Sunny place

















 11














その声は!




クレスがはっとなって扉の間から覗く


皮肉めいた笑顔を浮かべる人物を見つけた。


その奥からは「ご、ごめんね…止めたんだけど…」と


結局は自分も楽しんでいたがにへらと笑っている。


クレスとチェスターはニッと笑うとお互いの肩を抱き合っていた。


はミントのとなりでフフ、と笑っていた。




「お前が発ったすぐあと、このモリスンさんが村に着たんだ。


 お前の家を訪ねてな。……いろいろ手配してもらって、


 思ったより早く方が点いたんで一緒に来たってわけさ」


「皆のことはちゃんとしてきたから、安心してね…?」




ありがとう、とクレスは二人に言ってモリスンのほうへ視線を投げた。


自分の家に尋ねてきたということに疑問を持ったようだ。


モリスンは渋い顔になった。


それから「早速ですまないんだが、」と話を切り出す。




「私は黒い鎧の男を追っている。トーティスを襲ったのもそいつ等だ。…間違いないね?」


「…そいつの名はマルスでは?」




モリスンは肯定を意味する相槌を打つ。


そしてモリスンはクレスが村を出るときに


ペンダントを持っていったことをチェスターに聞いたと説明した。




「ですが、あの男に奪われてしまって……」


「やはり、か。あいつの隠れ家の外で君を発見した時から予想はしていたんだが」




眉根に皺を増やした。


は頭に疑問符を浮かべている。




「あ、あの…。あのペンダントって何なんですか?


 とっても綺麗な石だったけど、価値のあるものには見えなかったような……」




頭の中がぐるぐるし始めている


チェスt−とクレスも顔を見合わせるが、結局お互いが首を傾げて終わった。


モリスンは一人「なんてことだ」と深刻そうだった。




「すべてが後手にまわってしまう。急がねば。」


「どこへいらっしゃるんですか」


「地下墓地だ。ペンダントが二つそろってしまった以上、


 一刻も早くアイツを阻止せねば」




そういうなりモリスンは早速旅の支度を始める。


クレスが「待ってください、」と止める。




「その地下墓地にマルスがいるんですね?だったら僕も一緒に行きます」


「断る」




モリスンはきっぱり言い放つ。


そしてクレスの二言目に被せるように「足手まといだからここにいろ」


と言い残して早々と立ち去ってしまう。


ばたんという戸が閉まる音。


そして無造作に放られた4人……




「おい、いいのか?マルスってヤツが俺達の仇なんだろ?


 約束したじゃないか、一緒に仇をうつって」


「……」


「ペンダントが二つって何のことだよ」




チェスターがクレスに詰め寄った。


ためらいを見せるクレスにイラついているようだった。


それは彼女も一緒だった。


けれども誰もそのことに気づかない。


クレスはわからないと首を振った。




「マルス…私とお母さんをあんなめにあわせた男…」




ミントが小さく呟いた。


が滅多につくことのない溜息をついた。




「まだ迷ってる…?」


「え…?」


「本当にわからない?…簡単なことだよ」




静かにが言っている。


けれどもそれは何時もの彼女には不釣合いなほど落ち着いていて


背筋が凍るような怖さをどこかに潜ませている。


あきらかに雰囲気が違う。




「 いくか、いかないか。ただそれだけのこと 」




クレスの剣を握ってゆっくりと歩く。


チェスターが複雑そうな表情をしていた。


ミントはただどぎまぎしながらその光景を見ている。


は少し雑にクレスに剣を差し出した。









「 今のクレス……すっごくイラつく 」









重みのある一言だった。


しん、と静まり返る室内。


伏せられた瞳が当てられてクレスは硬直する。


無造作に差し出された剣をおずおずと受け取る。


が歩き出す。


外へ。


…それだけで今からしようとしていることが何かに気がついた。


クレスは奥歯をかみ締めながら立ち上がった。


そして何も言わずに彼女の後を追って外へと歩き出した。


ミントが不安そうにしている。


止めに入ろうとするのをチェスターが止めた。


「やらせてやれ、」といっているようだった。


ミントはただ眉を潜めて無事を祈ることしかできなかった。








 +









モリスン邸の広い庭。


障害の少ない場所を選んではクレスに向き合った。


それから静かに背中の鞘から剣をぬき取る。


鞘を放ってから手首を鳴らすように剣を一度なぎ払った。


シュッ!


と風が切れる音がした。


クレスは一度眉を潜めて同じように剣を抜いた。




キン、




剣先が触れ合って、それが合図となった。














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