Angel's smile
















崩れ行く、世界――…















 夢醒 93














道化。


拘束から取れたばかりの3人を助けているセリスがケフカを見て思わず呟いた。


三闘神はケフカの指示に従うままに力を放出させる。


魔法が咲き乱れるようだった。


縦横無尽に強力な魔法が交差する。


直撃を食らえばどうなるのか。


の裁きの光景を見ていたガストラがわからないわけが無い。




「よせ!ケフカ!!馬鹿な真似を…………」


「しゅごい……へたくそ!!へたくそ!!どこをねらっているのだ!!もう!もっと右、右!!


 にげろ!にげろ!でないと、黒コゲだじょー!!」




あったりー!!!




命中した瞬間のケフカの表情。


あれだけ毛嫌いしていたでさえも目を伏せ胸元を握り締めた。


むせ返りそうなほどの感情。


微かに涙がにじむ。


それからケフカは身動き一つしなくなった皇帝を蹴飛ばす。




「ジジイが……さっきの、役たたずといったのは取り消してあげましょうなぜなら、


 皇帝、あなたは!役たたず以下、だからだー!!」


「恐怖が世界をおおうぞ…」




最期に。


ガストラはそうつむいだ。


けれどもケフカの耳にはもう届いてはいなかった。


返事のかわりにケフカはガストラの体を蹴り魔大陸から突き落とした。


ティナに見せまいとは彼女の頭を胸元に押し付ける。


彼女は微かに震えていた。




ケフカは三闘神のバランスを崩そうと石像をずらし始める。


セリスがはっとなり食い止めた。




「だめ!ケフカ!!」




ケフカは腕でセリスを薙ぎ払い、続ける。


吹き飛ばされたセリスは遥か遠いところで地を這う。


懸命に起き上がりながら「3人の力のバランスが破れたら……力が暴走する」と呟いた。


視界がかすんだその時、腕を引かれ、次には持ち上げられるような感覚があった。




「誰だ?!」




シャドウだった。


彼はセリスをロックたちの下まで移動させてすぐに石像をうまく動かした。


うきゅ!


ケフカから悲鳴が聞こえる。


身動きが取れなくなって窮屈になったのだ。


シャドウは瞬時に三闘神の中央から伸びる触手を短刀で切り裂いた。


脆く細い部分だけを素早く刻みつけ数秒で


を拘束していたものをすべて取り払った。


地に落ちる前にロックが受け止める。


彼女の顔を覗き込んで不安に目が揺れた。


彼女の肌は血の気を失いいつも以上に白く、これでは生きているのかどうかもわからない。


なにより。


こんな切迫した時間と場所では、確認する事もできない。


…早く安全なところに移動しなくては。




「行け!世界を守れ!」




シャドウはケフカを閉じ込める像を押さえつけながら叫ぶ。


魔大陸が崩壊を始めた。


封印がはずれ、バランスを崩された今、力は暴走しようとしている。


地割れが起こりティナ、、そしてを抱えたロックは


シャドウがいる場所から強制的に引き離された。


遠くなっていくシャドウが小さくつぶやいた。




「俺にかまうな。早く行け!もう暴走は止まらない!」









 +









『 ふっ……必ず戻ってみせるさ。心配するな 』




微かに聞こえた言葉。


はその言葉に気をさらに引き締めソードを構えた。




「ロックは妹を!セリスは僕と前衛で。ティナは援護をよろしく!」


「…!!」


「一気に抜けるぞ!!」




どうしてだろう。


こんな状況だというのに。


彼がに見えて、少し元気が出た。


ロックはふっと微笑み、彼女が去り際に自分に残した魔石のネックレスをそっと撫でた。


太ももを抱くようにして肩に担いで既に走り始めた三人をロックは追った。




「―はぁ!!」




道を塞ぐモンスターをは躊躇うことなく突っ込み薙ぎ払う。


マッシュほどの攻撃力は無い彼だが素早さが完全にそれをカバーしていた。


セリスと一気に切りかかっていく。


ティナも詠唱の時間のかかる魔法は避け、出来るだけ細身の剣で攻撃するようにしていた。


もしくは補助や治癒系の魔法に絞っている。


ロックもあいた片手でレイヴを使い、を庇うようにして崩れていく瓦礫を進んでいた。


最初にいた場所はずいぶん昔に崩れた。


ぼろぼろと大地に落ちていく。


ロックは地形に気をとられていた一瞬背後の存在に背中を許してしまった。




―― カッ!


「先へ」


「おう!」




がいち早く気づきロックの分を補う。


瞬時に唱えたサンダラをお見舞いするとモンスターは遥か下の海へと落ちていった。


軽い浮遊感を覚え、彼は地を強く蹴るようにして飛び上がった。


崩れ行く瓦礫をうまく渡りロックにすぐに追いつく。




「飛空挺が…!」


「エドガーたちか!」




先に着いたティナとセリス。


ティナは先に飛空挺から降りたロープで飛空挺へと上がった。


セリスはその場所に残っていた。




「二人とも、先に上がって」


「セリスは?」


「シャドウを、待つわ。お礼言ってないのに、ってさんに怒られちゃう」




おどけて言うセリス。


それから心配そうにするロックに




「最悪の場合はこのロープに捕まるわ。…引き上げてくれるでしょう?」




といつもの彼女らしい笑みを浮かべた。


ロックは深く頷いた。


先にロープを身のこなしの軽いが上った。


そしてを抱えたロックをアシストした。


ゴゴゴゴ。


崩壊の音が段々と近づいてくる。


セリスは目を凝らしながらも頭の角ではの無事を祈っていた。


無事だと信じているからこそ、この役目を買って出たのだ。


すた、と隣に人影が降りる。




「…カイエン!あなた――っ」


「女子一人おいて逃げるような事はできんでござる」


「!」




カイエンはちらりとセリスを盗み見て「また殿にしかられるでござるよ」と呟いた。









セリスはくぃ、と口角を持ち上げた。














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あとがき

93話目更新です。

なんだかもうこの辺は詰まることなく書き上げました。
もしかしたら10分ほどかもしれません。
本当に書きたかったところが続くので楽しくって
あっという間に仕上がってしまいました。

皆さんがこの小説をご覧になるときには
当たり前ですが深はもっと先の部分を書いているのですよね。
だけど。
書いているこの一瞬は読み手と共有している
楽しみがあるのだと思います。

想像をちゃんと文章にできるという楽しみは譲れないですよね。
これだからやめられないんです。

ということでぽちり (殴)
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