Angel's smile
















お前は、でも、何故――…















 愛するというコト 76














「ティナが行くのなら俺が行く」




も、も、共にいくと言うのなら。


夕食後のベクタの街でロックはティナを見やりながら言った。


ティナはロックにありがとうと微笑みかける。




「あなたも、行くの?」


「うん、同行させてもらう。全然戦力外だけどね」


「そう……」




興味があるのかないのか、ティナの反応は薄々としたものだった。


は小さく小首をかしげる。


ティナと話すときは敬語は抜けるようだった。




「みんなは帝国に残ってくれ。どうも、クサイにおいがする…」


「確かに…皇帝の言ったことをそのまま信用するのは難しいな……」


「我々がここに残って帝国を監視するでござる」




カイエンに一度頷きかけてロックは頼んだぜ、と念を押す。




「ああ。お前も気をつけてな!アルブルグは帝国を出て南に言ったところにある港町だ。


 そこから魔導アーマーの運搬船で大三角島へわたる計画だったな…


 帝国の監視は俺達でやる。幻獣のほうはたのんだぞ」




エドガーはそういって、ロック、ティナ、の三人を送り出した。










 +









「あ、」




顔を合わせただけで彼女はやっぱり泣き出しそうになった。


ぐ、と眉根を寄せながらも必死にこらえようとしている彼女に


兄は微笑みながら抱きしめてやった。


とんとん、と背中をたたくとは暗黙したまま


その温もりを一身に感じているようだった。




「遅くなってごめんね」


「………ばか!」




出てくるのは強がりの悪態。


無愛想に言い放つ。


けれども兄は微笑むだけでそれを軽く返すのだった。




(双子……)




並びあう彼らを見つめてティナは小さくため息をこぼした。


男女の体格の差、性格の差、微妙な具合の身長の差。


その辺は多少あるとしてもやっぱり似ている。


隣り合うとそれがよく分かる。




「うん…具合悪いって聞いてたけど、大丈夫そうだね。


 ……はじめ聞いたときは仮病使って抜駆けしたのかとおもったケド」


「僕がガストラのじじいに会いたくないことを理由に仮病なんか使うわけないだろ。


 子供じゃあるまいし……さぞかし夕食美味しかったんだろうね」


「うん、とっても。も来ればよかったのに。……そんなに興味があるんなら」




それぞれ最後に付け加えた言葉は皮肉だ。


にっこりと感動の再開と言う余韻を残したままお互いがさらりと言うので


恐らく二人の本性を知らない人物であれば軽くスルーする所だろう。


完全に置き去りにされたロックとティナは顔を見合わせて小さく笑みをこぼした。




「よし、じゃあ行くか!」


「………どこに、」




の疑問を完全に無視してロックはとっとと飛空挺から降りる。


ち、と舌を打ちながらそれを追いかける


はそっとティナに微笑みかけながら「僕たちも行こうか」と促した。









 +









半ば強引に連れ出されるようにしてを含む4人はアルブルグへと歩いた。


距離は多少あったものの、その合間に襲い掛かってきたモンスターたちの


おかげもあってか、戦闘に不慣れなもそれなりの


対応の慣れを少しずつ学習しているようだった。


何より彼は魔法だけではなく、剣術にも長けていた。


否。


剣術だけで言うとより上かもしれない。


に言わせると「まだまだみなさんの足を引っ張ってばかりですよ」と笑うだけだった。


一日をかけて4人はアルブルクにたどり着く。




「待っていたぞ。私と同行するのは帝国の将軍一人と街でやとった男一人だ」




船で船長と打ち合わせをしていたレオは4人を見やるなり


早速船の中にいた二人の人物を紹介した。


ロックが動揺を隠せずにあごを少し引いて口を閉ざす。




「紹介しよう。セリス将軍とシャドウだ」




よろしく、とは口だけでセリスに言ってのけた。


けれどセリスは後ろめいた思いがあるのか


4人の誰にも目を合わせることをせずに目は伏せたままだった。




「さて、出港は明日だ。君達のために宿をとっておいた。今日はゆっくり休んでくれ」


「セリス……」


「……」




横切ったセリス。


ロックは声をかけようとしてやめてしまった。


双子は互いに目を見合って静かに元に戻した。




「今は帝国にやとわれた身だ。…と言っても心配はするな。


 お前らを殺るためにやとわれたわけでは無いからな」


「(殺し屋シャドウ……)そう、それなら安心」


「………」


「何?僕の顔に何かついてる?」




あまりにじっと見るものだからが口悪く返す。


シャドウはそれに応えなかった。


はその態度に露骨に嫌な顔をするものの、暗黙のままだった。









、シャドウが呟いた声は誰にも届かなかった。














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あとがき

76話目ですゎ(にょーん

今気がついたんだけどさ。

シャドウって初登場じゃね?(爆)

ごめん。
てっきりサウスフィガロで書いているとばかり…;;
シャドウさんはちょっとしたキーポイント役にしちゃいます!
↑お詫びとかじゃないよーww

ということでぽちり (殴)
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