Angel's smile
















『少しでも…うたがってしまって…だが、まだ仲間として…』




扉一枚ごしに聞こえた会話。


夜。


物音に目が覚めて、扉に近づいて、聞こえたのがこれだった。




胸が痛くて、仕方なかった――…















 愛するというコト 77














「機関、動力とも異常ありません」




兵士の一人がレオ将軍に報告をする。


レオは頷いてから4人にそれまでやんすんでいるように、と告げる。


はティナとロックに先にいっていて欲しいと伝えて


自分は彼女の元へと歩いた。


少しだけロックが気にしているようだった。




「セリス」




そう呼ぶとセリスは戸惑いながら微笑んだ。


そのぎこちない笑みに苦笑しながらもそっと隣寄った。


潮風が心地よく二人の髪をなでた。




「怒ってます、か…?」




久しぶりの敬語。


の様子を伺っているような、そんな口調。


その答えを恐れているように聞こえた。




「怒ってるよ」


「………」


「…自分にね。余裕なかったな、って」




他の解決方法も、きっとあっただろう。


セリスが疑われる必要なんてなかった。


ロックに疑われなくたって。




「………」


「………」




双方の沈黙が続く。


はふ、と表情を緩ませてセリスの頭をなでた。


そっと触れるだけの手のひら。




「 大丈夫 」




もう思いつめなくていい。


皆ちゃんとわかってるから。


はくい、と笑って見せてその場を離れた。


暫く遠い地平線を見ていたセリスはため息をついて空を見上げた。




『まだ仲間として…』




彼の言葉がこだましたのだ。









 +









「ここにいたのね、




すこし探していた、と言わんばかりの雰囲気だった。


ティナは彼を瞳に移してホッと安堵している。


は座ったままの状態でティナに微笑を送る。




「探してたんだ。何かあった?」


「いいえ?なんとなく……一人だったから」


「(こういうのを殺し文句って言うのだろうか…)そう」




ティナがの隣に腰を下ろす。


は甲板座ったまま遠くの海と空が混ざるあたりを見つめていた。


飽きもせず、興味深そうに。


ただ、外の世界を満喫していた。


会話なしで暫くそうしていて、はティナがじっと見つめていることに気がついた。




「どうしたの?」


「違う所を探してたの。二人ともそっくりだから」


「あぁ。僕たちのことか」


「迷惑だった?」


「いや。ちょっと嬉しいよ」


「ふふ…」




お互いにはにかむ。


ゆっくりと時間が過ぎていく。


不思議とそれが窮屈でないから心地がいい。


話したければどちらかが話し始める。


やがて疲れて沈黙すると双方も静かに口をつぐむ。


そして澄み切った青空を二人で見上げる。


ゆっくりと流れる時間が、幸せ以外の何者でもなかった。




「ねぇ、こういう気持ち。なんていうのかしら?」


「こういう…?どんなの?」


「うまくいえないけど…。丸いの。とても軽くて……あ、後弾む!」


「丸くて軽くて弾む???……ボールみたいな気持ち?」


「そう!」


「うーん」




そういうものの知識には乏しいは真剣に悩む。


ティナはそんな彼の表情をこぼさないようにしてみる。


真剣に悩んでいる表情があまりに愛嬌のあるものだったので


見ていて楽しかったのだ(こんな事彼にはいえないが)。


暫くして「ごめん、僕もわからないや」と苦笑した彼にティナは少しだけつまらなそうにした。




「明日の朝には着くんだってね」


「そうね。着いたら……幻獣たちをまずは探さないと。そして」


「………。大丈夫、ティナ一人に背負わせないから。僕も、後、もね」


「……ありがとう」




そこで一区切りおいて、二人は日向ぼっこを続ける事にした。









 +









「へぇ、お前。船が駄目なんだぁ」




水を得た魚。


あるいは弱みを握った


っくく、と腹を抱えて堪えながら笑い目にはうっすらと涙が浮かんでいる。


堪えて笑うものだからロックにとっては屈辱以外の何者でもなかたった。


あろう事かにその事を知られるなんて。


言い返そうとするものの、船酔いが余計に酷くなる一方で、


押し黙らざる終えない状況だった。


そんなロックを尻目にの表情から笑みは消えない。




「そんなに気持ち悪いなら吐けばいいだろ?……何なら吐かせましょうか?」


「やめろ。触るな。近づくな……」


「…。何だよ、人が折角心配して笑ってやってんのに」


「……最後のが余計なんだよ」


「……」




本当に気持ち悪そうだった。


はつまらない、と少し膨れてその場を後にした。


ロックの事を背中で勘ぐりながら瞬時に手のひらを魔力で温めた。




… ケアルラ …









こっそりと、彼に治癒魔法をかけた。














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あとがき

77話目です!w

なんだか今回は恋愛モードたっぷりの話だな。。
計算外だったのがアウリエルは結構やり手だ。(多分
ティナは今までのラファエルの雰囲気の記憶と
アウリエルの雰囲気の違いに興味があるようです
…二人がどう動かは……おたのしみに、です^^

ロックとも進展。
だけどセリスとも。
二股ってわけじゃないけど、ロックってそんな奴では?(酷

ということでぽちり (殴)
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