Angel's smile
















なんて――…















 崩壊の余興 89















「バカな幻獣どもめ!みずから封魔壁を開いてくれるとは。


 この扉の先に三闘神が……それさえ手に入れればわしの夢は完全なものとなる!」





ちらり、と彼を盗み見る。


皇帝ガストラ。


僕のいない間にえらく落ちぶれた物だ。


否。


もともとこの人間はこういう奴だったか。


幻獣界に強引に進入し、仲間たちや家族を引きちぎったあの時から。


何の変化もないように見える。


馬鹿な人間。


愚かな人間。


浅はかな知識には反吐が出る。


僕の視線に気がついたガストラは「なんだ」と睨んできた。


余程気に入らなかったと見受ける。




「………」


「なんとか言わんか!」




あえて無表情の沈黙を返すとガストラの神経を逆なでしてしまったらしい。


その事に僕は動じない。


こんな人間、恐れも何も感じない。


ケフカは一人楽しそうに見ていた。




「お前は、力の差というものがわかっていないようだな」


「………」




どっちが。


こいつの目は濁ってる。


見える物すら見えていない。


その目に宿すのは黒く吹き荒れる漆黒の炎。


こいつと同じ人間の血が自分にも通っていると思うとなんだか笑えてきた。


ふふ…と小さく零しつつもその瞳は傍観的に人間を見つめていた。




「勘違いをしているようだな?僕に調教は必要ない。


 お前はただその阿呆面下げて僕の後ろを歩いていればいいんだ」


「言わせておけば……」


「僕はケフカと共にこの道を行く。三闘神の封印を封解できるのは唯一僕のみだ。


 僕を殺すか?お前が?浅はかな知識におぼれた人間無勢が、笑わせるな」




威圧。


ガストラの口を噤ませているのは魔力でも暴力でもなんでもない気迫だ。


冷たい。


無情。




「離れるな、そして、近づくな。命が惜しければな」




は一言吐き捨てて道を進み始めた。









 +









「どうしたのティナ?」




ずっと目を閉じただ風に髪を流していたティナにセリスは声をかけた。


その様子は何かを探っているよう。


彼女にだけ聞こえているもの。


それに対し彼女は不安を表していた。


セリスは疑問を示しながら声をかけたのだった。




「島が…!?大地が……さけび声をあげている……」




セリスと、そしてロックもその言葉に大地を見下ろした。


かすかに聞こえるゴゴゴゴ、という呻き。


心の奥を震わせる振動。


悲痛な叫び声。


魔大陸が、浮上したのだ。


その最上部には三体の像がお互い向き合うようにして存在していた。


飛空挺から見下ろしているというのに、その魔力はひしひしと伝わってくる。




「あれが?」


「石化せし3人が向かい合い力を中和させることで自らを封じたと言われておる。


 3体の石像の視線がそらされた時バランスがくずれその力は世界を滅ぼす……」


「え?!」




動揺が顔に出る。


世界すら滅ぼす強大な力。


今。


その三闘神の最も近くにいて、


もっといえばそんな力を解き放とうとしているのはだ。


唇が震える。


無事を願った。


それでも不安は消えない。


そっと。


ティナの頭に人の手が触れた。


温かみのある大きな手。


少し視線を上げるとぎこちなくとも微笑んだ彼と目があった。


……だ。




「きっと、大丈夫」


「……そう、ね」




は少し目を伏せた。




「魔大陸に乗り込むぞ!」




セッツァーの言葉には体を程よく緊張させた。


それからセッツァーは3人だけ甲板に残り、後のものは中に入るように促した。


甲板に残ったのはティナ・・そしてロック。


他の者は暗黙の了解で飛空挺内部へと入り込んだのだ。




帝国の空軍が視界の端に見えた。


けれども三人の視野にはそんなもの映ってはいなかった。


見るのは魔大陸の最上部。


三闘神。









「さぁ、いこうぜ!」














←Back Next→

あとがき

89話ー

何気にサブタイトルかわってた←
あ、しかも前回からだ。
完全に忘れちゃってましたゎ(のぉう

サブタイトル<崩壊の余興>
この章で崩壊前を終わらせ…てみせるっ!
↑え

とりあえずさくさく目指していきます!

ということでぽちり (殴)
inserted by FC2 system