のことを置き去りにできずに耐えているようだった。
ゴゴゴゴ…
そんな音がして扉が閉ざされてしまった。
その上扉の周りには崩れ落ちた瓦礫たちが覆ってしまっている。
「さっきの幻獣は……?」
ロックと目が合って、ぎこちなく目を伏せた。
ロックもすこしためらう様に右手で自分のほうへと近づけてとん、とん、と撫でてやる。
は小さく頷いてふわり、とトランスを解いた。
「とにかく飛空艇に戻りましょう」
頼りなく起き上がったティナがそういった。
+
「何が起こったんだ? 幻獣たちが群れをなして飛んでいったが……。
その後帝国の人間も怯えるように逃げて行った」
帰ってきて早々飛空挺で待機していた仲間たちが驚きを隠せない風に言った。
外からの現状を知って、二人は複雑そうにしていた。
「幻獣はどっちの方向へ?」
「帝国首都の方へ」
「ベクタか……」
ベクタ。
幻獣の向かった場所。
間違いがどうか起こらないでほしい。
ただそう祈るのみであった。
「あっ!あれは……!!」
「どうしたんだいティナ?」
「感じるの……どんどん、近付いてくるの……ねぇ!も感じるでしょう?」
「あぁ。段々近くなってる……数も、すごい…」
ロックはただ首を傾げるばかりだった。
それでも二人の同じずっと遠くを見つめる様子と、違和感には気がついた。
「光った!」
「なんだろう!?まさか…・…!?
幻獣……こっちに来る!!!ティナ危ない!! 」
ロックが叫んでティナをかばう。
何事だ、と甲板に出てきたセッツァーをが伏せるように言う。
セッツァーは頭上を通り抜けた幻獣の存在にびっくりしている。
「怒ってた……」
「怒ってた……?」
「嫌だ……、やめてよ、行くな…!!」
の叫び声も彼らには届かない。
猛スピードで通り抜けた彼らは既に見ることはできなかった。
「それより、このゆれは……!!さっきの幻獣の……?」
「セッツァーーーーー!!!」
「うわああ!かじが、きかねえ!!!」
エドガーが叫ぶ。
セッツァーは急いで舵を握るが何時ものように応えてくれなかった。
機内がゆれる。
飛空挺が空をさまよう。
後方から煙を噴出しながら。
あわただしい空気が流れる。
落ちるときの衝撃に耐えるためエドガーは全員にどこかに捕まるように促す。
ティナを包むようにして自分も柱に捕まりながらも
の視線は遠く、幻獣の向かった先へと向いていた。
そして一気に暗転したのだ。
+
嵐の後の静けさ。
静かに静まり返った甲板で、はゆっくりと起き上がった。
上半身を起こしただけだと言うのに頭の奥がズン、と重たい。
視界が一瞬暗くなって時期に元に戻っていった。
眩暈なんて久しぶりだな、なんて思いながら額を押さえて大人しくしていた。
「どこか…打ったのか?」
「いや?…ただちょっとくらっと来ただけだよ」
もう治ったから大丈夫だと、ロックに言う。
そしてふとあたりを見渡して現状を理解する。
先程までは空の上にいたはずなのに、今見たところによるとここは陸だ。
あぁ、海に落ちないでくれてよかった。
と、割とすぐそばに見える岸辺を見つめながら思った。
「ここは……?」
「…、多分、ベクタからそんなに離れてないと思う。ほら、あそこ……マランダの街が見える」
が指差したその場所に小さな街があった。
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あとがき
72話目ですな!!(゚ロ゚屮)屮
今回の分でサブタイトル終了の予定です、
まだ検討中ではありますが、
次回のはサマサ行き、
もしくはサマサ終了後くらいまでの分になると思います。
(肝心なタイトルはこれから決めますけどね;;)
少し、展開速いでしょうか?
あまり意識はしていないのですが、
ここまでくるのがとても早く感じて仕方がないです。
……うん、書くのって楽しいです。
ということで
ぽちり
(殴)