Sunny place

















 05














近いせいもあってか鼓動がよく聞こえてきて、


そしてそれがとても早くなってることに気づく。


かすかに震える腕はいつものクールさを掻き消していた。




時期に彼のぬくもりが伝わってきてぷつん…と何かが途切れた。


次第に零れてくる涙。


堪えようと我慢すると耳のすぐそばで




「我慢しなくていいんだ。泣いとけ」




出てきた言葉とは裏腹に優しい口調。


時折とんとんと叩いてくれる手の平。


生きてる人の体温。




自分だってそれどころじゃないはずなのに。


平気なんてこと絶対にないはずなのに。




どうしてあなたは優しいの?




煩かったはずの雨音が次第に聞こえなくなり、


まわりの“現実”がぼやけていく。




わかってるよ、ちゃんと。


ちゃんと…受け入れるから。




だから今は…









やすませて。






























どれくらい時がたったのだろう…


どれくらいの時間こうしていたのだろう




「もう、いいのか…?」


「…うん。ありがとう」




言葉と同時にお互いがどちらともなく離れる。


ゆっくりと感じてくるのは“外側”の温度と“現実”


離れた瞬間にの身体がびくりと震えた。


怯えているにも似たそれ。


チェスターは眉をひそめる。




…」


「大丈夫………じゃないけど…怖く、ないよ。一人じゃないから…」


「あぁ…そうだな」




小さく相槌を1つ。




「今日は…もう寝ちゃおっか…。なんか疲れたし……」


「だな(明日、やるか……)」


「…」


「…?どうした?」


「明日……私もちゃんと手伝う、から…」


「……………………無理はするなよ」




薄暗い部屋の中でこくんと頭が立てに動いた。


少しして「毛布とってくる…」とその場を離れたチェスター。


一人になったは濡れてないところにしゃがみこみ、


歩み寄ってきたリーフェを抱き上げ腕の中へと閉じ込めた。


一言も鳴くことなく大人しく腕の中で収まっているリーフェ。


それでも情緒不安定な主人を気遣ってか頬ずりをした。




「大丈夫…大丈夫……だよ」


『………………うん』




ふふ…とぎこちなく笑って、


はそのまま眠りに落ちた。




「………寝た、か…?」




そっと顔を覗き込んだチェスターが小さく言う。


そしてゆっくりと彼女の頭の後ろに手をやって、


座った状態から寝かせてやると、


とってきたばかりの毛布をかけてやる。


毛布の端を自分にもかぶせてから、


チェスターも目を閉じた。









 +









目を閉じて、また目覚める。


身体は疲れているはずなのに、


休息をとってくれようとはしない。


浅い眠りの狭間。


次第にさえてくる思考。


雨は…止んだようだ。


寝るのを諦めて天井をぼんやりと見上げてみる。




何もかもが急すぎて様々な感情が交差し、


彼女の心を蝕んでいく。


それが煮詰まってしまわないのは、他でもない彼のおかげだろう。


隣で眠る…




「眠れないのか…?」




否、隣で眠っていたはずのチェスター。


物音で気がついたのだろうか。


切れ長の瞳を閉ざしたまま彼はに話しかける。


も彼を見ることなくただ呆然と天井を見つめながら、


相槌を打った。




「寝なくちゃいけないってわかってるんだ…。でも…」


「あぁ…オレも。やっぱ考えちまうよな、色々…」


「…うん」




お互いに遅すぎるくらいの口調。


感情はほぼ皆無だ。




「あの、さ…」


「…?」




「手、繋いでてもいい?」




なんだか不安で…


顔は見えないが彼女は今きっと


苦しそうに薄い笑みを浮かべているのだろう。




捕まえていないと不安で。


離れていくのが怖くて。


嫌だから。




「あぁ」


「…ありがと」


「気にすんな…」




おずおずと指先を毛布の下を通って


彼の彼の掌へと触れた。


少し躊躇していたの手を


ぎゅと握り締めたチェスターの手。


それはとても温かくて、とても安心できた。


弓を使っているせいもあってか、


余計こつこつしているように感じる。


すこし強い力で握っていてくれて、


あぁ…すこし眠たくなってきたかも…


なんて、ぼんやりと頭の隅で考える。




「寝てもいいんだぜ…?」


「…む」


「無理すんなって」




明日から忙しくなるだろうから、今のうちに…




「……………………うん」




ゆっくりと近づいていった瞼がとうとう触れ合った。


それっきり閉ざされたままのところを見ると、


ようやく安心したらしい。


眉間にしわを寄せ、顔をこわばらせていた、


数分前が嘘のようだ。


完全に夢の中へとおちた彼女の指先の力が段々と弱まっていく。





「…2人で、頑張ろうな」




口元をほんの少し緩めると、チェスターも視界を閉ざす。


毛布の中。


2人の手の平は


夜が明けるまで、


夢から現実へと覚めるまで、


それを知るまで、ずっと繋がっていた。














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