Angel's smile
















わかったから、もう、やめてよ――…















 しあわせのだいか 85














見渡せば倒れこむ仲間たち。


立っているのは一人。


兄さんも、


ティナも


ロックも


誰も、いない。




私だけ。


どうすればいい?


どうすればいい?


どうすればいい?



私に何が出来るの?









 +









甲高い笑い声。


電気のように体内を駆けずり回るもの。


恐怖。


凍てつかせる。




「ぼくちんの魔導アーマー隊の力を見せてやるぞ!」


「ケフカ!何をする!」


「ヒヒヒ…皇帝の命令です。幻獣達を魔石化して持ってこいとね。


 見よ!幻獣を魔石化させる秘技を!!」




ケフカは片手を上げると一筋の光を放った。


光は幻獣に向かい一気に魔石の姿へと変えた。


死す時魔力をこの世の形に示した物…




――死して。




「やめろ!やめろよ!!」




キン。


魔石が光った。


ケフカの手の中で輝く。


暖かい光が奴の手の中からあふれる。


ケフカはそれを見せ付けるようにして握り締めた。




「つまらん!!おもしろくないからこんな村なんて焼きはらっちゃいな!」


「―――」




ケフカの後ろに控えていた数段パワーアップした魔導アーマーが


さっきロックたちに繰り出したのと同じ魔導を繰り出す。


ザン。


ザン。


自分が使っていた頃とは比べ物にならない威力。


魔導の力が上がっている。


また。


幻獣の力を――




「ケフカ!おまえのおこないもう許すわけにはいかぬ!」




傷の浅かったレオがケフカに対峙する。


剣を構えすばやい動きで次々とダメージを与えていく。


く、とケフカがひるんだ。




「さすがは、レオ……私をこのような目にあわすとは……」




そしてす、とケフカは自分の姿をくらました。


視界のどこにもいないケフカにレオは動揺しつつも体を緊張させている。


むにゃむにゃというケフカの声だけが聞こえた。


何かの呪文。


余計姿勢を低くした時背後から声が聞こえた。


聞き覚えるある声。


自分がいっまで忠誠を誓っていた人物の……




「皇帝!」


「レオ。おまえまでだましてすまなかった。


 これも、魔石を手に入れるため。わしの真意、わかってくれるであろうな」


「皇帝。が。しかし……」


「言うな、レオ。お前の気持ち解らぬでもない」


「ヒッヒッヒッ皇帝のおっしゃる通り!今は、魔石を集めるのが先決なのだよ」




私は一体…と歯を食いしばるレオ。


ガストラは一瞬にやりとして見せた。




「レオ、お前には、少し休んでいてもらおう。それも、ずーっと長ーくだ!」


「!!!」




ヒツヒッヒッ…


嫌味な笑い。


それはガストラのものではなく、ケフカの――




「お前が倒した私……それは私の幻影なのだよ!


 そして、意気地なしののガストラ皇帝も、もちろん、幻影!


 それくらいの違いがわからないヤツが将軍だなんて、それも いつも、いつも……


 いつもいつも、いいこぶりやがって!」


「ケ、ケフカ……お前というやつは……」




大地にひれ伏しながらレオはケフカをにらみつける。


ケフカは上からレオを見下ろしていた。


その瞳は、もはや人間のものではない。


そしてニヤリ、と含んだ笑みを浮かべて見せた。


に見せ付けている。




「……やめっ…ろ、よ!…こんな、ふ……嫌、嫌だ…!いやぁぁああ!!!」




足が鉛のように重たい。


地にしゃがみこんだまま、動かせない。


嫌だ。


嫌だ。


いやだ。


こんなの、最低だ。




僕はまた。


何も出来ないまま。




ミテルノ?




僕はまた。


何も出来ないまま。




ミステルノ?




僕はまた。




ミゴロシニ――?




「皇帝には、レオは本心で裏切ったと、報告しておくよ!


 死ね、死ね、死ねー!!」




おとが反響。


あぁ、ほら。


また、まただ。


あの夢。




デキソコナイ。




皆が倒れてるのに、僕が何も出来ない夢。


無力さ、窮屈。


救いがない夢。


あの人は、また来なかった。




ハンパモノ。




嫌だ。


嫌だ。


動けよ。


足。


せめて。


呪文を。


なんでもいいから。


動いてよ。




『――諦めちゃ駄目でしょう?』


『――あの子達のことをどう思っているの?』


『――どうしたいの?』









もう、見るだけは疲れたよ。














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あとがき

85話になりました!

この幸せの代価は全部悲しい話になっております。
同時に、決意の章でもあります。

楽ばかりは選べないヒロイン。
むしろ彼女に用意されていたのは苦の道。

進んだ先に見えるのは、幸せか、絶望か

ということでぽちり (殴)
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