Angel's smile

(血の描写・クレイジーな表現があります。)














こんなにも、愛しているのに…?――…















 しあわせのだいか 86














地響きが鳴った。


同時に感じるのは仲間たちの声。


悲痛な音。


苦しみが分かる。


幻獣たちの、叫び。




「これは、これは。幻獣の方々ではありませんか。


 突然のおこしでおどろきましたがかんげいいたしますよ。


 ぼくちんに、もっと魔石プレゼントしてくれるというのですから。


 お望みどおり、魔石と化してあげましょう!


 まずは、そのじゃまっけな魔力を中和するとしましょうか。


 さあ、幻獣達よ。楽しませて下さいな」




手を掲げて魔法を放つ。


ケフカが中和といったその光は幻獣たちに触れ、


幻獣たちの体からは魔力そのものが消えうせた。


幻獣たちが攻撃を仕掛ける。


けれども中和された力はケフカを傷つけなかった。




「そのようなものでは、この私を倒すいことなどできませんよ! ヒッヒッ


 さあ、魔石となって、私と共に、魔導帝国「ケフカ」を造ろうではありませんか!!」




魔石化する光。


幻獣たちが次々と魔石に、変わる。




「おほほほ!なんと、あたたかい手ざわり!みたされていくー!!


 たあいのない。幻獣がこんなに弱い存在だとは。


 こんなのと戦っても楽しくないしさっさときりあげましょうか」




そういった刹那。


今までが遊びだとわかるほどの力を使い一気に繰り出す。




「ひょっひょっひょっ魔石はこれでもうじゅうぶんですね。


 あとは、封魔壁の奥にある最後の宝を手に入れるだけです。


 シンジラレナーイ!!!」


「………っ!」


「そうそう、その前に大切な事が……」




ザク、ザク。


ケフカが歩み寄ってくる。


距離が近づく。


とてもゆっくりな足取りなのに、怖いと感じる。


ザ。


のすぐそばでそんな音が聞こえた時、ケフカの足が止まった。




「これはこれはではありませんか!なんでしょうねぇ、その目は……」


「妹に手を出すな」


「兄さ、」


「ふん!いい子ぶりやがって」







こめかみから流した血が頬にだらしなく伝っている。


右手にはソードを。


ザ、ザ、と大地に足を引きずりながらは妹の前でケフカをにらみつけた。


気に食わない目だ。


そろいにそろって……


ケフカは鼻を鳴らした。




「カスはいくら集まってもカスなのですよ!」


「――、!」


「兄さん…っ!!」




魔石の力だ。


ケフカは、たった今手に入れた幻獣の力を使った。


一瞬起きたことにはそれだけを理解する。


気がつけばは遠くで仰向きに倒れていた。


同じ桜色の髪がだらしなく大地に垂れ下がり、所々血の赤色に染まっていた。


自分と同じ容姿。


それだけにに与えた恐怖は並大抵なものではなかった。




「どうして…?……どうしてこんなことするの?こんな、酷い事……


 皆を傷つけて…、見せ付けて……、どうして…っ笑ってられるの?」


「どうして、ですって?」


「――、」




気が狂いそうになる。


ケフカは意外なほど優しい声でそういった。


冷たくひんやりとした手を伸ばしての頬をなでる。


びくん、と振るわせるからだ。


言葉が消える。


ゆっくりと抱きしめるものだからの瞳からは大粒のないだが零れ落ちた。




自分が幼い頃。


であったばかりのケフカは、優しかった。


とっても、優しかった。


両親からも、兄からも引き離されて。


実験ばかりの日々の中での唯一の光だった。




何が彼を変えた?


何が彼を狂わせた?


何が日々を可笑しくさせた?




そんなの、この力に決まってるのに。




「愛しているからに、決まっているでしょう?」


「…………え…?」


「こんなに愛しているのに、こんなにも愛しているのに、


 貴方はどうしてその事に気づかない?


 愛しているから触らせたくない。指一本でも触れた者は殺してしまおう。


 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い――


 お前は私だけの物のはずなのに。こんなにも愛しているのに。


 どうしてそんなにも私をいらだたせるのですか?逆なでするのですか?


 近づく男は全部消えていったでしょう?……たとえばそう……あの隊長も」


「――」




クオル。


隊長。


え。


嘘だ。


そんなの。


認めない。


認めたくない。









『最近はクオルの奴と仲がよいようですね……』




何の前置きもなくケフカはたずねるような口調で言った。


は瞬時に彼の言いたいことがわかった。


仲がいい……


つまりは、




“ 気に入らない ”




「そんなこと、ないです……」


「私に反抗するおつもりで?」


「そっ、そんなこと……!」




ない。


最後までつむぐことは出来ないままに終わる。


いってしまえば最後なきがして、


怖くて、言葉が消えてしまう。


足が竦む。




『奴のこと愛しているのですか?』









そういった彼の表情は今でも消えない。


脳裏に焼きついている。


記憶。




あぁ、そうだ。


あの時彼は。


嫉妬、してたんだ。




「あぁ、しばらく会わないうちに、色々な人と出会ってきたようですね。


 そろそろ戻ってきてもいい頃でしょう?


 それとも――」









捨てられない、物。














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あとがき

86話ですねぇ

ケフカをこれでもか、っていうほどクレイジーにしてみました。
あとちょっとした告白も(相当悪質ですが)

この章は後1か2話くらいの予定です。
さて、ヒロインはこの先どちらの道を辿るのでしょうかね。

……それにしても、兄様一瞬でしたなぁ(汗

ということでぽちり (殴)
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