Sunny place


















 20














爽快な気分だった。


朝、日の出る前から目が覚めたときのようなさっぱりとした気持ち。


思わず深呼吸をして空を見上げたくなるほど、心地よくて安心する。




(マナ、が満ちてる……)




マナ。


とは魔力の源であり精霊やエルフたちの活力ともなる力だ。


ふわりと軽い感覚。


マナがみなぎるのを感じる。


目を閉じて風の揺らぐままに身を任せ。


耳で風の音を聞く。


鼻で風のにおいを感じ。


肌で風に触れる。


全てを感じ、受け入れながらは森の奥にいた。


ベルアダムの村の南にある森。


自分がもともといた時代に、よく狩をしていた場所だ。


生い茂る木々も。


芽生えたばかりの蕾も、まだまだ若々しい。


ふぅ。


は深呼吸をした。




「リーフェ。マナが満ちてるよ」


『気持ちいね。…とっても……』


「うん」




リーフェは珍しく自分の足で歩いている。


目を細めて尾を立てるその様子はリーフェのご機嫌な証拠だった。


ふるふる、と尻尾のリングがゆれる。


オプションで♪マークを当たりに浮かせながら


リーフェは主の隣をしっかりとついていく。


もまた、当てもなく森のさらに奥へと歩いていくのだ。




「ユグドラシル……」




大きく聳え立つ大樹。


太い幹には高く、遠くへと伸びる枝がながく伸びている。


息を呑む光景だった。


そっと樹に触れてみた。


鼓動のような、脈のような。


それは確かに生きているという感覚が手のひらに伝わったのだ。


そしてそれは同時に自分をじわりと熱くさせる。


自分の中の僅かなエルフの血が騒ぐようだ。


疼く、心。


凛。


鳥肌が立つ。




「あの時、私はただ……見てるだけしかできなかった……」




両手のひらでぬくもりを感じる。


額をくっつけた。


そして胸の中の思いを吐き出すのだ。




「弱くて、怖くて、ただ、見てた」




風が揺らぐ。


さらさら。


さらさら。


木の葉が揺れた。




「――頑張るよ、私」




強く。


念じる。


額を伝って、大樹へと、届ける。




はゆっくり息をはいてから根元に座った。


膝の上にひょこり、とリーフェが飛び乗った。


そしてくるりと丸くなった。


暖かい心地が眠気を引き寄せる。


は大切そうにオカリナを取り出してそっと口付けた。


静かに息を吐き出すと、笛の音が森に響いた。


子守唄。


長く、遠くへ。


響き渡る音。




「――…」




音が消えたころ。


は導かれるように眠りについた。


ユグドラシルの根元で。


オカリナを手で包みこんで。









マーテルがふわりと彼女を抱きしめていた。














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