Sunny place

















 13














トリスタンに見送られて4人は地下墓地のある


東へと足を進めていた。


トリスタンいわく数時間ほどでつくというからもうすぐだろう。




「さっきは、ごめんね?いろいろと……」


「う、ううん。もいきなりあんなこと言っちゃってごめんなさい…吃驚したでしょ?」


「確かに驚きはしたけど……だけど、


 なんだか逆に喝が入ったって言うか……うん、迷いが消えたよ」




ありがとう。


そういって微笑むと安堵しながら彼女も微笑む。


しかし二人の笑みが消えた後互いが同時に真顔になった。


心構えができた表情。


いつ何が起こっても大丈夫な雰囲気だった。




「おい、あそこじゃないか?」




頃合を見てチェスターがいった。


チェスターが示す指先には歪みにぽっかりと開かれた穴があった。


穴は奥へと続いていることを確認してクレスがうなずいた。




「ああ、間違いないよ。モリスンさんはこの奥だ……僕たちも進もう」


「…うん」




が相槌を打つ。


腕の中のリーフェが主人を見上げた。


眉をひそめて違和感を感じている彼女。


けれどリーフェの視線に気がついてごまかした。




洞窟の奥に進むにつれて段々と体にまとわりつく熱気に


全員はいやでも気がついた。


それは、溶岩だった。


ぶくぶく、と夥しい蒸気をあげてマグマが熱を出している。


時折襲い掛かってくるモンスターをなぎ払うクレスは前衛を。


その後ろをミント、チェスターと続き、後衛にはが備えていた。


振り払われたモンスターがマグマの中に落ちて


えげつない悲鳴を上げながら沈んでいった。


それから目を背けては逸れないようにしようと心に決めた。




「あ、あそこに扉が……光が漏れています!」




ミントは今言った場所を杖で指して示した。










 +









「お前の悪巧みもこれまでだなマルス・ウルドール!」




地下墓地の最深部。


広場になった空間にモリスンの姿はあった。


目の前で対峙しているのはマルス・ウルドール……


独立騎士団の隊長だった。


全身を黒いよろいで覆いつくし、腰に備えられた傷だらけのソードが


彼自身の腕を物語っているようだった。


マルスはふん、と鼻で笑って「今頃のそのそ来てももう遅いわ」とほえる。


マルスの奥にはひとつの大きな棺桶があった。


そしてその周りには4体の女神の石造がそれぞれ手に水晶を持っている。


魔力の帯びた水晶だった。


棺桶の周りからはすでに微弱な光が漏れている。




「見ろ、石は二つそろった。古の王はまもなく復活する」


「!……くそう」




マルスが二つのペンダント(モリスンから盗んだものとクレスから奪ったもの)を


しゃら、と握り締める。


モリスンはぐ、っと怯んだ。




「!誰だ!?」


「な、何で来たんだ、お前たち!あれほど待ってろといったのに」




扉の隙間から様子を伺っていた4人が部屋へと立ち入った。


そこはまるで異次元のように居心地の悪い場所だった。


何かの力に押されているような圧迫感を感じていた。


の表情がさえない。


ミントが疑問の意味をこめて首を傾げるが暗黙のままだった。




「さぁ封印は解けた!古の王の復活だ!」


「古の王の……封印?なにをいっているんだ!」


「馬鹿め!ヴァルハラ戦役を知らんのか!」




マルスが言い返す。


水晶が完全に砕け散って棺桶からは赤い光があふれ出す。


ヴァルハラ戦役という言葉はにも聞き覚えがあった。




それは100年も前にあった戦争のことだった。


マルス曰くその戦争の圧倒的勢力を誇っていた王……


それがこの棺桶の中で眠るダオスなのだと……


ダオスはこの場所で数名の人間に封印されたというのだ。




「そうだ。何を隠そう私の祖先はダオスを倒した一人だった。


 そしてクレス君、お嬢さんも…」




僕が…?私が…?


と二人は声を上げる。


証拠に、とモリスンは二つのうちの一つのペンダントをクレスに。


そしてミントは母、メリルと一緒に毎日紙への黙祷をささげてきたのだと説明した。


その言葉に二人は戸惑った。


マルスは最後の仕上げだ、と苛立った声を上げた。




「ウィル!早く“あれ”をもってこい!」


「(ウィル……ッ!)」




その名前に過剰に反応を示した


そして反射的に背後の存在に気がついた。


その瞳に映った姿には逃げることもせずに固まった。




「――!」


さん!!」




振り上げられたソードが視界の端から消える。


振り下ろされることは理解できたが肝心な体が言うことを聞いてくれなかった。




「………」




凍ったような表情で彼は少女を見下ろしていた。














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