Angel's smile
















ずっと昔。


父さんが教えてくれた。


幸せのこと。


不幸の事。


今ごろ、それを思い出した――…















 しあわせのだいか 87















一人になって、はしばらくボンヤリしていた。


ゆっくりと立ち上がるとそのまま倉庫へと向った。




以前ストラゴスが見せてくれた倉庫。


その奥にある木箱。


中に入っているのは純白の聖服。


封魔師が着る衣装。


は沈黙したまま今きている衣服を脱ぎ始めた。




真っ白な聖服だ。


長い、ベージュのストールを左肩でカチ、と止める。


膝上のスカートがゆれた。


ストールの先も揺れる。


は帽子をはずして、木箱の中にそっとしまった。


ごめんなさい。


父さん。


僕にはこれをつける資格はない。




そしてかわりにロックがくれた、金の髪飾りを髪につけた。


おまもり。


は小さく呟いて広場へと出た。




仲間たちに、祝福の光を最後に送る。


天使の羽。


ひらりと舞い降りて仲間一人ひとりの傷を癒す。


ほんらいの魔法は人を傷つけるものではない。


人を守護し治癒する時、その力は盛大に発揮される。


謝罪を添えた。




「みんな、ごめんなさい」




今まで、ありがとう。


楽しかった日々が走馬灯のようによみがえる。


はそれから一番怪我が酷かった兄の下へといった。


エンジェルフェザーでも全回復は厳しかった様子。


はケアルラを唱えた。




「なんか、なんていったらいいのか、わかんないや」




言葉が見当たらない。


何を言っても、怒られそうで。




「後悔はしないよ。それだけはいえる」




桜色の髪をなでる。


まだぐったりしてる兄。


あれだけの力をまともに浴びたのだから、無理もない。


けれど、守ろうとしてくれた。




『妹にてを出すな』




ボロボロの癖に。


僕を、護った。




「また、お別れだね。いままでありがと、兄さん」




嬉しかったんだから。


でも。


言ってあげない。


これが最後になるのに。


言わない。


ごめんね。


僕、不器用だから。


こんなときまで。


それは変わらないみたい。




「……ロック」




振り返ったその場所に一人立っていた。


銀髪の青年。


ロック・コール。


僕の、好きな奴。




「何で起きちゃうかなぁ…。お別れ言いたくなかったのに」


「…行くな、」


「………」


「行くな、。頼むから、行かないでくれ……」




立ってるのが必死。


彼の瞳はなんとかを映していた。


が目を伏せる。


ゆっくりと歩み寄った。


そして、目の前にたった。




「昔ね、父さんが言ってたんだ。


 人はね、幸せと不幸せを半分ずつ持ってるんだって。


 僕は…自分を不幸だなんて思ったことないけど……


 それでも、これだけは本当。




 皆と過ごしてきた時間。


 君にあって、


 仲間が増えて、


 たまに揉めて、


 でもまた仲直りして、


 笑って、


 泣いて、


 それって全部、とっても幸せだった!


 満たされてた。暖かい心地。みんなの優しさ。


 幸せって感じる事ができた……」




胸に手を当てる。


溢れてくるこれはきっと「愛する」という感情。


出会う前までは知らなかったもの。




…」


「………」




がく、とロックが膝を突いた。


限界が近い。


意識が朦朧としてるのが分かる。


それでも、彼の腕はの腕を捕まえていた。


いかせたくない。


強い気持ち。


は唇をかみ締めた。














「大好きだよ、ロック」














さよなら。




そう呟くとロックの意識が急に途切れる。


魔法。


の指先が淡く光っていた。


崩れ落ちる。


軽く受け止めて横たわらせた。


そして最後に首飾りをはずした。


彼の首にそっと絡めて結び付ける。










ばいばい、














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あとがき

87話(´・ω・`)

あえて語るまいかな。
なんて。

もう少しこの章引っ張る事にしました。
ラストまで、もう少しですしね。

ということでぽちり (殴)
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