Angel's smile
















ここが、父さんの生まれ育った村――…















 魔導士たちの村 81














「ちゃんと、確かめてきたよ」




壁に座り片方の膝を抱いていたに兄が言う。


そっと隣に腰を下ろすと妹の反応が手に取るように分かった。


牢の中にいてはわからなかったもの。


気付かなかったもの。


そしてそれが今は手の届く処にある。




「ストラゴスさん…謝ってた。隠してた事。そしてやっぱり……」


「………そっか」




ちらりとを見て俯く


甘えたい。


そんな時のしぐさ。


は目を少し細めて自分の肩のほうへ抱き寄せた。


そのまま頭をなでてやる。


は小さく、ん、と呟く。




「父さんのお墓、母さんのも……作ってあげたいな。…ちゃんと、」


「ちゃんと…作ろうよ。ストラゴスさんも村長さんもきっと許してくれる」


「だといいな」




二人のまぶたの裏には同じ光景が広がっていた。


1年前のあの日。


涙をからしたあの日。


弱い自分。


あまりに非力すぎて。


護れなかったもの。


悔いた。




ぎり、


奥歯をかみ締める音。


口内に鉄の味が広がる。


は涙を押し殺すように兄の肩に顔を埋めた。




「大丈夫だよ、。もう二度と、あんな事は起こらない。起こさせない……


 あの日僕は自分ばかりが精一杯で君一人が頑張ってた事なんて


 全然気がつかなかった。遠かった。……でも、今は違うだろ?


 僕はまだ弱くて非力で…何の役にも立てないかもしれない。


 ……だけど、次は絶対に、君だけに背負わせないから。君も半分は休んでいいんだから…」




嗚咽を押し殺す。


は天井を見上げながら紡いでいた。


目は閉ざしたままで。


自分にいっているようだった。


強く在りたい。


その意志が強く現れた。




「潰れないで、ね」


「うん、大丈夫。僕、男だし…うん」


「はは、関係あるの?」


「あるよ。僕は兄さんだから妹を守るのが役目なの」


「ふふ…」




が小さく笑みをこぼす。


もまた微笑んだ。




「そろそろ、リルムちゃんも目が覚める頃じゃないかな?…行こうか」




妹は二つの返事で肯定した。









 +









部屋には既に目が覚めて上半身だけ起こしているリルムがいた。


ベッドのそばにはストラゴス、ティナ、ロック…


そして少し離れた所にはシャドウが背を向けていた。


ストラゴスは双子を見て少しだけぎこちなさそうにしていた。




「恥かしいところを見せてしまったようじゃな」


「ここの人は、皆魔法を使えるようだが、いったいこの村は…?」


「ここは……魔導士達の村」




ロックの質問にストラゴスは隠すことなく話す。


昔、人間は魔石から魔導の力をとりだした。


そして魔法を使えるようになった人間が魔導士とよばれる人。


そう、付け加えた。




「魔導士はもうこの世にいないと思っていました」


「魔大戦の後、幻獣達は封魔壁の向こうに結界をはりそこにかくれ住んだ。


 自分達の魔導の力を利用される事を恐れたのじゃ。そして、残ったのは人間だけ。


 普通の人間達が最も恐れたのが魔導士達の力。皆、魔大戦の悲惨さが身にしみておるからの。


 そこで行われたのが魔導士狩り。不当な裁判により魔導士達は次々と殺されていったのじゃ」




全ての始まりは魔大戦。


三闘神が生み出した幻獣。


そして幻獣より力を吸出し、それを人間の体内に注入した人間の事を魔導士。


1000年以上も昔の話。


今まで語り継がれるのは、それが、真実だから。


魔法を使えること以外何も変らない人間なのに……


とティナが呟いた。




「その時に逃げ出しこの土地にかくれ住んだ魔導士達がわれわれの先祖じゃ。


 血がうすまり、魔導の力はだいぶおとろえたが、なんらかの形でまだ残っておる」


「もし、よければ…僕達に協力してくれませんか?」


「幻獣がえどうのと言っておったな。


 リルムの命をすくってくれた恩を返さなくては。その幻獣さがし、わしも手伝うゾイ」




リルムも!


間を要れずに言ったリルムをストラゴスはすぐに制する。


リルムはつまらないとすこし不満がっていた。




「しかし、どうすれば?」


「む〜〜この島に幻獣が逃げ込んだのなら、村の西にある山かもしれんゾイ」


「山?」


「強い魔力をおびた山ゾイ。伝説では、幻獣の聖地と言われとる」




幻獣の聖地。


は一度を見た。


ニヤ、と笑いを含ませている表情を見て興味を悟った。


シャドウが静かに部屋を出て行く。


その後をインターセプターが追った。




「暴走した幻獣達は、その魔力に引きよせられたってこと…?」


「行ってみよう」


「うん」




頷いたはそっと背から壁を離した。









 +









「カン違いするな。こいつのためだ」




家の外でシャドウは言った。


ロックは出て行くのか、と小さく言った。


シャドウは一度黙り込みリルムから顔を背けた。




「俺は、俺のやり方で幻獣を探す」









最後に一度だけ彼女を見て、彼らに背を向けた。














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あとがき

81話でございます^^

げんじゅーのせいちー
・・・
・・・・・・・・・・

あ、ただの気まぐれです(いつもの。

シャドウ編は一話分(番外編)でしか触れてないですが
補足しなくて大丈夫でしょうか;;
わりと自分の中では完結している部分があるので
ちゃんと伝わっているのか不安になることもあるデスよ

ということでぽちり (殴)
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