Sunny place

















 09














「て、手伝うよ?重いでしょ…?」




一人でクレスを担いで(足は引きずっている)つかつかと


ミントとの前を歩くチェスター。


唯一の男であるチェスターは適任といえば適任なのだが、


自分だけ何か軽いことをしていると思う


少し困ったような雰囲気でチェスターに仕事を求めた。


後ろでは少し話して味方だとわかったミントが


少し心配そうにそれを見ている。




「気にすんなって。お前はミントと話してろって、」


「………。だって、」


「…」




少しの沈黙で盛大にため息をつくと


クレスノ腰のベルトからやや乱暴に剣を鞘ごと抜き取って


に頬ってよこした。


「さっきから足に当たって邪魔なんだよ。それでも持ってろ、」


と皮肉をさらりと零してちらりと受け取った彼女を盗み見る。


両手でぎゅっと握ったは至極満足そうだった。


それにチェスターも少し安堵していたのだ。




「えへへー」


「よかったですね、さん」


「うん!…あ、私のことは、でいいよ?皆そう呼ぶから」


「………、さん…?」


「ありがと、ミントのお姉ちゃん…!」




てくてくと歩きながらははにかんだ。


なんだか照れますね。


と微笑んだミント。


出会った頃の警戒心が嘘のようだった。





「えっと…じゃあ、ミントのお姉ちゃんは法術師?…なんだ」


「ええ。母に教わったんです」


「お母さんも法術師なんだね…」


「はい…!」




この帽子もお母さんに頂いたのですよ。


そういってミントはふふ、と笑った。


へぇ、と関心気味には頷いて


ミントの白い帽子をじぃと見つめた。


目を細めて薄く笑う。


少し、寂しそうだった。









さんのご両親はどんな方だったんですか?」









「―、」


「―――ミント!」





の瞳が戸惑いで揺れる。


彼女からの返事を聞く前にチェスターに制されるミント。


疑問符を脳裏に浮かべながら小首を傾げてみせる。





「……その、なんだ…。さっきからずっと歩き続けてるがきつかったら言えよな?


 二人も運ぶなんて真っ平ごめんだぜ」




顔だけ振り返って見せて皮肉を零す。


少し俯きがちになっているに一度視線をやって


彼は静かに首を振った。


ミントははっと片手で口元を隠す仕草をして


理解したという意味も含めて頷いた。


タブーだ。


にとってそれは。




両親に捨てられた、にとっては…




「…そ、うですね……。でももう少しで着くのでしたら平気ですよ」


「そうか…?ならいいんだけどさ」


「ええ。心配してくださってありがとうございます」


「そんなんじゃねーって」




ミントが何事もなかったように話を続けたことに


チェスターはぎこちなく苦笑しながら


礼の意味をこめて頷いて見せた。


流石は年上だ。


大人の対応をしてくれたミントにチェスターは心の中でそっと礼を言った。


そして何もなかったように「ご気分でも悪いのですか?」と


に声をかけたミント。


は驚いて顔を上げて「ううん!」と


いつものはにかみ笑顔を見せてくれた。




「さてと、。モンスターが出てきたら頼むからな」


「あ、そっか。今戦えるの私しかいないんだっけ…」


「……オイオイ、ホントに頼むからな」


「う、うん!」




クレスを抱えていて両手ふさがりなチェスターは


勿論戦えない。


そしてミントも非戦闘員だ。


は右手を軽く動かした。


それを見てミントも杖を握る手に力を加える。




「では私は傷ついた箇所を治癒しますわ」


「お、頼もしいな」




よっと、といってクレスを背負いなおすチェスター。


はそんなチェスターよりも少し前に出て振り返った。




「モリスンさんの家に着くまでお兄ちゃん達は私たちが守ってあげる!」


「………!?」


「え!?チェスターさん?……クレスさんが…っ!!!」




の発言にクレスを思わず落っことしてしまった。














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