Sunny place

















 21














この村に住み着くようになってだいたい3週間がたったころだった。


今ではすっかり打ち解けた村の人からクレスとミント…


そしてもう一人の、レニオスが紹介したという人物が村にやってきたと言うことを知り、


は飛び起きた。


修行の休憩がてらに木の枝で休んでいたらいつの間にかうとうとしていたのだ。


高さが関係したせいか、慌てた起き上がったせいか、


木の枝は大きく揺れたがは平気そうだった。


(どちらかというとリーフェのほうが放り出されそうになっていた)


は村人に慌てながらもお礼を言ってひゅ、と飛び降りた。


2.3メートル間の浮遊感を楽しんで地に着地する。


は村人の指差す先、レニオスの家へと走った。


ふわり。


と髪が揺れる。


左耳のピアスが太陽光をはじいた。









 +









「クレスのお兄ちゃん!」




滅多に声を荒げないが彼を見つけるなりそう叫んだ。


いきなりのことにミント、レニオスは驚くものの、


クレスだけはふわりと笑みをこぼして飛び込んできた彼女を受け入れる。


危ないだろ?だとか鎧痛くない?と言った風に、彼女に小さく言葉をつむぐのを忘れない。


そしてそれから




「ただいま、


「お、お…おかえり!」




目を大きく開けてクレスを見上げる。


興奮している。


久々に会えてよっぽど嬉しいようだった。


ミントはそっとに歩み寄り、只今帰りました、と微笑んだ。


コホン。


ひとつ、咳払いが聞こえてははっとなった。


見知らぬ人物がいる。


話は聞いていたものの、どうも初対面は苦手だ。




「私への挨拶がないようだが?」


「は!――お、おかえりなさいです。…え?あれ?は、はじめまして???」


「………」


「クラースさん。そんな目で見ないであげてください」




目をぐるぐる回して彼女は混乱する。


懸命に整理を試みるものの、余計溝に嵌っていくばかり。


けれどもそんな中でとりあえず自分の名前だけはしっかりと言っていた。


ため息をついたクラースと呼ばれた男にクレスは助け舟を出した。


クラースは帽子のつばを少しだけ下げて呆れているようだった。


否。


それはクレスにそう見えただけだった。




(こんな奴が、魔術を……)




内心の黒くてふつふつ湧き上がってきたものを懸命に押さえ込み


クラースは自己紹介を始めた。




彼の名前はクラース・F・レスターといった。


純潔の人間であるから魔術が使えないが、


その代わりに今まで長い間研究を続けていた『召喚術』と言うものがあるらしい。


クレスから召喚術と言うのは、精霊と指輪で契約をすることで


精霊の力を借りることができる、という魔術に劣らぬ術であることを聞いた。




その話を聞いて周りの空気をぴかぴかとさせる


興味津々のまなざしだった。




「精霊さん!」


「そうそう、精霊さん…」


「精霊さん!!」


「……?」




一度目は感激の意味合いの「精霊さん」


そして二度目はリーフェを持ち上げての「精霊さん」


どうやらはこのリーフェも精霊さんだよ、と言いたいのだろう。


妙な所で言葉が少ない(今回は興奮している)せいもあって、


思考回路をしなけれいけなかったが、応えにたどり着くことができた


クラースは半信半疑でリーフェを顎に手を置きながら覗き込んだ。


脇の下を持って抱き上げられたリーフェ。


真っ白な毛並みに、赤い瞳。


普通の猫ではない。


クレスとミントはが話す言葉に意味がわからず脳裏に疑問符を浮かべる。




「あ、そういえば、傷だらけのリーフェをが見つけたとき。


 同じような事言ってた、かな。会話ができる……とか、精霊さんって言ってた……とか


 ……その時はチェスターと一緒に笑ったけど」


「猫と、会話が……(ずっと独り言かと)」




ミントは最後の内心を言葉にはせずにクラースへと視線を戻した。


クラースは眉をひそめた。




「ふむ、確かに…何か強い力を感じる。、と言ったかな?


 この精霊が司る力は何かわかるかな?」


「司る……。いえ、聞いたことないです。あ、聞いてみますね」


「あぁ、頼む」




リーフェを半分回転させて自分へと向ける。


リーフェは機嫌がよさそうだった。


クラースの体に塗ってある文印や、鳴子の音が精霊にとっては気分のいいもののようだった。


滅多に人前では話してくれないリーフェだったが


今回は話してくれるようだった。




『時だよ』




男の子のような呂律の回らない可愛い声。


あまりに綺麗に響くものだから一瞬全員がフリーズした。



















←Back /Next→
inserted by FC2 system