Angel's smile
















すれちがい――…















 愛するというコト 73














「これ、もし兄さんに会えたら、渡してほしいんだ」




あえたらでいいけどと言葉を濁して疲れを残す様子で


はロックに皮袋を手渡した。


なかには少し固めのコツコツした小さいものがいくつも入っていて、


はそれを「以前立ち寄った街で買った」と言い張った。




「ああ、わかった。……お前も、今回はちゃんと休んどけよ?」


「わかってるよ。相変わらず口うるさいヤツだな……」


「ったく……」




彼女の額を小突いてティナ、マッシュ、エドガーの待つ


陸へと歩いていった。


はトールと一緒に手を振って見送っていった。


トランス+封解の魔法が中々に堪えたご様子。


今回は大人しくお留守番なのだ。


四人の姿が見えなくなるまでは彼らの背中を送り続けた。


トールは沈黙の後、小さく尋ねた。




「もしかしてさん……ロックさんのこと……」




好き?


言わずとも聞こえてくるようだった。


するとは小さく微笑みながら口元に人差し指をくっつけた。


言っちゃダメだよ。


そういっているようだった。









 +









帝国都市、ベクタ。


その有様は。


見るに無残なものだった。




「………」




街には火がつき。


ところどころ破損して、最悪なところは家全体が崩壊している。


所々に人が集まって身を潜めている。


一度体に染み付いた恐怖と言うのはなかなか抜けないものだ。


住民たちはまた来るのではないか、という現状に立たされ


そんな中、生き延びたいと一心に思っている。


……ここにがきていれば、一体どんな顔をしただろうか。


そう思っただけでなんとなく気持ちが落ち着いてくるから不思議だ。




(………いつから、だっただろう)




隣にいる彼女が当たり前になっていたのは。









 +









帝国内部。


正面のゲートの前では一人の帝国兵が「お待ちしておりました」と頭を下げた。


体のどこかを常に緊張させながらも4人は彼の後を追う。


重そうな扉を開けて廊下を進む。


緊張感漂う張り詰めたような空気の中


奥の椅子に腰をおろしていたのは他でもない


ベクタ国の皇帝、ガストラだった。


哀愁満ちた雰囲気を放ちながら彼は一言




「よせ、わしはもう戦う気はない」




と静かに言い放った。




「皇帝は心を入れ替えた」


「シド!!」


「幻獣が仲間を取り返しにやってきたんじゃ。


 仲間が皆殺しにされた事を知ると町を荒らして去って行った…


 わしはこの耳でしっかりと聞いた…幻獣達の怒りの声を…」




ゆっくりと顔をのぞかせたシドがため息をつきながら言った。


ガストラの隣に立つ兵士も「戦争は終わったのだ」となんともいえない表情でそこにたっていた。


双方の沈黙。




「幻獣の力…わしは、あまく見ていたようだ…


 このまま幻獣達をほっておけば世界は滅びる。


 帝国の力など赤子に等しい。なんとか幻獣を説得しその怒りを静めなければならぬ。」


「人は、その手にあまる力を持ってはならない……」




もて余る力。


つまりは魔法、魔導、幻獣。


ティナはシドに一度頷きかけた。


の分もしっかりと。




「戦士達よ。ともかく、今夜、ゆっくりと食事をしながら話したい」


「和平を快く思っていない兵士もいる。


 会食の前に、なるべく多くの兵士と話をしておいてくれ。たのむ」




小さく会釈をしてガストラは奥の部屋へと歩いていった。


シドと帝国兵も追っていき、その空間には4人だけが残っていた。




「どう思う?」


「分からない…。ただ今はもう少し様子を見てみなければ……」


「そうね」


「なら夕食までの間、別行動はどうだ?」




ロックの提案に全員は頷きそれぞれが帝国兵と詳しく話してみる必要がある。


…それ以前にロックにはもうひとつの目的があった。


全員の同意を確認して、ロックは歩みを進めた。


吊り下げられた小包の存在を、手で一度だけ確かめた。









 +









さんなら、こちらのお部屋にいらっしゃいますよ。


と丁寧に教えてくれた人に小さく礼を言って、


扉に入る前にノックをする。


扉の向こう側から聞こえてきた声にそれとなく安堵に似た気持ちを覚えて、


ロックは少しだけ入るのに躊躇した。




「セリスさんですか?扉は開いてますよ」




ゆっくりと扉を開ける。


部屋の隅の窓側。


そこの椅子に膝を課開けるように座って本を熱読しているのは紛れもなくだ。


本に熱中するあまりに彼の言葉は違う人物をさしていたが、


反応の違いに違和感を覚えたのだろうか。


彼はふと顔を持ち上げてロックを見据えた。








「これは、驚きましたね。思わぬ来客さんです……」













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あとがき

73話目です(●´Å`)

兄様!!!!!!!!!!!!w
君                     臨

いや、もう、メッチャ大好きなキャラでして
はい……
断然やる気はアップです。
(´・ω・`)

サブタイトル、愛するというコト……
気がつかせるしょうにしちゃえ

ということでぽちり (殴)
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