Angel's smile
















気付かせようとしてるの?――…















 しあわせのだいか 84














胸がざわめく。


焦るに似た気持ち。


動揺。




久しぶりに抱いたもの。


なんだろう。


なんだろう。


なんだろう。


わからないけど、怖い。


胸騒ぎが日々強くなる。


こんなの、いつ振りだろう。




ああ、


最近は眠れない。









 +









「これが……幻獣……!?」




幻獣というものをはじめてみたリルムは少しだけからだをこわばらせた。


奥の空洞部分には見渡す限り数匹の幻獣たちがこちらをじっと見つめている。


それどころか幻獣たちは我々を敵と判断して詰め寄ってきたのだ。




「じいさん、リルムをつれて逃げるんだ」


「ダメだ…囲まれてる」




が杖を握り締める。


ティナがリルムとストラゴスを庇い、、ロック、が外側を守る。


出来れば、戦いたくはない。


そういう思いからは表情をゆがめていた。




「待て!」




奥から来たのは一人の幻獣。


ティナが向かい合いトランスをした。




「ティナに……強い魔力を感じる。いや……魔導の力と言うべきか……」


「また、あの時のように暴走するのか?」


「……大丈夫。安定してるよ」




暴走しても、止めるけど。


いつもの余裕な笑み。


その言葉は安堵させた。


ティナと幻獣が反応しあった。


しばらくして落ち着いたとき、幻獣たちから警戒の色はなくなっていた。




「君は…ちょっと違う……われわれと同じチカラを感じる」


「ええ」




は杖を持つ手を解いた。


杖は手を離れた時点で腕輪へと戻る。


あ、と呟いた。


誰かに届いたかは分からない。


けれど、は何時ものように黙っていた。


最優先すべきは、和解のほうだ。




「幻獣界には、こちらの世界に来てはならぬと言うおきてがあります。


 でも魔石化された仲間を助けるために若者達が扉の前に集結したのです。


 その時に二人の姿が…」


「私も感じました。あなた達の想いが扉の中から」


「彼女が、扉を開けてくれた事で外に出ることができました。


 しかしこちらの世界に出たとたんに自分の力をコントロールできなくなってしまったのです。


 そのために、一つの都市をメチャメチャに破壊してしまい、罪の無い人達まで…」




力の暴走。


は一度自分自身の手のひらを見つめた。


体内に流れる魔力。


それがいつ暴発するかという不安。


ないわけではないのだ。


ただ、黙っているだけで。




「私と同じだわ…突然手に入れた力をコントロールできなくて…」


「おそらく幻獣はあちらの世界では力がある程度おさえられる傾向があるのじゃろう。


 それが突然開放されたために…」


「幻獣によっては精神に失調をきたし人に危害を加える者も…本当にもうしわけない」




ユラが頭を下げた。




「帝国も幻獣達との和解を望んでいる。どうだ?俺達と来ては」


「……われわれをゆるしてくれるのか?」




ユラはそういって少しの間だけ目を閉じていた。


今までの全ての想いをかみ締めているようだった。




「サマサの村へ行ってレオ将軍達と合流しよう」


「そうね」




話はまとまった。


全員はサマサの村へと歩み始めた。


そのときふと声をかけられる。




に、……生きて、いたんだね」


「何とかね」「まぁね」




15年ぶりの再会。


幻獣界で、何度か顔を見合わせたことがある。


人間と幻獣の合いの子と言う事件は幻獣達の中でも


よく思う面々、そして悪く思う面々と二手に分かれていた。


ちなみにユラは、後者のほうだったからよく覚えている。




「あの時の事は……」


「…何のこと?僕もう忘れちゃったかも。兄さんはどう?」


「うーん、僕もいまいちなぁ。15年って結構長かったし?」




深刻そうに言うユラに双子はさらりとこぼす。


確信犯を装う二人にユラは微笑しながら「ありがとう」と呟いた。









 +









サマサの村に戻ると、先についていたレオとセリスと合流した。


手間をかけたな、といったレオにロックは首を振った。


それから後ろに控えていた幻獣をレオに対面させる。




「私は、帝国の将軍、レオ。あなたの名前をうかがいたい」


「私は、ユラ。われわれはあなた方にとんでもない事をしてしまった。


 許してくれなどと言えた立場では無いかもしれないが……」


「わかっている。おかした過ちを責める気はない。


 逆にあなた方の戦争のための力としてしか考えてなかった自分をはじる。


 魔大戦の過ちを再び引きおこうそうとしていた自分達を……」




レオの言葉にユラは俯きながらそういってもらえるとありがたい、と呟く。


これで幻獣との和解という自分たちの役目は終わる。


ベクタに帰ろう。


誰かがそういった。




「セリス……」


「何も言わないで」




ロックとセリスも無事仲直りを終える。


ひそひそ、とリルムとストラゴスが「おあついね」と耳打ち合っていた。


セリスは赤面して視線をそらし、ロックもまた赤面しながらも慌てて弁解する。










見知りのある魔力には身震いをした。














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あとがき

84話!

タイトル「しあわせのだいか」
あー。
なんとなくこの先って分かっちゃいますよね・
はい、そうです。
ご名答。

今回またまた少し落ちます(やっぱしか)
ソフトに、……頑張ってみます。
崩壊後は落ちる着ないけど…まだ分からないしなぁ。

ということでぽちり (殴)
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